次は何しばりでさまよおうかな我々
というわけで、難読駅でのさまよいでした。見守りありがとうございました!
オーラスに、取材後の報告会で、浄真寺のきゅっぽんを紹介するきだてさんに対抗して家にあるなんらかののマスコットを見せつけるパリッコさん(八街の土産ではない)をどうぞ。
次はどこに行こうかなー!
そもそも難読というだけで取材先に決まったらしい。唐突に遠地に派遣される。なぜなら難読だから、という理屈である。「なぜだ」と素直に思う。「難読の地で10km歩いた後のシュークリームはうまい」(トルー)より
2020年12月28日から2021年1月4日の年末年始、デイリーポータルZは総力をかけ特集「難読駅へいってらっしゃい」を掲載しました。
8人のライターが取材日の朝にくじ引きで決まった、読むのが難しい名前の駅に散り現地を取材するという企画です。
「なぜだ」の先にはなにがあったのか。あらためて8か所の難読駅に降り立ちさまよったライター達の軌跡をたどります。(編集:古賀及子)
冒頭で引用したトルーさんの文章のとおり、なぜ私たちは唐突に難読駅に派遣されることになったのか。実はちゃんと理由がありました。
難読駅といえばクイズなどでよく取り上げられます。「なんと読むでしょうか!」というやつですね。
でもクイズは読めたら終わり、現地にはいきません。
じゃったら俺らは行こうじゃんね! というのが事の発端。
読めない=縁がないと身近に感じにくいことから行けばより発見が多いのではないかという目論見もありました。
ただ、難読駅へいく! となったらもうそれだけで楽しくなってしまいまして(私が)、ライターへ企画趣旨を伝えず、よーしみんな! 難読駅いっくよ~! とあまりにも説明足らずだったわけです。みんな、ごめん。
そんなわけで旅立ったのはこの8名。
朝、リモートで集いくじを引いて行き先を決定しました。
くじを引いて行き先を決める芸風は、昨年実施した「新幹線の駅に置き去り」という、東北・北海道新幹線に乗り込んで大宮駅から新函館北斗駅までを順々に降りておいていかれる企画を踏襲したもの。
今年は同じ電車に乗り込み現地に向かう企画ではなかったので、適当にこの駅に行ってくださいと割り振っても良いと言えばよかったんです。
特に意味もなく、土地に運命を感じてもらったほうが楽しいかな? と実施したくじにばっちり意味を持たせてくれたライターがいました。
そう、きだてさんです。
きだてさんは旅に出たい一心で参加した昨年の新幹線企画で自宅から最も近い大宮駅を引き当てた過去が。
今年こそは遠地へ! とジョインしてくれたのですが、引いたのはなんと東急大井町線の九品仏! 8駅中唯一の東京都内! またも8駅中自宅に最も近い駅をゲット……。
東京にやたら近いピンがきだてさんが担当した九品仏
近場から離れられない運命を今年も引き受けたきだてさん。
取材がはじまる前にもかかわらず他ライターからの(次回も近いとこ引いてほしいな……)という期待を集めていました。
行き先が決まりリモートの打ち合わせは終了。ライター達は当日中に各地へ散ることに。
ここでライターの運命がまずは大きくみっつに分かれます。
(1)駅名を以前から知っていて読める
(2)駅名は分からないが文字は読める
(3)そもそも字が読めない
です。
文字は読めるものの駅名としてどう読むか不明のまま現地に向かった(2)勢は仏子の乙幡さんと下総松崎のネッシーさん。
字としては読めるから乗り換え検索はできるわけで、「読み方が分からないまま現地に着く」というわくわくが可能になった二人でした。
さて一方、駅名として読めないし文字も読めないのが男衾のトルーさんと鰭ヶ崎のわたし古賀。
なにしろ読めないのでまずはなんとかしてその字を読むところからはじめねばなりません。
適当に検索する、でかくして見る。知らない文字に対するそれぞれの アプローチがありました。
今回はくじ引き後に現地をどう取材するかは完全に各自の裁量にゆだねたかたち。
それだけに記事化にあたるギミックもライター8人多様なことになっていました。
たとえば、海士有木の編集部石川。現場への想像力をふくらませ、勝手に海鮮丼を夢見目指すという妄想をベースとした切り口。
さらに飯山満のライター地主さんは自宅の最寄り駅から乗り換え1回で行けるところ
「なんか遠い感じを出したくて、乗り換えをたくさんやってみました」
としてあちこちの駅名標とのツーショットをつぎつぎアップしていく独特の構成を展開。
一方パリッコさんは偶然にも八街に「行ったことはないけどエピソードがある」という強運パターン。
そんなことあんのか! という快調すぎる滑り出しの導入が圧倒的でした。
これ読んだらもうみんな、やちまた美女くらぶのこと一生忘れないんじゃないかな。
さて、この企画、全員が同一のいちにちを使って取材しています。
朝9時にくじ引きリモートミーティング → 取材 → 夜19時に報告会、という流れ。
考えてみたら、たとえば月曜日にくじ引き→ それぞれに取材 → 金曜日に報告会、と余裕を持たせてもよかったんですが、みんなが同じ日にあちこちに散るというところにちょっとした一体感があるんですよね。
道中はチャットで状況を共有し合い励まし合っていました。
でも、それだけに同一の状況に陥ったことが記事にも反映されました。飛び込み取材の落とし穴、定休日です。
大オチに用意したあの山田うどんで定休日をくらったのは仏子・乙幡さん。
さらに「理想の定食屋発見!」とまで盛り上がったお店が定休日だった八街・パリッコさん。
ぜったいにうまい雰囲気のあるうどん屋が定休日の男衾・トルーさん。
古賀がたずねた鰭ヶ崎も、掲載しなかったのですが多くの店がお休み……。
なおこの日は火曜日。火曜日というと関東では理容室、美容院のお休みの曜日というイメージなんですが、飲食店も火曜休みのお店は多いんだそうです……! 肝に銘じました!
さて、冒頭で本企画についてその駅名が読めた人と読めなかった人で様相は3つに分かれたと書きましたが、それでも全員すっと各地へは到着したわけです。
肝はもちろんその先なんですよね。
たとえばこんなんあと記事5本書けるんじゃない!? というくらい盛沢山だったのは下総松崎・ネッシーさん!
九品仏・きだてさんからは、駅名の由来である9体の阿弥陀仏像が奉られている浄真寺はもちろん、都内ではめずらしいドアカット駅(車両がホームからはみ出す駅)もみどころでした。
とはいえ「何かある」に恵まれていても取材姿勢はさまざま。
落花生というキラーコンテンツを抱える街へ降り立った八街・パリッコさんは、落花生に頼りすぎず酒場ライターとしての面目を躍如すべく立ち回り金星をあげていました。
一方、自分に課したルール等からいわゆる分かりやすいみどころを掴むのに難航した人々も。
それでも歩けば必ずなにかあるのが紀行のだいご味というもので、仏子・乙幡さんが発見した繊維関係の工場を再生した施設はこの良さ。
歩きながらこれは夢ではないかとうたがうほどだった男衾・トルーさんも、散歩ものの鉄板である「工場直営店」で見つけたシュークリームに感激し意識が現世に帰りました。
飯山満担当地主さんの、お土産をなんとかすることにより記事をブーストした力業も忘れられません。
そして海士有木・編集部石川。駅でもらったパンフレットにあったお寺でも、ソーシャルディスタンスを意識して土地の方に声がかけずらいという今だからこその難儀があるも、歩数に物を言わせダムをゲットしていました。
そんな同僚の労作を見て慌てたのが誰であろう、私、鰭ヶ崎・古賀です。
使命である鰭ヶ崎さんぽをそこそこに切り上げ私が着目したのは鰭ヶ崎を擁する流鉄流山線自体。
あまりの駅の良さに画角を鰭ヶ崎から早々に広角にして、流山線全体を見ていつくしむ方向に切り替えました。
いや、だってそれくらい流山線の駅が(車両も)ですね……かわいらしくてですね……。
なんですが、石川が降り立った海士有木駅はなんとあの小湊鐵道線じゃないですか。
そんなもん、良いよね!?
石川よ、なぜもっと気動車を見ない!?
いやしかし、8本中2本がルールをやぶって電車と駅ばかり見ていたらそれはそれでバランスも悪いので、いろんなライターが参加して本当によかったです。
こうして我々たった1日、ほんのたった1日ある場所へただ行って記事を書く、こんなことなかなかないですよね。
ロケハンはもちろん事前に何を取材するかも決まってない、とにかく慌てておっとり刀で行って見て書いた記事です。
でもだからこそ、おどろくほどミクロなところを見て帰って来たなとあらためて今回思いまして、参加8名が見ためちゃめちゃ細かいな当地を並べてまとめ記事を終わろうと思います。
わたしたち、難読駅へいってきました~よ~!
というわけで、難読駅でのさまよいでした。見守りありがとうございました!
オーラスに、取材後の報告会で、浄真寺のきゅっぽんを紹介するきだてさんに対抗して家にあるなんらかののマスコットを見せつけるパリッコさん(八街の土産ではない)をどうぞ。
次はどこに行こうかなー!
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