他の素材にも
そういえば最近はAmazonの段ボールも、こういうピリピリって破るタイプのものがある。あれはどういう形だったか。
あとペットボトルのラベルも、こうやってピリピリやって分別できるタイプのがある。
まだまだ研究の余地があるな、ミシン目。
コンビニでお菓子を見ていて気づいたのだけど、箱のお菓子の開け口が昔と変わっている。
リボン状になったミシン目のふちをひっぱってピリピリッと開ける、あのタイプがずいぶん減っている気がする。
あのリボン状の開け口について、いろいろ買って調べてみた。
お菓子売り場を見ていると、あけ口はこれらのタイプが多い。
で、今回フィーチャーしたいのは、こういうやつだ。
お菓子の話をしていたのにサンプルが片方カップスープになってしまった。
そのくらい、お菓子でこのタイプのパッケージが減っていたのだ。(今回はコンビニで探したので、スーパーに行けばもっとあるとは思う)
で、今回注目したいのはその「減っている」という点ではなくて、リボンの形についてだ。
さっきのルヴァンプライムとクノールのコーンスープ、りぼんのミシン目をトレースしてみると、こんな感じになっている。
これがむかしながらの標準形だ。しかし売り場を改めて見てみると、かなりバリエーションに富んでいる。
は~いろいろあるな~、という感じだ。あけ口界もダイバシティの時代である。
しかしですね、これらは無駄にいろいろあるわけではないのだ。各社開けやすいように工夫を凝らした結果、こうなっている。
……はずである。はずであるが、もしかしたら単に「いろいろあった方がおもしろいじゃん」的にこうなっている、あるいは各担当者が好き勝手作ったため、統一されていないという可能性もゼロとは言えない。
本当にこれらが機能的なのか、ちょっと検証してみたい。
持ち手側が太くなっているものがいくつかあった。
単に持ちやすさのためだと思うのだが、それにしても気になることがある。
この謎を探るべく、実際に開けるところを動画で撮ってみた。
撮影中、部屋にいた子供が「開封動画撮ってるの!?」と言いながら寄ってきた。言われてみれば純度100%の開封動画である。中身の紹介とかなしでほんとに開封だけの。
で、この動画を見ると分かるのだが、紙の破れ方には2つの要素があるようだ。
A.紙はひっぱる方向(右方向)に破れる
B.紙は細いところでちぎれる
まず直線の場合、
右方向に引っ張るので右に破れる。そうするとすぐ下に次のミシン目があるため、紙に細い部分ができて、ちぎれる。
ただ持ち手の太いものは……
通常のミシン目だと、右方向に破れると次のミシン目から遠ざかってしまうため、Bの「細いところでちぎれる」が作用しないのだ。
そこで、右方向のミシン目をY字にしたり、くねっと曲がる方向を逆にする。
Y字になっている理由、おわかりいただけただろうか。
上のアニメーションを作っていて思ったのだが、これ、ミシン目の節の向きが逆のほうが良くない?
だって今使われているものだと、もしちょっと破るのに失敗したら、
こうやって下にズバーッて破れていってしまう。
でもミシン目の方向を逆にすれば、ちょっと変な方向にやぶれてしまっても……
こうやって、リカバリできると思うのだ。
そこで実際やってみた。
マスキングテープに、2パターンの切りこみを入れた。
上が、通常と逆のもの。僕がより開けやすいであろうと考えたものだ。
下が、一般的に使われているミシン目の切り方。
なるほど、切りやすさだけではなく、リボン自体の切れにくさも考慮する必要があったのだ。
素人の浅知恵が一瞬で論破され、むしろすがすがしささえある。
さて、今回集めた箱の中で一番異質だったのは、このコアラのマーチだ。
リボン全体が下向きに湾曲しているのに加え、よくみるとリボンのミシン目が、いつもの形ではない。
このミシン目の形に注目したい。なぜこんな形なのか。これも開封動画を見てほしい。
途中で破れてしまった!
といっても、コアラのマーチのミシン目がイマイチということではない。実は箱の構造的に、ミシン目設計の難易度がめちゃくちゃ高いのだ。
六角形の箱は、開封するとき箱をおさえる右手の力で、箱全体がゆがむ。そうすると紙の破れる方向も乱れる。コントロールが難しいということだ。
その解決策として、「より切り離しやすい」ミシン目を使用しているものと思われる。
同じロッテ製品でリボンの切り口をくらべてみると、右のトッポは紙が破れた断面(グレーのところ)が大きいのに対して、コアラのマーチはほとんどない。
これは手でちぎった部分が少ないということ。つまり、より軽い力で切り離しやすいミシン目の形があの( )を倒したような形だったということなのではないか。
さて、ここまで書いてきたことはぜんぶ独自研究というか、僕が現物パッケージを調べて「こうかな…」と思ったことを書いただけだ。
まったくの見当外れということもあるし、せっかくなのでメーカーにも問い合わせてみた。
ブレンディスティック編(回答:味の素AGF(株)広報部)
――ブレンディスティックのリボンは、商品によって、左の持ち手側が太いものとそうでないのがありました。それはなぜ?
回答:実は3つとも「OPEN」側を太くしています。 製品ごとに箱の寸法とつまみやすさのバランスを見ながら調整しているので、両者の角度には差があります。
え、まじ?白い箱のクリーミーカフェオレは一直線じゃない?
こんな目視で気付かないレベルで微調整が行われていたとは…!
――左半分のミシン目が矢印状になっているのはなぜ?
回答:斜めの部分がきれいに開くようにする為です。 力のかかる向きなどを考慮しながら、製品毎に調整しています。
これは予想通りだ!
トッポ・コアラのマーチ編(回答:(株)ロッテ広報部)
――トッポのリボンは、左端の持ち手部分だけ太くなっていますが、持ちやすくするなら全体に太くすればよくないですか?
回答:全体を太くしてしまうと、箱に対して開口部が大きくなってしまうため、左端以外は細くなっています。
なるほど、リボンのことばかり考えていて、残された箱のことは全く頭になかった!
―—太いトッポのリボン部分には、なぜ縦の切れ目が入っているのですか?
回答:ジッパー(開け口)付近や真ん中あたりを持って開けたときに、ジッパーが途中で切れてしまう、というご指摘をいただきました。強度を出すために、縦方向のミシン目をつけました。
え、そうなんだ…。こんな縦線が入っていたらかえって切れやすそうだと思ったのだけど、まだ僕が解明できていない未知の挙動があるのだろう。
あと、ずっと僕が「リボン」と呼んでいたこの部分、正しくはジッパーというんですね。
――コアラのマーチについて、トッポと異なり、ミシン目の形状が山型になっているのはなぜでしょうか?
僕の研究によると「箱が六角形だから切り離しやすいように」だが、はたして…?
回答:コアラのマーチのジッパーは 右利き・左利き、どちらの方にも対応できるユニバーサルデザインになっています。そのため右からでも左からでも開けやすいように、切り込みが入っています。結果的にその形が山型になりました。
あーーーーー!
なるほど!!!!
さっきマスキングテープで実験したとおり、普通のミシン目は逆からひっぱるとすぐにリボンがちぎれてしまう。そうならないための両側から開けられるミシン目、それがこの山型だったというわけだ。
バリアフリーのために考えられたミシン目。コアラのマーチの好感度が一気に上がった。
取材はここまででまた独自調査に戻ります。ほかにはパッケージ全体での工夫というのもあって、
ブレンディシリーズはリボンを使って箱の天井から開けるほか、箱の真ん中にもミシン目があり、切り離せばスタンドケースになる!さらに底面をパカッと開けることもできて、3WAYなのだ。便利!
あと意表を突かれたのがこれ。
スーパー戦隊チョコ。イラストに合わせてミシン目が入っている。これがあけ口だと思って買ってきたのだが、よく見ると、右下に「あけくちではありません」と書いてある。どういうこと……?
スーパー戦隊の作中にはしご車をモチーフにしたマシンが登場する。箱を使ってそのマシンを作ることができるようになっており、そのはしごを持ち上げるためのギミックだったのだ。
ユニバーサルデザインにしたりおもちゃになったり、まだまだミシン目には無限の可能性が秘められているのかもしれない……。
そういえば最近はAmazonの段ボールも、こういうピリピリって破るタイプのものがある。あれはどういう形だったか。
あとペットボトルのラベルも、こうやってピリピリやって分別できるタイプのがある。
まだまだ研究の余地があるな、ミシン目。
ロボットなんて作れない人たちが、自作の「自称・ロボット」を持ち寄り無理やりロボットバトルをするイベント、「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」。今年1回目の大会を、オンラインで開催します!
イベントはYoutube Liveでご覧いただけます。くわしくは告知ページにて!
https://dailyportalz.jp/kiji/hebocon-online-announcement
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