特集 2012年9月28日

廃墟の水族館に行って来た

小さな冒険と発見。
小さな冒険と発見。
水族館の廃墟が長崎県にある。
廃墟ファンには有名な物件だが、廃墟であること以外にまったく情報がなく、謎に包まれている。

それを見に行ってきました。
長崎より九州のローカルネタを中心にリポートしてます。1971年生まれ。茨城県つくば市出身。2001年より長崎在住。ベルマークを捨てると罵声を浴びせられるという大変厳しい家庭環境で暮らしています。

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謎の水族館

その水族館がオープンしていた頃の情報がまったくない。 名前は「西海橋水族館」。近くのバス停にいたおじいさんに尋ねても知らないと言うし、知り合いの水産研究施設の所長さんに尋ねても行ったことがなくわからないと言う。こんなに情報が少ないのも珍しい。謎の廃墟だ。
西海橋
西海橋
場所は西海橋というかつては東洋一と言われた橋のふもと。橋の上からそれは見ることができる。
これ。
これ。
見ての通り、非常に風光明媚な景観の中にある。
桟橋のようなものが架かっており、かつ途中で切れている様子も気になる。

バス停にいたおじいさんは
「釣り場として気になってる」
と言っていた。
その先にはアルハンブラ宮殿のような建物も見える。(西海橋コラソンホテル</a>)
その先にはアルハンブラ宮殿のような建物も見える。(西海橋コラソンホテル
ところで、なぜ廃墟など見に行くのか?と思う人もいるだろう。

さほど深い理由はない。強いて言えば失われた文明を求めて冒険するのと似てることだろうか。謎、ジャングル、古代遺跡…。スケールはうんと小さいが、多少なりともそういう要素を味わえるところが主な理由ではないかと思う。
みんなこういう冒険への憬れが心の奥底にあるのだ。
みんなこういう冒険への憬れが心の奥底にあるのだ。
謎のガチャガチャ(右)。
謎のガチャガチャ(右)。
右のガチャガチャ、ラベルが滲んで中身がサッパリわからない状態だが、これが“謎のガチャガチャ”として近所の小学生たちに人気だった。謎は人を惹き付ける。
「金色のダンゴムシが出てきた!」
などと子供たちが謎を解き明かしたように語り合っていた。

失われた文明を求めて

廃水族館への道は2つある。
ひとつは森林コース、もうひとつはジャングルコースだ。
森林コースの方が容易い。
森林コースの方が容易い。
森林ルートは公園にあるトイレの後ろの小道から入る。案内板等は一切無く(もっともそんなものがあったら謎っぽさが薄れてしまうが)、
「この道を進んでいくと一体何があるんだろう…?」
という雰囲気の中、森を歩いて行くとやがて唐突に現れる。
どこに行くか分からない道が森の中に伸びている。
どこに行くか分からない道が森の中に伸びている。
倒木が行く手を阻む。
倒木が行く手を阻む。
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ジャングルへようこそ

もうひとつのジャングルルートは、さきほどのアルハンブラ宮殿ならぬホテルの横から行く。
ケーブルカー乗り場の跡がある。
ケーブルカー乗り場の跡がある。
ものすごいジャングル。
ものすごいジャングル。
その脇に下へ下ってゆく階段がある。こちらも相当なジャングル。虎が飛びかかってきてもおかしくない雰囲気。
その脇に下へ下ってゆく階段がある。こちらも相当なジャングル。虎が飛びかかってきてもおかしくない雰囲気。
写真には写ってないが蜘蛛の巣がすごい。それとカニが歩いていてガサゴソ音がする。
写真には写ってないが蜘蛛の巣がすごい。それとカニが歩いていてガサゴソ音がする。
階段を下った先にケーブルカーが埋まっていた。
階段を下った先にケーブルカーが埋まっていた。
海に辿り着いた。古代遺跡っぽい。
海に辿り着いた。古代遺跡っぽい。
湖のように波が穏やかだけど、これは海。
湖のように波が穏やかだけど、これは海。
水族館が見えた。
水族館が見えた。
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青地に白で「西海橋水族館」と書いてあった。上方には「イルカ池」という文字もうっすら見える。
青地に白で「西海橋水族館」と書いてあった。上方には「イルカ池」という文字もうっすら見える。
コンクリ崩れないかな…と心配しながら回廊を渡る。
コンクリ崩れないかな…と心配しながら回廊を渡る。
手すりが水中に沈んでいる。
手すりが水中に沈んでいる。
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おそるおそる内部へ

これだけ朽ち果てているのでいつ崩落してもおかしくない。非常に危険だが恐る恐る中に入ってみた。
割れたガラスが散乱している。カラカラカラ…と風でそれらが転がる音が聞こえる。
割れたガラスが散乱している。カラカラカラ…と風でそれらが転がる音が聞こえる。
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中はいわゆる廃墟だ。
人が滅多に来ないところだけに考えることは、私が遺体の第一発見者とかになってしまわないこと。そうならないことを願いつつ入っていく。

学生時代、夜中にレストランの廃墟に数人で肝試しに行ったことがあった。そのおよそ一ヶ月後、そこで遺体が発見されたことをニュースで知り、「もしやあの時既に…」と青くなったことがある。
本が落ちていた。
本が落ちていた。
人が滅多に来ないところに落ちているものといえば、定番はエロ本だ(どういうわけか)。が、今回そこにあったのは魚の本だった。水族館の備品だったものだろうか。
これは思わず「へぇ~」と見入ってしまった。(金魚ってこんなに長生きかな?)
これは思わず「へぇ~」と見入ってしまった。(金魚ってこんなに長生きかな?)
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2階へと上がる階段。
2階へと上がる階段。
床が抜け落ちたりしないだろうか…?と心配しつつも恐る恐る2階へ。
足下からメリッと音がするとビビる。
足下からメリッと音がするとビビる。
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中はそれほど広くない。比較的小規模な水族館だったようだ。
中はそれほど広くない。比較的小規模な水族館だったようだ。
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最後に周辺の様子を見てみよう。
そこで私は思わぬ水族館らしさを感じることとなった。
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そこは今でも水族館だった

再び外に出て、なにげなく海を覗いてみて驚いた。

むちゃくちゃいっぱい魚がいる!
魚がうじゃうじゃいる!
魚がうじゃうじゃいる!
ここで釣りしたらどんだけ入れ食いだろう?
いや、網でもすくえそうだ!と、見てたらひどく興奮してきた。

これか!
以前「ありえないところに釣り人がいる」という記事を書いたが、どうして釣り人は人が行かないようなところばかり攻めて行くんだろう?と不思議に思っていたが、こういう場所があるからなのか!
白い点々模様がある魚。
白い点々模様がある魚。
が、よく見ると魚屋に並んでるのとは違い、釣って食べるには適してなさそうなラインナップだった。

ひょっとしてこいつら、水族館から逃げ出した奴らの子孫じゃないだろうか…?
枯葉みたいな魚。
枯葉みたいな魚。
ウニやヒトデもいる。
ウニやヒトデもいる。
水が透明で海底まで見通せるせいもありよく見える。まるで水族館のように海の生き物たちを楽しむことができた。
クラゲも泳いでいた。
クラゲも泳いでいた。
私を釣り人だと思ったのだろうか。猫が近づいて来た。
私を釣り人だと思ったのだろうか。猫が近づいて来た。
これは何かな…?
これは何かな…?

夏草やおさかなどもが夢の跡

という具合で、ロケーションが大変素晴らしいところだった。一方、建物や石の桟橋等は崩壊が激しく危険なので、何かあっても文句言わない人以外は近づかない方がいい。
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