まずはざざっとベスト20
記事の紹介をする前に、まずはどーんとランキングを見ていきましょう。
ベストテンと銘打ちながらもずずいと20本を並べました。こちらです! たーたーったーらったたーらーたーらーら!(ベストテンのランキング発表時の音楽で)。
来年は、バスだ!
デイリーポータルZはお金をかけずに身近なものごとであればどんなネタでも取っていくのが身上。それだけにどうかと思うほどまとまりのない20本が揃ってしまいました。
ゆるキャラ、猫、ミニ四駆、寿司、ミステリー、イベント、深海魚にクビ。「どんな記事がうけるんだろう?」という角度から見て、見えるものがほとんどないというランキングです。誇らしい。
キツネのテーマパークが話題になったと思ったら
こんどはサンバカーニバルに注目が集まる
しいて言えば高速バスがテーマの記事が20本中に2本も食い込んでいるところが見所でしょうか。
格安と高級の乗り比べ
超高級版を体験
読者のみなさんの興味が夜走る速いバスにあることは分かりました。
2013年、記事がとたんに夜行バスの紹介記事ばかりになったら察してください。
ベスト10のみどころは
それにつけても1000本以上ある中での、これがベスト。
一体どんな記事だったのか。ベストテンの10本に絞った上位1%群について次ページからじっくり見ていこうじゃないですか。
黒赤白でくまモンに見える病
ゆるキャラに支配される熊本と脳(石川大樹)
“経験上、30分もくまモンを見続けると80%の人が、1時間で98%の人が、くまモン病に罹患する。
出張で熊本を訪れたライターが現地の熱狂的なまでのくまモンフィーチャーぶりに恐れをなしながら、徐々に黒赤白でレイアウトされたものはすべてくまモンに見えるという病におかされていくレポート記事。
すっかりおなじみになった、くまモン
“むしろ「遍在している」と言ってもいい。ユビキタスである。
熊本でのくまモンフィーバーをレポートする前半から、くまモン病の発症へとダイナミックかつ強引に展開する後半が記事の魅力。
強引でありながら「あ、確かに」と納得する部分が大きいのも魅力の記事だった。
くまモン病かかるとこれもくまモンに見える
いくところまでいくとこれもくまモンに
面白い上に「変身」の内容を思い出せる
カフカ「変身」をネット通販風に描く(林 雄司)
“ありえない!
朝起きたら
虫
縦に長いページに大きな文字と画像で商品紹介やレビューが連なるネット通販のページ。あの手法でカフカの「変身」を描いた、「意欲作」という言葉はこのためにあるのではという記事。
カフカの「変身」がネット通販で大人気の訳あり商品に
“一家は休暇の手紙を書く(メール便可!)
あの名作が大変なことに! となる一方で、そもそもの「変身」という小説自体のどえらさが改めて浮き彫りに。不条理小説がネット通販風の描き方に出合ってようやくしっくりきた、という意外すぎるところに着地したまとめなど、全体的にスカッとしっぱなしであった。
通販×不条理=しっくり
悲しみが悲しみを生んで笑う
リカちゃん人形をダンボールで作ると泣けます(大北栄人)
“2歳児をよろこばすためのおもちゃ作りのはずが、いつのまにか悲しみのサグラダファミリアを作っていた。
2歳の娘のためにおもちゃの代わりに作っていたダンボール工作。つくり続け技術も向上し、さらに娘に気に入ってもらえるものをと模索するうちにふとしたきっかけで悲しい物語が立ち上がっていく。
子どもを喜ばせるための工作がここまで悲しくなる
“父はもう泣いている。何も知らず喜ぶ娘、これ以上の悲しさはないじゃないか。
作り上げた人形(ダボちゃん)のサイドストーリーが異様に悲しくなってしまった結果、それを喜ぶ娘もまた悲しいという悲しみスパイラル状態に。感極まって中島みゆき「時代」が歌われようとして終わる。もう笑うしかない。
言及ツイートは1万5千件を超え、Facebookでも1万いいね! された。
幼い娘っこが無邪気に喜んで日本のインターネットが泣いた
以上、2012年スリートップは、ひょっとこな中に物語がある3本でした。
続いてはおそらく今年もっともバカやった記事が登場です。彼女といちゃいちゃします。ひとりでな。
どこまでも1人で撮るデート写真
一人で女子とカフェデートしている写真を撮る方法(地主恵亮)
“もちろんこの写真は一人で撮影している。
彼女がいるような状況を作ってそれをセルフタイマーで撮影する「だけ」と言ってしまえばそれまでの記事なのだが、出来上がった写真の異様なまでの完成度の高さ、笑顔の自然さが話題となり地鳴りのように広がった。
これ、一人で撮影しているのだ
“三脚は安ければ1000円もしないので、本当にデートをするよりも安く写真は撮れてしまう。
いまだかつてなく役立たないハウツー記事だが、最後の最後まで彼女がいる風をいかに装うかが自信に満ち溢れながら伝授されるので、空しさが即効ではなくじわじわと効いてくる(読後すぐはぽかーんとするのに忙しい)のだった。
このように撮影しています、という状況説明写真はさらにさらにもう一台三脚を立てて撮影、どこまでも1人
猫がぞろぞろ寄ってくる服
着るだけで猫にモテモテになれる服 (ほそいあや)
“ハーレムは作れるのです。
毛足の長い、古くなった服に粉末またたびを擦り込み着る。その手があったという納得の方法でどうかと思うくらい猫にモテモテに。
気恥ずかしくなるくらいモテるそう
“人生で一番モテた今日という日を忘れない。
あまりにもモテはじめると感情が一線を越えて子猫に慕われる母猫の気持ちになるそうで、モテの極みを猫から感じる記事。
モテすぎて泥だらけになるってちょっとない
確かな技術と古い設備と今昔話
年季入ってる床屋で「昔の髪型にしてください」(大北栄人)
“昔の髪型には長い、短い、中間しかなかったのだ。
87年続く年季の入った床屋さんで83歳の理容師さんに散髪してもらうという記事。昔の髪型の恐るべき種類の少なさ、ビートルズの登場でヘアスタイルにバリエーションが出てきたなど髪型豆知識がぞろぞろ語られる。
これはという年季の入りっぷり
“あの伝説のフジロック行ったんですか? みたいな感覚で、進駐軍にチョコもらったんですか? と思わず訊いてしまった。
地元の今昔話も聞かせてもらって、会計は2,200円であった。なおオーダー「昔の髪型」のアンサーは七三分け。記事ではさいごに概念としての「お父さん」がどうしようもないくらい鮮やかに具現化した。
お父さん
一人でも彼女と一緒の気分になり、一時的に猫にもてまくり、そしてお父さんになる。人生を感じさせる3本(無理やりまとめたぞ)でした。
ベストテンは残すところあと4本。
カニ、クビ、尻から油、それからサボが登場します。
カニをミニ四駆に。興味本位で
ミニ四駆全国大会にカニで出る(大北栄人)
“ただなんとなくカニが走ってたらおもしろいかなと思ったのだ。
ミニ四駆の全国大会、ジャパンカップが今年復活すると聞き、なんとなくカニを走らせてみたいと思いついて実行。本物のカニを買い、専門家に指導を仰ぎ、苦労しながらこれはというものが完成した。
カニである、そしてミニ四駆である
“「そもそもこれ出られませんよ」あなた素晴らしい正論!メルマガ出してたら購読させて!
とはいえ、ジャパンカップはタミヤで公式に発売されたボディでしか出場することができない。結局カニボディでは出られず、通常のボディに装着しなおして出場するのだがスイッチの入りが甘いというまさかのミスで最低記録を更新した。
その後「コンクールデレガンス」という見た目のコンテストに出場した記事も掲載。
選外だった。
クビになった日のことを語ります
僕がクビになった日(藤原浩一)
“私事で恐縮だが先日僕は会社をクビになった。
会社をクビになった日のことが静かに語られるという異色すぎるほど異色な記事。しかも語られながらラブプラスに代わる新しい「○○プラス」が発表されるのだ。今日クビになりました、そして新しい「ラブプラス」として魚類との恋愛ゲームはどうですか、と記事は続く。
魚類との恋愛ゲーム、ハゼプラス
“悔しい、でも温かくて気持ちいい。ここでようやくちょっとだけ泣いた。
「○○プラス」の提案は、クビになった日の訥々とした語りを錯乱させるようでいて、逆に事態の静けさに拍車をかけている。
この内容で、読んでも不思議とネガティブな気分にならない稀有な記事でもある
タイトルで全てが説明されています
巨大深海魚を釣って食べたら尻から油が!!(平坂 寛)
“ああ、もう一度あの魚を食べたい。それもたっぷりと(自己責任で)!
「5切れ以上食べると大変なことになる」と言われ食品衛生法により市場での取引も禁止、しかしとんでもなく美味しいという深海魚のバラムツを捕獲して自己責任で心おきなく食べてみようというチャレンジ記事。
本当は5切れ以上食べちゃいけないものを、豪勢に食べる!
“消化できなかった油脂がお尻から流れ出す
どんな大変なことになるのかというと、お尻から油が流れるというのだ。記事は最後に心からの「絶対真似しないでください」でまとめられている。
あっぱれなほどタイトルそのままの記事とも言える
これがお宝だった
“結果はなんと70000円近い価値があるということがわかった。
「そんなアメリカンドリームはいい加減にしていただきたい」、「『こち亀』のエピソードみたいなウソっぽい話でもある」と、記事として書いてなお信じられないのが伝わってくる。だって7万円って!
ひゃー
数打って、当てていきます来年も
人気記事の共通点は冒頭からくくるのをあきらめていましたが、並べて語って改めて分からなくなったのでした。
宝を拾ってヒット記事、かと思ったらクビになってヒット記事。人生の対極にあるような事柄のレポートがどちらも受け入れられる、そんな器がデイリーポータルZのなのだと思うのです。
来年も、結果的にたくさん書いて当てていきます。どうかどうか、ごひいきに!