

この成功体験が古びないうちに、もういちど遠回りの通勤をしてみようと思った。ちょうど学校が冬休みで、子どもを連れていく必要もなかった。
今回は不測の事態ではないから、行き先を自由に決められる。
思い浮かんだのは、あの人の家だ。

ある冬の朝、私はベートーベンちに行くことにした。

いざ出発だ。

寒さに震える身に、トラムの優しい光が届いた。

誰もいない。

乗り換えのための下車。

人生について考えるための時間が与えられる。





誰もいない。




バス停に行く。

乗客がいる。私はもう孤独ではない。

ここからは歩いていく。

もうすぐだ。

苦悩を突き抜けて、歓喜に至れ!



ベートーベンちに着いた。

生誕250周年、おめでとう。
あなたの作品に救われた人間がたくさんいるんだよ。

ベートーベンちに寄ってから、3分ほど歩いて、


またべつのベートーベンちに行った。

あの人は、夜中にうるさくしたりして、よく家を追い出された。
だからこのあたりには、ベートーベンちがたくさんあるのだ。

当時のウィーンには、敷金・礼金の制度はあったのだろうか。


さらに歩いて、小径に入る。

あの人は、ここで交響曲第6番「田園」の楽想を練ったという。

職場からどんどん遠ざかっていく。

2日後の海外出張では、プレゼンが7回ある。でも資料ができていない。
シューベルトの交響曲第8番「未完成」だ。

ベートーベン公園で小休止をしていると、ふいにあの人が現れた。

名も知らぬ東洋人よ。

わたしは、わたしの歩むべき道を歩いてきた。

おまえには、おまえの行く道があるのではないか?


私はハイリゲンシュタット駅から職場へ向かった。

とくべつ企画「よけいなことをする日」
2/29は4年にいちどのうるう日です。
このスペシャルな日を祝し、デイリーポータルZは今日いちにちかけて、よけいなことをしたおします。
- 「よけいなことをする日」とは?
- 11時 家で朝食を食べたあとモーニングを食べに行く(鈴木さくら)
- 12時 のり巻きにのり巻こう(べつやくれい)
- 13時 無糖の飲みものに砂糖を入れる(ほり)
- 14時 オムライスに生卵をかける(林 雄司)
- 15時 通勤前にベートーベンちに行く(Satoru)
- 16時 よけいなこと投稿まとめ
- 17時 サラダを炒める(安藤昌教)
- 18時 牛皿とライスを買って家で牛丼にする(ジーン)
- 19時 よけいなことリンク集
- 20時 パック寿司を海鮮丼にする(古賀及子)
- 21時 家族で犬の散歩に行く(ヨシダプロ)
- 22時 ハンバーガーにポテトを挟むとダイエットによい(本当)(石川大樹)
- 23時 ボトル湿布(藤原浩一)

