無限の可能性
友人の建築家がかつてKiriの箱の底に敷いてある緩衝材を集めていた。波打ったボール紙の表面に「*」が模様として印刷されているものだ。
「なにに使うの」わたしは聞く。
「おみこしを作るの」一流の建築士として多方で活躍する友人は言った。
素材としてちょうど良く目を付けたのだそうだ。
わたしも数枚提供した。残念ながらその後交流が薄まり完成した神輿は見られていない。が、建築家がそれで神輿をつくるほどのKiriなのだ。
Kiriには無限の可能性がある。豆腐になるし、神輿にもなる。
クリームチーズのKiriについては長年いちもく置いてきた。
商材として陳列される際の圧倒的平べったさ、均一に白く無機な形。宇宙的なものを感じる。
いま改めて、この商品について思いをめぐらせてみたい。
まずはその魅力をいったん整理してみよう。
通常チーズといえば、その味わいに注目が集まるところだが、Kiriにおいてはそれだけではない。
各項について、ごくてみじかにするのでどうか説明させてほしい。
Kiriは個包装のクリームチーズだ。一つのサイズは縦横約3.8cmで約1.2cmの厚みがある。
タイルのような形をしているのが特徴であり、売られる際はケースに平たく並べておさめられる。
Kiriには6個入りと10個入りのケースがあるが、これは定期的に期間限定で2個増量の確変モードに切り替わる(上の写真も増量時のパッケージ。これについては後述しますね)。
増量の際などは最高12個入のパッケージがあらわれ、これは長さが25.5cmにもなる。
しかも箱の作りが引き出す形になっているため、25.5cmの箱ともなると延々引っ張り出しているような悠久を感じることができる。
全部引き出したときの長さなど51cmだ。物差しでは足らずメジャーではかる長さになってきた。
スーパーで物を買うときに「長いな~」と感心しておもしろい。ネギやゴボウと張れる長さだ。
長い上にKiriは白い。
真っ白だ。
乳製品だし食品が白いことは珍しいことではない。しかしKiriは四角いんだ。真っ白で、四角い。
今は違うが、かつてパッケージがこんな絵柄だったことがあった。


のどかな牧場に突如合わられる白き立方体。
そう、まるでモノリス(「2001年宇宙の旅」に出てくるやつ)だ。
完全にかっこいい。しびれる。
ここまででKiriが食品としていかにクールかを感じていただけたかと思う。ここからはホットな部分だ。
さきほどすこし触れたが、Kiriは定期的に2個増える。
6個入りは8個になり、10個入りは12個になる。貨幣価値の急激なゆらぎがおこるのだ。円高Kiri安時代の到来である。
単純に +2 になるところも熱い。
6個パックは8個化する。つまり約33%増。いっぽうの10個→12個は20%増で、増加率は圧倒的に6個の2個増量パックの方が高いがそういうことにはかまう様子が一向になくいさぎよい。
Kiriクラスタにとっては定期的に2個増量されることは大変なおなじみだ。結果、通常の6個、10個売りの価値が高まり、つい、もてはやす傾向にある。
友人の家に行って冷蔵庫にKiriの増量パックではない通常パックが入っていたらそれはその家が貴族の血をうけつぐことの証くらいに思っている。
まずもって、Kiriでなくともあまたの公式レシピというのはおしなべて風情があるものだ。
自社商品をよりおいしく食べてもらう、そしてより汎用的に使ってもらうことを目的にあみだされたレシピは思いがあふれた結果ユーザの想像の斜め上を行くことが多い。
Kiriのオフィシャルサイトにも公式レシピがあり大変な充実ぶりだ。一見、想像の域をでないおしゃれで楽しいレシピにあふれているが、たとえばこんなのがあり目が離せない。
Kiriは白い。そして四角い。同様に白くて四角い食べ物がそういえばあった。豆腐だ。
外見の同一性そのものを料理にする意欲的なレシピ。気分まで豆腐になってくるが、食べるとクリームチーズだ。
最後になってしまったが、当然おいしい。が、それは私が声をあげて叫ぶまでもないことだろう。
友人の建築家がかつてKiriの箱の底に敷いてある緩衝材を集めていた。波打ったボール紙の表面に「*」が模様として印刷されているものだ。
「なにに使うの」わたしは聞く。
「おみこしを作るの」一流の建築士として多方で活躍する友人は言った。
素材としてちょうど良く目を付けたのだそうだ。
わたしも数枚提供した。残念ながらその後交流が薄まり完成した神輿は見られていない。が、建築家がそれで神輿をつくるほどのKiriなのだ。
Kiriには無限の可能性がある。豆腐になるし、神輿にもなる。
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