りくつは分からないが、一文字でいける
新宿、神田、のように、地名の前半が最後の一文字を修飾するというパターンはそこそこ多い。新しい宿、神の田である。そこで、最後の一文字さえあればその場所の素性はだいたい分かる。
ぼくはこういう、よく分からないけどやってみたら面白いことになりました、というパターンが多い。すると詳しい人がいろいろ教えてくれたりするのだ。ありがたい。
東京の町の名前の最後の一文字だけで地図をつくる、ということをやってみた。すると一文字だけなのに地形やその土地の素性があらわれておもしろいのだ。
北海道や京都など、他の場所でも同じような地図を作ってみた。
先日、こんな地図を作った。
なんのこっちゃと思うが、拡大するとこうなっている。
じつは小さな文字が集まってできている。東京の地名の末尾の一文字だけを並べたものなのだ。
中央やや右でぽつんと「田」となっているのは、千代田の「田」だ。全体をよく見ると「山」「谷」「海」などが散らばっている。それぞれ、代官山だったり渋谷だったり青海だったりするのだが、こうやって末尾の一文字だけにすることでうまい具合にその土地の特徴や地形が浮かび上がるように見える。
これを作ったきっかけは永太郎さんという方のツイートだ。
「地図」の定義ギリギリを攻めてる感じがする pic.twitter.com/P4c7Rnma8L
— 永太郎(ながたろう) (@Naga_Kyoto) June 21, 2019
永太郎さんは京都で地理を専攻している学生だ。先日も「なんでもない地図を語る会」という記事でお世話になった。なにかの調査の一環だと思うが、地図から地名だけを抜き出してものを作っていた。これがとても面白く、しかもそれ自体ぎりぎり地図と言えないこともない。しかし、残念ながら文字が重なっている。
そこで、たとえば「吉野1丁目」なら「一丁目」を外して「吉野」にしたうえで、末尾の一文字だけをとって「野」にしてみるのはどうか。「野」は一文字しかない割には、この町の特徴をもっとも端的に表しているように見える。このルールで東京についてやってみた、というのがこの冒頭の地図だ。
これを東京以外の場所でもやってみようというのが今回の記事の趣旨だが、その前に東京での個人的な萌えポイントを1、2点紹介しておきたい。
真ん中を左右にわけている空白地帯は荒川だ。ぶっとい放水路が地域を左右にわけている。周辺の風景は上流では「田」だったりするものが、最下流では「砂」「海」になるあたり、萌えるというほかない。
大田区、世田谷区のあたりに色をつけてみた。水に関連するものが青、地形に関連するものが茶色だ。山や丘を越えると沢や川が見えてくる風景が見えてくるようだ。東京とはこんなにも地形豊かなところだったのかと思う。それぞれ大岡山、奥沢などだ。
もうすでにいい感じである。中央下がぽっかり白いのは日高山脈だ。確かにあんな大山脈で東西を渡る道路もないし誰も住んでなさそうのが伝わる。右側でぽつんと「寒」とあるあたりの寒そうな感じもいい。
北海道の地名の末尾といえば、やっぱり「別」とか「内」だろう。というわけで「別」だけを赤くしてみた。あちこちにある。このどれかが女満別だ(どれでしょう)。ベツは「川」の意味だと聞いたことがあるので、地形と重ねてみよう。
言われてみればそうかな、という感じか。少なくとも山のてっぺんにはない。右下の、いかにも川からの土が積もりましたという土地には「別」がいっぱいある。
関係ないんだけど右端のくるっとした野付半島はやっぱりかっこいい。くそう一度は行きたい。
チーバくんという千葉県の形をしたマスコットキャラクターがいるのだが、いまでは逆転して千葉県を見ると「チーバくんだ!」と思う。上の図なんか目がありそうなあたりに完全に目があるじゃないですか。
おなじように地形と色をつけてみた。青が水関係、茶色が地形関係、緑は植物や田んぼとかだ。千葉って上半分だなーと思う。南には町が少ない。左上の工業地帯あたりは真っ青だ。九十九里浜に新田の緑ががんばっている。
真ん中あたりにあるひらがなたちもかわいい。これはどのあたりなんだろう。この順番で開墾したとかだろうか。いろいろ勝手に想像するけど全然違うかもしれない。それも楽しい。
京都は中心市街地の町名の多さがすごい。そして上のほうにぽっかりと「苑」。こういう風景はだいたい権力の中心だということが分かってきた。京都の中心は「苑」。東京の中心は「田」である。空虚とかではない。
中心部を拡大するとこんなである。下の方に屋、寺、座なんかが目立つ。寺はわかるような気がするけど屋はなんだろう…。気になるけどできればまた京都に行った時に現地で納得したいので、分からないままにしておきたい。天邪鬼。
福岡県のこの形はなんだろう、ということをいつも思う。ぼくには、小さなこどもが両手を広げて踊っているように見える。上のほうに二本、白いソリコミみたいなのが入っているのは山脈だろうか。福岡を東西に三分割している。
博多の中心部。河口なので川、洲、浜のような水関連の地名が多い。それから「服」とか「屋」だ。商人と職人の香りを感じる。海に近いところの「城」も気になる。こんなところに城があったの…? と思って調べたら防塁があったらしい。そうか…そうでした…大変だったんだな…という気持ちになった。
新宿、神田、のように、地名の前半が最後の一文字を修飾するというパターンはそこそこ多い。新しい宿、神の田である。そこで、最後の一文字さえあればその場所の素性はだいたい分かる。
ぼくはこういう、よく分からないけどやってみたら面白いことになりました、というパターンが多い。すると詳しい人がいろいろ教えてくれたりするのだ。ありがたい。
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