特集 2012年8月6日

「湖面から突き出た足」製氷器を作る

怖~い、涼し~い。
怖~い、涼し~い。
暑い。この前置きで説明するのももうやんなるくらい暑い。何をしても暑い。暑さ対策をしても、窓の外はものすごい日差しだ。どこに行っても空気がもわっとする。

せめて、目で見るものから涼しさを得たい。ならこんなのはいかがか。「湖面から突き出た足」だ。
1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

前の記事:あやつり吽形(うんぎょう)を作ってみたが

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あまりにも有名な足

横溝正史原作の映画「犬神家の一族」。犬神家当主が残した奇妙な遺言書をめぐり、一族の間で醜い争いが起こり、やがて陰惨な連続殺人が展開されていく―。

公開されたのは1976年、自分が6歳のころだ。幼い頃の自分が本編をじっくり見たことはないと記憶しているが、それでもあの「スケキヨの白い顔」と「湖面から突き出た死体の足」は強烈に心に刻まれた。なんて恐ろしげな映画なんだ。絶対2度と見るまい。そう誓った。
これが有名な「湖面の死体」のシーン。意外と小さい。
これが有名な「湖面の死体」のシーン。意外と小さい。
こういう氷を作ったら、さぞ涼しそうだろうなぁ。
こういう氷を作ったら、さぞ涼しそうだろうなぁ。
けれども近年、私の中で横溝ブームが起こり、DVDを片っ端から買って見まくった。数回にとどまらず、作業中にもBGVとして、さて何十回見ただろう。そして、白い顔は言うに及ばず、湖面から出た足も、今見たらそんなに怖くはない、ということがわかった。大人になったからか、むしろ滑稽にも感じられる描写である。

だが仮にも「死体の足」である。そしてただの死体ではなく、殺された人の死体である。実際、幼い頃には怖かったんだ。恐ろしい、ああ、なんて恐ろしいんだ。ということにして話を進めたい。

この足の形の氷を作って、グラスの中に浮かべ、怪談や肝試しの要領で涼を得てしまおうと、こういう計画であります。ではさっそくその「足」のモデルを探しましょう。
企画の元になったのはコレ、白熊が水上に浮かんでる製氷器だ。こんな風に、あの足を。(「DIME」2011年16・17合併号より)
企画の元になったのはコレ、白熊が水上に浮かんでる製氷器だ。こんな風に、あの足を。(「DIME」2011年16・17合併号より)

彼がタコでなくてよかった

つまりあの足の形の製氷皿みたいなものを作るわけで、まずは元の足を作らねばならない。そこから型を取って水を流し込んで氷を作るのだが、失敗が怖いので一から足を作ることは避けたい。どこかにいいモデルはないものか。
いた。こっちのほうが怖くないか?
いた。こっちのほうが怖くないか?
某アニメ映画に出てくるアンドロイドのフィギュアである。この足なら生々しそうだし、いいのではないか?と小躍りした。このまま型とっちゃえばいい。だがしかし。
でかい。風情も何もあったもんじゃない。
でかい。風情も何もあったもんじゃない。
普通に水やお茶を飲むグラスに例の「スケキヨ足(正確にはスケキヨ本人ではないが)」を浮かべたいのだが、それにしてはこのアンドロ足はでか過ぎる。マンホールに頭からはまった、みたいなドタバタ劇に終わりそうだ。もっと小さい人体はないか。

家にはそういう人体はなかったので、仕方なく100円ショップに行って、リカちゃん的人形を買って来た。これならサイズもぴったしだ。
着せ替えフレンド・エリーちゃん、ごめんねこんな役で。
着せ替えフレンド・エリーちゃん、ごめんねこんな役で。
はい、いきなり足をもぎますよ。
はい、いきなり足をもぎますよ。
膝を曲げたい、がしかし!
膝を曲げたい、がしかし!
さすが100円人形である。リカちゃんと違い、この足は自由に曲がらないのだ。中は中空で、簡単には曲げられない素材だった。あの「湖面から出た足」を再現するのに、やはり足は曲がっているほうがそれらしいと思うので、さてどうしたものか。

仕方がない、切って隙間を埋めるか。だいたいこういう予想外の作業で、いつも時間をとることになるのだった。
買ったときからある「バリ」を削る。
買ったときからある「バリ」を削る。
関節手術をいたす。
関節手術をいたす。
パテを盛って、無理やり足曲げ手術が完了。
パテを盛って、無理やり足曲げ手術が完了。
丸1日かけて元の型が完成。膝下も少し短くした。
丸1日かけて元の型が完成。膝下も少し短くした。
この青い土台に足を埋め込んで、このまま土台ごと型をとるだけ、かと思いきや、もんもんと考えねばならない問題に突き当たった。抜けないんだ、きっとこのままでは。詳しくは下の図のとおりである。
詳しくは、にしてはスカスカな図。
詳しくは、にしてはスカスカな図。
点線の部分がみっちり全部シリコーンのつまった製氷型であるとして、足と土台部分が空隙になっているとしよう。この空隙に水を入れて凍らせ、上にスポッと抜こうとしても、太線の部分が型自体に邪魔され、うまく取れない恐れがある。いや、うまくとれないに決まっている。こういう空間把握能力に乏しい自分でも、わかる。

なので仕方なく(何度「仕方なく」とこぼしているのか。これもきっと暑さのせいだ)足1本ずつを、2面から型を取ることにする。俄然不安になってきた。
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型取りの夏

素人説明で余計わからなかったかもしれない。つまりこういう風に型をとるのだ。ああめんどくせえ。
それぞれの足を、半分粘土にうずめて準備。
それぞれの足を、半分粘土にうずめて準備。
型取り用シリコーンを流し込む。
型取り用シリコーンを流し込む。
固まったので裏返して粘土を外す。さすが、気温が高いので通常の半分以下の時間で固まった!
固まったので裏返して粘土を外す。さすが、気温が高いので通常の半分以下の時間で固まった!
表裏の型がくっつかないように、ワセリンを塗って離型剤に。ここにまたシリコーンを流し込む。
表裏の型がくっつかないように、ワセリンを塗って離型剤に。ここにまたシリコーンを流し込む。
また早く固まった!本当にうれしい(だが全部で1kgのシリコーンを消費した。うれしくない)
また早く固まった!本当にうれしい(だが全部で1kgのシリコーンを消費した。うれしくない)
こんなに大げさなことになるとは思わなかった。もう2度と使わなそうな型が、たくさんできたぞ!
こんなに大げさなことになるとは思わなかった。もう2度と使わなそうな型が、たくさんできたぞ!
視覚から涼もう、なんて言い出してからずいぶん手間がかかって、余計に暑くてかなわないじゃないか。

でも氷であの足を作るには、こうやって2面式で片方ずつ型を取っておけば、たぶんカパッと氷が型から外れるのではないか。そう願いたい。もうシリコーン使い切っちゃったし。

まあそうしたところで、別の方向にまた問題が残っているわけだが、それは次のページで。

さて、型を十分に洗って、水を入れてみようじゃないか。
このままだと左右がすぐには判別できないので、名を刻んでおいた。
このままだと左右がすぐには判別できないので、名を刻んでおいた。
テープで隙間無くぐるぐる巻きに。
テープで隙間無くぐるぐる巻きに。
そーっと水を流し入れる。
そーっと水を流し入れる。
垂直になるように、冷凍室へ。
垂直になるように、冷凍室へ。
凍らせているうちに、それまでに撮った写真を整理しつつ、たまに冷凍室に見に行ってみる。すると、1つは順調だったが1つは空っぽであった。水が全部、庫内へ漏れていた…

テーピングを再度試み、これでいいだろう!と冷凍室へ入れてまたしばらく経ってから見てみるとまた空っぽ…それを数回繰り返し、最終的にこんな補強具をつけられて彼は冷凍室へと入っていった。
4年後、復活します!
4年後、復活します!
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せめて浮いてくれ

数時間ののち、表面が白く凍ってきたので取り出してみる。頼む!
生き別れた双子が再会、でも育ってきた環境がまるで違う、みたいな。
生き別れた双子が再会、でも育ってきた環境がまるで違う、みたいな。
パカッ、まではできそうだ!
パカッ、まではできそうだ!
多少の水漏れがバリに。足ヒレがついて半魚人になってしまうので、取る。
多少の水漏れがバリに。足ヒレがついて半魚人になってしまうので、取る。
とりあえず、パカッと取れたー。
とりあえず、パカッと取れたー。
これをこのままいっぺんにグラスに浮かべたら、確実にそれぞれ倒れて、そのまま沈む。ただの足の形の氷だ。湖面の死体にするには (よく考えたら、私は死体の足を水に浮かべて飲もうというのか)、この2つをくっつけなくてはならない。

ちょっとだけ断面が溶けてきたところで、無理やりギュッとくっつけて、そーっと冷凍庫に戻してみる。
あとはお若いお2人でどうぞー、とそっと扉を閉じる。
あとはお若いお2人でどうぞー、とそっと扉を閉じる。
取り出すときにまだくっついてなくて、動揺して落っことして足首取れた!うわーん。
取り出すときにまだくっついてなくて、動揺して落っことして足首取れた!うわーん。
何せ氷である。部屋のエアコン効かせていても、いじっているうちにどんどん溶けてくるので気が気じゃない。その焦りが出てしまった。それに、ピッタリと合わせて置けないのにそうそうくっつくもんじゃない。当たり前だな。もう一度、確実な方法でやり直そう。

2本の足をもう一度凍らせた後に、土台を別の容器で一緒に凍らせてみよう。
ちょうどいい、ゼリー食べたあとの容器があった。ぴったり。
ちょうどいい、ゼリー食べたあとの容器があった。ぴったり。
ぐらつくので輪ゴムで押さえて冷凍庫へ。なんて大変なんだ。
ぐらつくので輪ゴムで押さえて冷凍庫へ。なんて大変なんだ。

緑茶に浮かべるべきだったか

溶けないように、壊さないように冷凍室から取り出し、かねてから用意しておいたグラスにすぐさま突っ立てた。
ギャーーーッ!
チャンチャンチャン、チャンチャン、チャチャーン、チャーン(テーマ曲「愛のバラード」とともに)
チャンチャンチャン、チャンチャン、チャチャーン、チャーン(テーマ曲「愛のバラード」とともに)
訪問先でこうやって出されたらどうだろう。善意か、悪意か。
訪問先でこうやって出されたらどうだろう。善意か、悪意か。
実は水に直接浮かべると、やはり重心が高かったようで傾いてしまう。よって、グラスの幅の狭くなったところに「はめこむ」形となってしまった。浮くには、もっと足を小さくせねばならなかったか。
溶けてくるに従って傾く。恐ろしいというより、哀愁を感じさせる。
溶けてくるに従って傾く。恐ろしいというより、哀愁を感じさせる。
諸行無常である。
諸行無常である。
できればやはりもう少し足を小さく作って安定させ、本来の映像に近づけたほうが叙情的だったかもしれない。

常に溶解と傾斜との戦いで、涼むどころでなかった。子供に見せたらやはりトラウマになるだろうか。カルピスやファンタに浮かべたら喜んでいいのか怖がったらいいのかよくわからないことになるだろう。
ほんの少しでも涼しくなっていただけたら幸いだ。
飲むとき足が鼻に入ってとても邪魔。
飲むとき足が鼻に入ってとても邪魔。

【告知】

ちょい先ですが、月末にイベントに出演いたします。

2012年8月31日(金)

ザリガニワークス presents
おバカ創作研究所 Vol.2
http://tcc.nifty.com/cs/catalog/tcc_schedule/catalog_120801203996_1.htm
Open 18:00 Start 19:00 End 21:30 (予定)
お土産ガチャ付!!
前売券/¥ 2,000 当日券/¥2,500(お土産ガチャガチャ付き、その他飲食代は別途)
3月の第1回目以来、早くも2回目開催となりました。大物ゲストの登場もあるかも?!とのこと。
よろしくお願いいたします!
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