なかなかない
10点の事例を見てきた。後半では例外的なほどに完璧な行き止まりを紹介したので、なんだあるじゃんという気持ちになっているかもしれない。でも、なかなかないです。
周りにもしこういう行き止まりをご存知ならぜひ筆者までお知らせください。喜んでまずはストリートビューを見にいきます。
あとは、そもそもこういう映画の場面ってほんとにあるの、という話はあるかもしれない。なかったらこの記事もなんなのということになるのだが。
行き止まりに追い詰められて絶対絶命、みたいなシーンがあると思う。しかし実際にはそういう絶望感を煽るほどの行き止まりはなかなかない。なんとか探してみたい。
(注:行き止まりは私道の場合があります。入口に私道と明記してある場合は立ち入らないようにしましょう)
映画で、主人公が行き止まりに追い詰められて絶対絶命というシーンがあると思う。
どの映画とは言えないが、どこかで見たような気がするのだ。たとえばジャッキー・チェンの映画はどうだろう。追い詰められ、その場の小道具をうまく使って脱出する、そんなシーンがあるような気がする。
そういうシーンでは、行き止まりの奥と左右はできるだけ壁のようになっていてほしい。絶対に逃げられないという緊迫感がほしいのだ。
とはいえ、見たことあるような気がするだけで、本当はそんなシーンはどの映画にもないのかもしれない。でもここではあるという前提で話を進めたい。
ところが、こんなふうに三方が壁のようになっていて絶望感を煽る行き止まりは現実にはほとんどない。よくあるのは、左右が民家になっているやつだ。
これも行き止まりには違いないのだが、なんというか追い詰められ感に欠けるのだ。ジャッキーなら隙間や奥へ余裕で逃げこみそうだ。台所に出た虫みたいな言い方で申し訳ないのだが。
もっと緊迫した、どこにも逃げられそうにない行き止まりを探したいのだ。どこかにないものだろうか。
まずはこの例から見てみよう。
奥が崖、というパターンだ。これはとにかく奥の方には絶対に逃げられないという絶望感がすごい。その点はグッドだ。
ただ、やはり左右が民家になっているのが惜しい。家と家の間の隙間から左右に逃げられそうに感じてしまう。ジャッキーならなおさらだ。塀が低くなっているところからも乗り越えられそうに見える。
つづいてこちら。
まず左右の壁感はそこそこある。とくに右側が高めの塀になっているのがグッドだ。
しかし奥の視界が抜けているのが惜しい。実際には向こうは線路になっていて、奥に抜けることは決してできないのだが、視界が抜けているというだけで絶対絶命感がとても薄くなってしまうのだ。
これはどうだろう。三方が壁のような行き止まりという条件はちゃんと満たしている。なのにどうしてもこれじゃない感じが出てしまうのだ。
第一に、ジャッキーはこの道に逃げ込まないだろう。もっと広い道を選びそうなものだ。第二に、神社では色々とアクションしづらいだろう。賽銭箱の上で立ち回るわけにも行かない。なかなか難しい。
鎌倉の切り通しだ。両脇が崖という点でポイントが高い。ジャッキーが来てもおかしくないが、崖崩れのため前方に進めないようになっている。
ロケーションはいい。ただバリケードというのが見た目に弱いと思うのだ。もっとこう、物理的にほんとに行けないでほしい。日本語がおかしいが、ジャッキーにはもっと強い障害がほしいのだ。
日本橋で見かけた行き止まり。三方がビルになっていて奥と左の壁っぷりは申し分ない。はるか高いところまで壁になっていて、仮にセルゲイ・ブブカが棒を持って逃げたとしても跳び越せそうにない。
ただ、右側のビルに入り口の穴が空いているのが惜しい。扉から建物内に逃げ込めそうなのだ。そこに「余地」を感じてしまう。
上で見た行き止まりは、残念ながら理想からは遠い。ちゃんと探せばもっとあるだろうと思うかもしれないが、意外とないものなのだ。映画みたいな行き止まりは映画の中にしかないのだろうか?
くやしいので、「三方が壁のようになっている行き止まり」について Twitter で助けを求めてみた。
するとありがたいことにいくつか有力な情報を教えていただいた。それらを紹介したい。
まずは暗渠(蓋をして道にした川)で有名な本田創さん(@hondaso)さんが教えてくれた暗渠物件だ。
練馬の暗渠の行き止まりだ。なんとも素晴らしい。
初めて見たときは驚いた。ほぼイメージどおりで、もうこれが正解でいいのではと思った。
左右も奥も、容赦なく壁になっている。追い詰められて絶対絶命になるところが想像できる。ただ、ジャッキーがどうして暗渠に逃げ込んだのかという疑問は残るが。
奥の壁はこんなふうになっている。ジャッキーにとってはやや低く、ジャンプして逃げられそうだ。ただ、それはそれでいい気がする。おそらく悪役たちは手をこまねいて、登るのにちょっと時間がかかるだろう。そういうシーンありそうじゃないか。そんなところまで想像できてしまう点も素晴らしいと思う。
つぎはつぶ貝さん(@oshushitoon)という方に教えていただいた、渋谷の行き止まりだ。
奥はまた別の建物によって行き止まりになっている。なるほど都会の行き止まりという感じだ。一見すると奥にまだ道が続いていそうだけれどもちゃんと閉じている。
奥はこんなふうだ。三角コーンとコーンバー(黄色と黒の棒) があるところがいい。コーンバーは長さ2mほどの棒なので、ジャッキーなら1つつかんで槍のように振り回すだろう。三角コーンを敵の頭にかぶせるというシーンも目に浮かぶようだ。
丑三(@370Nabe)さんが教えてくれた、白金台の行き止まり。
ここは大きな施設の裏手だ。なので室外機やパイプなどが並んでいて、いい感じの雰囲気がある。たしかに、建物の裏手でのアクションシーンは映画にありそうだ。
実をいうとここも暗渠になっている。暗渠に行き止まりありということかもしれない。
みなさんはドンツキ協会をご存知だろうか。ドンツキとは袋小路(行き止まり)のことで、協会では各地を歩き、行き止まりを見つけたり研究したりしている。
そのドンツキ協会の齋藤さんから教えてもらった沖縄の行き止まりがこれだ。
壁が石積みになっている。なるほどこんなパターンもあるのかと思わせる。沖縄の離島でよく見るこの石積みは「グック」といい、島で取れる石灰岩を使っているそうだ。なにせ珊瑚でできている島なので。
このごつごつしたテクスチャとまっすぐな行き止まりが、すごくゲームっぽいと思う。一人称視点のシューティングでありそうだ。石垣の向こうはお屋敷だったりバナナ畑だったりするので、とくに敵は出てこないが。
なお、ドンツキ協会によると「実は写真左手が建物敷地の入口となっておりますが、当時観光施設(アトリエ)が移転して無住となっているため、ドンツキ物件として扱うことにしております」とのこと。
つまり、何を持って「ドンツキ」とするかということをちゃんと定義しているということなのだ。誠実。
次もドンツキ協会の齋藤さんから教えてもらった京都の行き止まり。
これはすごい。三方とも壁しかない。構成のシンプルさにおいては、究極の行き止まりといっていいのではないだろうか。
冒頭で描いた理想の行き止まりがまさにここにあると思った。バイクたちが駐車しているのもむしろいい。追い詰められた先の行き止まりの風景としてありそうだからだ。
ここはドンツキ協会にとっても珍しい例のようで、『この事例は私どもも「完全なるドンツキ」と、究極的な事例として珍重しております。』とのことだ。
ドンツキ協会 Facebook:http://www.facebook.com/dontsuki
10点の事例を見てきた。後半では例外的なほどに完璧な行き止まりを紹介したので、なんだあるじゃんという気持ちになっているかもしれない。でも、なかなかないです。
周りにもしこういう行き止まりをご存知ならぜひ筆者までお知らせください。喜んでまずはストリートビューを見にいきます。
あとは、そもそもこういう映画の場面ってほんとにあるの、という話はあるかもしれない。なかったらこの記事もなんなのということになるのだが。
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