特集 2023年9月20日

東京国立博物館の愛くるしい埴輪(はにわ) ベスト3(選者:山田窓)

 

【第1位】

「子を背負う女子」(6世紀、栃木県真岡市出土)

――これもかわいいタイプ?

山田:ただかわいいだけじゃないんです。この埴輪、前から見るとなんの変哲もない女性の埴輪に見えるのですが…後ろに回って見てください!

 山田:小さな子が背負われてるんです…!

――ほんとうですね!かわいい…

山田:その名の通り、母の背中で安心しきっている子どもを表現しているのではないかと言われています。このような母子の像はたいへん珍しいそうです。

山田:1500年、背負われたまますやすやと寝ているのでしょうか。文句なしの、どストレートに愛くるしさナンバー1です。

――急に埴輪に人生を感じるようになってきました。

山田:なお、この母の埴輪、よく見ると頭に壺をのせています。労働をしながらの子育て、いつの時代も育児はたいへんですね…

ですけど、その表情はやわらかく、母性的に見えます。遠い過去の幸せな一場面ですね。

…と、人情話で終わりたいところですが、ちょっと違う想像もできそうです。この埴輪と同じ古墳から、男女の裸像の埴輪が出たそうです。

この埴輪も顔に赤い彩色を塗っているので儀式に参加してる姿と考えられますし、五穀豊穣や子孫繁栄、もしくはなんらかの再生の儀式だったりするのかも。

――おお、急展開。

現代人が見ても愛くるしい造形をしていながら、やっぱり現代人の常識だけじゃわからないところが面白いですね。

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――これを読んで東京国立博物館や埴輪に興味を持った方にメッセージはありますか?

山田:トーハクには本当にさまざまな文化財が展示されており、1日で回れないくらい見どころだらけです。

今回何を取り上げようかと迷いながら、自分もトーハクがきっかけでその魅力を知った埴輪にしてみました。

ひとつ注意して欲しいのですが、トーハクは常設展でもけっこう展示替えが多く、紹介した埴輪が見れないこともあります。

そういう時はむしろチャンスだと思って何度も通うと、思わぬ宝物に出会えたりします。

――まだ見ぬ愛くるしい埴輪が登場するかもしれないということですね。ありがとうございました。

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