小出し記事 2021年4月13日

思い出と立地と味のローカルっぷり 佐世保ハンバーガー日記「Stamina本舗 Kaya本店」編

人生の半分ほどを佐世保で過ごしている。そしてさらにその半分くらいは、「佐世保といえばハンバーガーだよね」という他県の方々からのコメントに真顔で「はい」と返事をすることに費やされている。

名物だろうがなかろうが、ハンバーガーは美味い。なんでもない日々の暮らしの中でハンバーガーを食べたくなる瞬間はきっと誰にでもあるだろう。ラーメンみたいなもので。

今日は「カヤ」が食べたくなった。

1986年生まれ佐世保在住ライター。おもに地元の文化や歴史、老舗や人物などについての取材撮影執筆、紙媒体のお手伝いなど。演劇するのも観るのも好き。猫とトムヤンクンも好きです。

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小出し記事「佐世保ハンバーガー日記」
ライター:山本千尋

第一回:甘いマヨネーズと厚切りチーズには夢がある「ヒカリ」
第二回:ミートソースとクリームチーズなんて、ずるいよ「エスアンドケイ」
第三回:日本一長いアーケード街でハンバーガーを「マクドナルド」編
第四回:思い出と立地と味のローカルっぷり「Stamina本舗 Kaya本店」編
第五回:良い意味で突き放してくるアメリカンな味「ブルースカイ」編

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「伽倻(カヤ)」とは、かれこれ腐れ縁だ

「伽倻」との付き合いは、かれこれ高校生の頃に遡る。今でも縁がある、仲の良い女友達に誘われたのがきっかけだった。

「お腹空いた。伽倻(以下:カヤ)買ってウチで食べようよ」。まるで近所の駄菓子屋に行くかのようなノリで彼女は言った。

「カヤって何屋さんなの?」と聞くと、「知らないの!?ハンバーガー屋だよ。とっても美味しいんだよ。“伽倻”って書くの」と、漢字まで教えてくれた。これぞ、記事のタイトルでよくある“地元民が教える!”という声高なやつである。が、わたしは地元民なので、“地元民が地元民に教える!”となるわけで、とてもひっそりとしているのである。

女友達に初めて教えてもらったカヤの味は、わたしののちの定番となった。県外に住んでいたとき無性に恋しくなり、帰省しては食べていた。その女友達とは、互いに子どもを持つ身になり、年に数回ではあるけれどふとしたきっかけで言葉を交わす。どちらも腐れ縁なのだ。

今日は、カヤが食べたくなったので、カヤのために外出をする。20分ほど、車を走らせる。何かのついでではなく、カヤのために。

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「Stamina本舗 Kaya 本店」。平日でも、昼食時は人が並ぶ。15時以降に行っても多い日もあって、「いったい何飯なんだよ!」と内心悪態をつきながら買いに行ったこともあるがわたしも彼らと同類であった。
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今でこそ「カヤ」「Kaya」呼びだが、以前は「伽倻」の存在が大きかったように思う。看板ではささやくように主張しているけど。

到着した。注文カウンターへ行き、わたしの定番の味「チキンかつれつバーガー」、ノーマルなハンバーガー、そしてポテトを注文する。普段はチキンかつれつバーガー一択なのだが、食べ比べてみたくなったのだ。

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おとなり佐賀県のブランド鶏「ありたどり」を使用したバーガー。看板の年季の入り方から、相当な陽の当たりっぷりがうかがえる。

「30分ほどお待ちいただきますが。」と、とても普段から言い慣れているようすでスタッフの女性から返された。

しまったそうだった。平日でも昼ご飯時だと、混雑してスムーズに買えたためしがなかったのだった。あらかじめ電話予約をしておくべきだった。

観光らしき客と、あきらかな地元民が程よいバランスで入り混じるハイブリッドな店舗前を眺めながら、さてどうしようかと思案する。

そうだ、目の前にあるじゃないか。

イオンが!

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イオン佐世保白岳ショッピングセンター。平屋タイプだ。ロイズチョコの移動販売車が来た時にちょっと地元民がTwitterとかで話題にしたりする。

ちなみにこちらのイオンは、専用駐車場を持たないカヤにいくつかスペースを貸し出してくれているという懐の深さなのだ。

ちょろっと買い物をし、少し通りをうろうろすることにした。

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観光要素がほぼないローカルな立地

イオンで買い物を済ませたあと、「TRIAL(トライアル)」へ。

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安くてでかい肉がほしいときに行く。「価格破壊スーパー」などとうたわれているが、そもそもはIT企業だと知りおののいている。

福岡に本社を置き、全国264店舗、九州100店舗を展開するディスカウントショップだ。ボリュームのあるお弁当コーナーがやたらと充実しているのだ。

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駐車場の裏手側には、のり枠工が施された斜面が。つい「いびつなワッフル!」と口走ってしまった。

この近辺は、商社に町工場など、働く人たちが多いエリアなのだ。ちょうど、カヤとイオン、トライアルを結ぶ道沿いにも転々としている。よって、カヤまでの道のりに観光的要素は一切ない。

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カヤへ向かう道。商社、町工場、コンビニ、釣具屋、ディスカウントストア。まさに地元民エリア。

観光客たちのモチベーションは、まさに「カヤだけ」なのだ。そう考えると目の前を通っている道路が、ものすごい吸引力と地元民の推しだけで動き続ける空港のオートウォーク(歩くエスカレーター)のように見えてくる。

そういえば、観光ではなくお土産要素ならある。

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先日執筆した仕送りリレー記事にも登場した、佐世保発の菓子「味カレー」を販売する大和製菓、ひもの工場直営の津田水産。 
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向かいにある電柱が、唯一観光要素があるスポットだったことに今回気が付いた。「とっとっと」は、長崎の方言でもトップ3に入るほど有名なフレーズである。

 

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働きマン+高専の学生+自動車学校の生徒のお腹も満たしてきたのだ

早くバーガーを食えよ、と言われそうだがもう少しだけ付き合ってほしい。カヤから徒歩3分足らずの場所には、高専と自動車学校がある。 

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左手に高専、右手に自動車学校。いきなりだだっ広い道になり世界が変わる。

学業や車の免許取得にいそしむ人々がいるわけだ。そりゃあお腹が空いたら行くよなぁ。ハンバーガー。

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南国ムードたっぷりな教習所のコース。

 

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ローカルのなかのローカルを地で行く感じ

比較的長い時間つぶしのあと、バーガーを受け取って帰宅した。イートインスペースは人がいっぱいで座れなかったのだ。

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左がチキンかつれつ、右がハンバーガー。包み紙にマジックで書かれたゆるい文字は相変わらずだ。
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わたしが高校生のときから食べ続けているチキンかつれつバーガー。

おやきをモチーフにして焼かれたというふわふわのバンズが帽子のようだ。「アメリカはここにあるか?」と聞かれると、「いや、Stamina本舗ならあるがね」と答えたくなるほどオリジナリティにあふれている。一般的な佐世保バーガーのイメージとはまた違う、これまたローカルな印象を受ける。そして何より、ノーマルででかいのだ。

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わたしの顔と比べるとこんな感じだ。

キッチンスケールで測ってみると、重さが370gあった。数字で見ると改めて重いよねと感じる。18年間愛し続けてきたずっしり感は370gだったのだ。

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家族とシェアしようと思って切って初めて、チキンかつが二枚入っていたことを知る。

揚げ物が挟んであるのに、不思議と胃に負担がかからない。鶏肉の脂が上質なのか、ぴりっとした生玉ねぎのアクセントのおかげなのか。やや甘めのオリジナルソースはごまの香りをふんわり添えて。やはり佐世保のハンバーガーは甘さがキーなのか。うまく具材をまるっとまとめてくれる。そんなわけで、客観的に見ると胃袋がバグってるなあと思えるほどガツガツいけてしまう。

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ノーマルのハンバーガー。恥ずかしいことだが、2年前、佐世保バーガー記事執筆の仕事で初めて口にした。お肉感がギュッとしているので、チキンかつれつの時とは食べる口の形状が変わるぞ!ちなみに重量は260g。

また、皮付きポテトのボリュームたるや。 

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紙一枚でくるんと包んでセロハンテープで一か所パシッととめた状態で出てくる。昔話に出てくる旅人のおにぎり感覚である。

これが本当にでかくて。フライドポテトは2本以上一気に食べるのがマイルールです、とか言っていたのを今回だけは撤回させてほしい。

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中指のおそるおそるっぷりが伝わるだろうか。気を抜くと取りこぼしそうになるほど芋がでかい。カリカリしてるしすっごく塩が効いてるしですすむすすむ。

高校生の頃、女友達に誘われて「伽倻」へ初めて行ったあの日、チキンかつれつバーガーと皮付きポテトを二人分買って、2km先の高台にある彼女の家まで30分以上かけて登った。極限の腹ペコ状態であったにも関わらず、わたしたちは完食することができなかったのだ。

怖いものなんてなかったあの頃に経験した挫折の1つ、「伽倻」。ノーマルなボリュームでありながら、18年経った今もやはり敵わないのであった。

 

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家族にお裾分けしようと皿に盛り付けたらものすごくわんぱくな見た目になった。

 

Stamina本舗 Kaya

おやきっぽくカリッと焼かれたふわふわバンズは唯一無二。どれもボリュームがすさまじい。アメリカンというより、Stamina本舗だから。どローカルな味と立地に震えてほしい。

 

 

小出し記事「佐世保ハンバーガー日記」
ライター:山本千尋

第一回:甘いマヨネーズと厚切りチーズには夢がある「ヒカリ」
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第五回:良い意味で突き放してくるアメリカンな味「ブルースカイ」編

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