小出し記事 2021年3月16日

甘いマヨネーズと厚切りチーズには夢がある 佐世保ハンバーガー日記「ヒカリ」編

人生の半分ほどを佐世保で過ごしている。そしてさらにその半分くらいは、「佐世保といえばハンバーガーだよね」という他県の方々からのコメントに真顔で「はい」と返事をすることに費やされている。

名物だろうがなかろうが、ハンバーガーは美味い。なんでもない日々の暮らしの中でハンバーガーを食べたくなる瞬間はきっと誰にでもあるだろう。ラーメンみたいなもので。

今日は天気が良かったので、佐世保港付近をぶらぶらしながらハンバーガーを食べた。

1986年生まれ佐世保在住ライター。おもに地元の文化や歴史、老舗や人物などについての取材撮影執筆、紙媒体のお手伝いなど。演劇するのも観るのも好き。猫とトムヤンクンも好きです。

前の記事:佐世保の遊郭の本を自費出版した84歳の男性に話を聞いた

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小出し記事「佐世保ハンバーガー日記」
ライター:山本千尋

第一回:甘いマヨネーズと厚切りチーズには夢がある「ヒカリ」
第二回:ミートソースとクリームチーズなんて、ずるいよ「エスアンドケイ」
第三回:日本一長いアーケード街でハンバーガーを「マクドナルド」編
第四回:思い出と立地と味のローカルっぷり「Stamina本舗 Kaya本店」編
第五回:良い意味で突き放してくるアメリカンな味「ブルースカイ」編

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無性にハンバーガーが食べたくなるときがあるよ

どこかの地域の「名物」は、地元民にとってどのような存在であるのだろうとふと考える。

長崎県佐世保市の名物として代表的なのは佐世保バーガーで、かれこれ20年くらい盛り上がり続けている。

米軍基地が置かれた佐世保が受けたアメリカ文化の1つ、佐世保バーガー。米軍関係者から直接レシピが伝えられたのが始まりとされ、駐留アメリカ人向けに販売されていたのが日本人向けにアレンジされ佐世保各地で広く親しまれるようになったそうだ。

佐世保バーガーの名は特定のハンバーガーを指すのではなくあくまで総称。定義として挙げられるのはオーダーを受けてから手作りすることだ。作り置きなし、出来たて焼きたてが原則なのだ。

でかい、うまい、というわけで佐世保バーガーが食べられるお店もざっくり30店舗ほどに増えた。多いように感じるが、ハンバーガー専門店に加え、カフェや老舗の喫茶店がひっそりと出していたりする。「えっ、ハンバーガー、あったんだ」と小さく驚くことも多々ある。

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やなせたかし氏がキャラデザを手掛けた「佐世保バーガーボーイ」。ちなみに、同氏作詞でたいらいさお氏が歌う「佐世保バーガーソング」もある名物っぷりだぞ。

個人的には大きくヤッタァとありがたがることは少ないけれど、「身体がわんぱくになるものが食べたい」スイッチが入ったとき無性に食べたくなるときがあるのだ。それはもうラーメンのように。

創業70年の老舗「ハンバーガーショップ ヒカリ」

66歳になるお義母さんが学生のころに食べていた味があった。昭和26年創業の「ハンバーガーショップ ヒカリ」だ。

本店に行きたかったが、この日は残念ながら店休日。それならばと、支店である佐世保港近くのショッピング施設内にあるさせぼ5番街店に行くことにした(ヒカリは本店とさせぼ5番街店の2店舗ある)。

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「ハンバーガーショップ ヒカリ」。土日祝日は地元民に「おおー賑わってるなあ」と温かく見守られる場所。

大きく【学生に人気!】と書かれたジャンボチキンスペシャルバーガーを注文したが品切れだった。

仕方がないのでスペシャルバーガーとポテトのLサイズを注文した。仕方がないのでスペシャルで、という妥協の仕方がいまいち自分でも分からない。

「ポテトは塩か塩・コショウが選べますよ」と店員さんが言い終わらないうちに塩・コショウでお願いしますと丁寧に頼んだ。

コショウがかかっているフライドポテトは、佐世保でもやはりレアだ。しかも皮付きの厚切りタイプではなく細長タイプだとなおさら。思わず小さなガッツポーズをする。

番号札を手渡された。ラミネートされた小さな正方形のカード。ハンバーガーの絵柄に「2」の数字が躍っている。ヒカリをはじめ、オーダーを受けてから鉄板でバンズやらパティやら焼き始める佐世保バーガー店では、提供まで最低5分はかかる。今回はわたしより前にオーダーした人が家族連れだったため、なんとなくゆっくりぶらっとすることにした。

近くでは、それぞれに小型犬を散歩させていた2人のおじいちゃんが談笑していた。犬同士がリードをぐるぐる絡ませてくんずほぐれつのほほえましいようすだった。

情報量の多い佐世保港周辺➔佐世保駅をぶらり

店舗の目の前は港だ。フェリーやら海上自衛隊の巡視船やらが停泊している。コロナになる前は、マンション並みにデカい客船もバンバンきていた。

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いつのまにかフォトスポットができていた。

港沿いを歩く。わたしは、こじんまりとしていながら情報量の多いこの景色が好きだ。

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釣りをするおじいちゃん、高速道路、高架橋、佐世保駅、マンション、商業施設、フェリー乗り場が一気にフレームインしている。
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今はさみしい国際ターミナル。
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フェリー乗り場。建築家の北川原温さんの設計だそう。
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屋上には広場があって気持ちがいい。昼は学生やOLがお昼ご飯を食べていたり、ダンスの練習をしていたり、子ども連れがいたり。夜は少年たちがサイファー(ストリートラップ)を繰り広げていたりもする。

佐世保駅にもぶらりと足を延ばした。

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JRのほかに私鉄の松浦鉄道(MR)がある。日本最西端の鉄道ということだ。
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プチ旅情あふれる路線図。

 

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2019年に設置された階段アート。全45段に駅名がずらり。

 ローカルで小ぶりなエネルギーに心地よさを感じつつ、そろそろハンバーガーができる時間になったので「ヒカリ」に戻った。

港街風情とハンバーガーと

天気がいいので、外で食べてやろうという気分になった。人気のないあたりのベンチに腰掛け、がさがさと袋をさぐる。

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奇をてらうことのない純粋な手書きのロゴがいい。

ハンバーガーの包装紙にも手書きのロゴが。「ヒ」の曲線のフリーハンドっぷりがたまらない。ポテトの袋がやたら攻めてる感じだ。オリジナルと雰囲気が違うがこれは。 

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“フルフル夢フル”という新登場ワードにおや、となる。

よく見ると、袋に書かれている文字は「POPCORN(ポップコーン)」でPOTATOは控えめに併記されている。これは市販のやつだ。胸が躍った。フルフル用の市販の袋だ!どこで買えるんだろう。すっかり市販の袋に心を奪われてしまった。

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早く食えよ、と思うが気になるのである。
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開けます。わー、写真じゃ伝わりにくいけどいっぱいペッパーかかってる。やったー

 

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ポテトは二本以上一気に食べるのがマイルールです。
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厚切りチーズが顔をのぞかせるよ。

フェリーが出航していく。目線だけで見送りつつバーガーの包みを持って開けた。こぶりなサイズ感のわりにずしりと重い。厚みのあるチーズとエッグが顔をのぞかせた。一口かじる。

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うまい

 あぁ佐世保っぽい味がする、と思った。佐世保っぽいというのは、甘いマヨネーズだ。甘いマヨネーズと厚切りチーズの酸味、コショウの効いたパティのコラボが身体をわんぱくにさせる。そりゃ美味しいさ。そんな組み合わせ。とても夢がある。

そうだ、さっきターミナルの屋上で見た、制服姿で語らっていた女子高生たち。春休みの先にどんな青春が待っているのだろうね。そんな若々しさと甘酸っぱさ。ハンバーガーを食べながら海を見つめ、わたしは「うまい」と誰に言うでもなくつぶやいたのだった。

 


ハンバーガーショップ ヒカリ

ふんわりバンズに甘いマヨネーズ、ペッパーの効いたパティ、新鮮野菜が仲良くマッチ。彼らの良さをグッと引き立てる厚切りチーズは恰幅の良い頼れるおばちゃんだ。ニクイ。そんな女にわたしはなりたい。
 

 

小出し記事「佐世保ハンバーガー日記」
ライター:山本千尋

第一回:甘いマヨネーズと厚切りチーズには夢がある「ヒカリ」
第二回:ミートソースとクリームチーズなんて、ずるいよ「エスアンドケイ」
第三回:日本一長いアーケード街でハンバーガーを「マクドナルド」編
第四回:思い出と立地と味のローカルっぷり「Stamina本舗 Kaya本店」編
第五回:良い意味で突き放してくるアメリカンな味「ブルースカイ」編

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