はじめての長崎
長崎駅にやってきた。まず驚いたのは目の前にそそり立つような急激な坂が見えたこと。そして路面電車が行き交う情緒あふれるまち並みだった。
このあと身をもって知る事になるのだけども、長崎市は港を中心とし、三方を山に囲まれた「すり鉢状」の地形。平地が極端に少ないのだ。
駅で手に入れた地図を広げキョロキョロしていると、「お困り?」と地元の女性が声をかけてくれた。しかも立て続けに2人も!
で、最初に向かう事にしたのは、駅からも見えた急激な坂の上に建つホテルである。
普通は車で行くようなのだが、足に自信があるなら登れないことはない、と教えてくれた。
ところどころ、石が無骨に重りあうような急階段を登る。坂なめんなよ、とさっそく長崎の洗礼を受けているような気になる。
ちょっと大変だけど、駅のすぐ近くでこれが味わえるのはむしろ嬉しくニヤついてしまった。(この後、嫌というほど坂を登る事になるのだけど)
ほんの少し登っては、振り返る。既に絶景なのだが、登るたびにさらに景色が良くなっていく。
お薦めスポット1:ホテル長崎からの眺め
約20分ほどでホテル近くにたどり着つくことができた。そこからは美しく輝く港と、坂一帯に建てられた家々が望めた。ここからの眺めは後で何度もお薦めにあがることになる景色だ。
中途半端な時間に長崎に到着したため、平地に下りるとすっかり暗くなってしまった。
次は食事処にでも向かおうか、とそのまままっすぐ歩いていると、先程の坂とは反対側の坂にすぐさまぶち当たる。そ、想像を超える坂の多さだ!
早くも腰と膝をやられながらたどり着いたのは茶碗蒸しが丼で食べられるというお店。地元の女性が、子供の時から出前でよくとっていた、と教えてくれた。
お薦めスポット2:吉宗(よっそう)の茶碗蒸し
すくうと抵抗もなくトゥルトゥルとほぐれていく茶碗蒸し。熱々の状態でスープを吸うように口に入れると幸せがのどから胃に向かって落ちていく。うまい!
そもそも茶碗蒸しって美味しいじゃないですか。それが長いこと楽しめるこの多幸感。これは薦めたくなるのわかるわ~
お薦めスポット3:グラバー園のライトアップ
次はホテルの方のお薦め。路面電車に乗り向かったのは外国人居留地だったグラバー園だ。
日本の近代化に大きく貢献したグラバーさんの邸宅をはじめ洋風建築をたくさん見ることができる。夜まで開園している事が多く、夜景が楽しめるのだ。
また気軽に絶景が見れてしまった。坂に並ぶ家々の明かりが灯り、街全体が輝いているのだ。長崎市にいたら、どこにいても毎日夜景が楽しめるんじゃないか。
こんな感じで初日は終了。翌朝向かったのは宿泊したホテルの方が激推ししてくれた場所である。
お薦めスポット4:何度も行きたくなる「長崎ペンギン水族館」
9種類180羽ものペンギンがいる水族館だ。
長崎は日本でもペンギンの繁殖の先駆けらしく、日本各地の水族館にいるペンギンはここの出身が多いのだとか。
「ふれあいペンギンビーチ」が最高
ホテルの方は子供の時からこの水族館が好きで、今では子供を連れて何度も来る位お気に入りなのだとか。
入館が510円(年間パス1,230円)と安いのもポイント高い!
なんとここ、隣接する海を一部開放し、10時半から15時までペンギンを泳がせている。
海でのびのびと泳ぐ姿や、時に砂浜にあがって休むところが観察できるのだ。
飼育下にあるペンギンを自然の海で観察できるのは世界初の試みだとか。
他にもこの水族館では100円で餌やり体験やバックヤード見学体験ができたり、また、カヤックに乗れたりと楽しめるイベントが盛りだくさんだ。
他にも世界最小のペンギンを見たり、世界のペンギングッズ・コレクションを見たりしていたら、すっかりペンギン好きになってしまった。
また、途中から色々と案内してくれた館長さんが優しい方で、丸1日いたいくらいだった。
ペンちゃん達のかわいい姿に後ろ髪をひかれつつ、館長さんお薦めのケーキ屋さんへ。水族館からほど近い。
お薦めスポット5:「トロワ エ キャトル」のペンギンケーキ
こちらのお店は、通称「シュガーロード」沿いにあった。江戸時代に高級品だった砂糖が長崎の出島から全国に運ばれた街道の事である。そんな歴史ある街道でスイーツをゲットできるとは嬉しい。
外に椅子があったけど、あいにく雨が降っていたのでお持ち帰りにした。後でどこかでいただこう。
長崎駅方面に戻り次に向かったのは、フォトスポットとして人気の橋だった。
お薦めスポット6:雨でも味のある「眼鏡橋」
その名の通り、アーチ状の橋と川面に映った橋によって、のび太がかけていそうなまん丸の眼鏡のようだった。
お薦めスポット7:美しいカレー「夕月カレー」
お次は、グルメ激戦区「浜んまち商店街」にあるカレー屋さん。前日の夜にいった茶碗蒸し屋さんからもすぐ近くの場所にある。
水族館の館長さんが学生時代によく食べたという、思い出深いカレー屋さんだ。館長さんの代わりに勝手に懐かしさを感じながら入店。
オーダーすると店名にふさわしく、「夕刻の空に映えるオレンジの月」をイメージしたルーがかかっていた。
オシャレな外観、絵画のように美しいカレー。それだけを見ると意外だが、お店は割と庶民派でカツやコロッケ、ハンバーグ乗せなどトッピングが色々できるシステムになっている。
きっとそれぞれ美味しいのだろうけど、このオムレツとの組み合わせが最高だった。ルーは甘めでカレーというよりもシチューに近い印象。卵のほわほわと相まって、館長さんがカレーに変化したかのように優しい味だった。
レトルトをたくさん買って帰る客が多いのも頷ける。
こちらの店員さんと、ケーキ屋さんからも推されてたのは、最近かかったという橋だった。
お薦めスポット8:130年ぶりに復元された出島の橋
地図上で陸地を指していたので最初ピンと来なかったが、そこは歴史の教科書に出てきたあの「出島」であった。てっきり海に浮かぶ島を想像していたけど、現在周りは完全に陸地になっている。
出島といえば鎖国時代の約200年間、日本で唯一西洋に開かれていた人工島だ。貿易の窓口でもあり、キリスト教弾圧のため西洋人を閉じ込める役割もあった。
現在は当時の様子をまるっと復元し、ちょっとしたテーマーパークの様になっている。
鎖国時代ながら華やかだった様子が垣間見えて面白い。
なんと21時まで開いているので夜までゆったり観光できるスポットだった。
お薦めスポット9:出島の隠れミッフィー
門番さんは色々お薦めしてくれた後、「これやってみて」といって、出島の周辺に隠れている9つのミッフィーのヒントの紙をくれた。
ミッフィーの絵本作家さんがオランダ出身で、その縁で企画された仕掛けらしい。
私はヒントがあるのに7つめがどうしても見つからなかった。もし見つけた方いたらぜひご一報ください。
お薦めスポット10:圧倒的支持、稲佐山からの夜景
バスとロープウェイを乗り継ぎ向かったのは、稲佐山展望台。
高さ333mと、東京タワーと同じ高さにある。
そこには金銀財宝をばらまいたような、とんでもなくゴージャスな夜景が広がっていた。
カメラ一枚には収まりきらず、実際はグルリと体を回転させないといけないくらい広い範囲で輝いている。みんな動画やパノラマ撮影に忙しい。
坂で足腰をやられる代わりに、長崎では常に、美しいまちなみが心踊らせてくれる。
長崎に住んでいる人たちが他のまちに行ったら景色が物足りないんじゃないだろうか。そんな疑問が浮かぶほど、まちの景色に何度も感動させられる。
さて翌日。晴天のなかバスに揺られ1時間強のところにある天然温泉へ向かった。
なんとここ、端島こと通称「軍艦島」を見ながらお湯につかれるという。
お薦めスポット11:温泉つかりながらの軍艦島
場所は長崎市の最南端に近く、軍艦島が一番よく見える辺りらしい。
温泉は、炭酸水素塩泉で土色をしており、湯の花がたくさん浮かぶいかにも効能がありそうなお湯だった。美肌になりながら、軍艦島が浮かぶオーシャンビューを楽しんだ。
軍艦島といえばかつて高品質の石炭がとれた炭坑の島だ。最盛期(昭和35年)には幅160m、長さ480mの広さに約5,300人も住んでいて、人口密度は世界一だったそう。
住居以外にも小中学校や病院、映画館、美容院、パチンコ屋など充実。高給取りだったため当時でもTVの普及率は100%だったとか。
温泉で話した地元のお母さんによると、親世代はここから軍艦島に野菜などを売りに行っていたそうだ。
軍艦島に上陸できるクルーズがあるそうだが、コースが限られているらしく、周りから見るのが一番趣があって良いそう。(上陸風景はT・斉藤さんの特別公開ツアーのレポが圧巻です)
さてまた市街地に戻り、「新地中華街」近くに向かう。
お薦めスポット12:「長崎蒲鉾」のちゃんぽん天
中華街を抜けたあたりに、かまぼこで有名なお店があるという。そこではカラフルなかまぼこがたくさん売られていた。
お薦めされていたのはちゃんぽん天という、ちゃんぽんの具が入った練り物。
すごい。麺だけじゃなくてキャベツやモヤシまでしっかり入ってる!歯ごたえが面白いしオヤツにぴったりである。
(自分で見つけた)お薦めスポット13:湊公園で青空将棋
近くの中国風の造りの公園で食べていると、ゾロゾロと人が集まり将棋が始まった。
皆もう数え切れないほど将棋を打っているようで、特に最初の展開が異常に早いのが見ていて面白い。
ここでは美味しいミルクセーキ(長崎ではジュースではなくシャーベット状)が出る喫茶店「ぶんぶん」という所をお薦めされたけど、行ってみたら定休日だった。残念。
お薦めスポット14:オランダ坂近辺の散策
最初に「お困り?」と声をかけてくれた年配の女性や、水族館の館長さんが懐かしがって話してくれたのはオランダ坂付近の思い出だった。
私はもちろん初めて歩く道だけれど、この中のいくつかは、出会った人たちの青春の道だと思うとちょっと違った目線になれて嬉しくなる。
館長さんの小さい頃は、雪が降るとこれらの坂を利用して自前のスキー板で滑って遊んでいたそうだ。危ないけど絶対楽しかったろうな。
また、散策中に出会った渋かっこいい男性によると、この辺は東京の吉祥寺にも雰囲気が似ているそうだ。
そしてよく見たらこの辺は電柱がない。景観に配慮されているのだ。言われないと気づかなかった。
お薦めスポット15:外国人居留地の名残の三角溝(さんかくみぞ)
店長さんのお薦めは、オランダ坂に見られるV字の側溝。水が少ない時でも排水できるように作られたもの。これも言われないと見落とす景色である。
お次は絶対寄りたくなる果物屋さんへ!
お薦めスポット16:お得で優しい果物屋さん「シマダ」
オランダ坂を下りると、石橋という路面電車の駅にたどりついた。その一角にある果物屋さんが次のお薦めだ。
出島の門番さんのお薦めの場所で、この辺を通る時は必ず寄っているそうだ。フルーツももちろん美味しいけど、コーヒーゼリーも好きなんだよね~と嬉しそうに教えてくれていた。
気さくなお母さんは「寒くない?」「遠くから一人で偉いね」と気遣ってくれた。私が長崎に住むことになったら間違いなく常連になるだろう。
なお、お母さんのお薦めは「お店で食べる長崎ちゃんぽん」。家でもよく作るけど、他人が作った方が美味しいのよね、と笑っていた。
お薦めスポット17:大浦天主堂とその周辺
果物屋さんから、もう恒例となった坂を登っていくと、初日の夜に外観だけみた世界遺産・大浦天主堂へと続く。
この辺もオランダ坂と同様に風情のある石畳と、振り返ればまちの絶景が見渡せるエリアである。
そういえばお土産屋さんなどのお店は表通りの一部だけだった。観光地なんだけど観光地すぎず、散策にもってこいである。
さて、お次は温泉で出会った男性が「お薦めというか、行っておいてほしい所」と挙げてくれた場所だ。
お薦めスポット18:長崎原爆資料館
長崎と原爆は切り離せない。旅先で辛い気分になりたくはないけど、それでもやっぱり行くべきだろうなと思い向かった。
最寄りの駅名は「原爆資料館」とあり、忘れてはならないという想いがズシリと届く。
思えば、学生時代の方が授業や修学旅行などで原爆や戦争の悲惨さを学んでいた。大人になるとむしろ、目を背けてばかりだ。
近くの小学校には防空壕が残されていると聞いていたので、そこにも寄った。
お薦めスポット19:山里小学校の防空壕
こういった遺構や資料を見て何を思えばいいのか分からなくなる。けど、ただただ、その辺で犬の散歩をしてる人や、縄跳びをしながら追いかけっこしてる親子を見てホッとする。穏やかな今を、嬉しく思う。
お薦めスポット20:冬こそ食べよう12段ソフト
さて、すっかり日が暮れてきた。この旅最後に向かったのは、長崎が生んだ一大アーティスト、福山雅治さんもお薦めすると噂のアイスだ。
「夏だと食べきるまでに溶けて手がベトベトになっちゃうから、夏は食べちゃだめ!」と地元の人が笑っていたアイスだ。
ずっしりと重い!普通の3倍はあるだろうこれ。
このアイスの機械、実は昨年壊れてしまって存続が危ぶまれた。
しかしさすが愛されてるアイスだ。クラウドファンディングで修理資金を募った所、たくさんシェアされ無事再開できたというのだ。
(なおその御礼期間としてこの時ミックスは300円に値下げされていた。2019年現在は元々の320円に戻っている。充分安い!)
アイスを食べ続けてたらさすがに徐々に体が冷えた。口の動きが若干固くなりつつも、愉快な常連さんと店長さんとで、長崎のどこを周ったかおさらいした。
お好み焼きもぜひ食べたかったのだけど、私にはもうその時間はない。
バタバタと身支度をしていると、長崎の締めにここに訪れた事を喜んでくれた常連さんが、アイスおごらせて!とすでに支払い済みだったのに300円くれて、店長さんはステッカーをくれた。
こんな感じで長崎の旅は終わった。いわゆる観光スポットを多く巡った気がするけれど、地元の人達の目線で歩いたまちはガイドブックを見ながらとは全然ちがう趣きのはずだ。
今回もらった意見をまとめると長崎の人達はみんな「坂の上から見るまちの景色」が大好きなようだ。私もあの美しい景色は忘れられない。
長崎のみなさま、ありがとうございました!
上、下、後ろ、左右。思わずキョロキョロしちゃうまち
まず急な坂を見上げる。けつまずかないように、味わいのある石段や石畳を見ながらのぼる。時折足をとめ、振り返ってみる。絶景が広がるパノラマビューに思わず首を振りまわす。
長崎にいる間はこの繰り返しだった。後ろを振り返る度に、絶景なのだ。そんなまち、なかなかないよなと羨ましく思う。
最後に、長崎在住ライターT・斉藤さんが当サイトに書いた記事がまとまっている「長崎ガイド」のリンクも貼っておこう。長崎がもっと好きになる情報がたくさん紹介されてます。
長崎出身の生きものライター平坂さんとの対談はこちら