仏子ロードムービーまとめ
ほとけの子、とは程遠い内容になってしまったが、歩き倒したおかげで体は回復した。結果的にはありがたいご利益があった仏子駅といえよう。
ダウナーに終始しちゃったかなと思いつつ、正直こんな感じもまぁ楽しいなという旅で、年末らしくて良かったです。
ほう、仏子。くじで決まった瞬間の感想である。「それ以上でも以下でもない」という言い回しはすでに陳腐なものだが、まさにそういう思いだった。しかも私はその時、ひらがなでなく漢字でつぶやいたのだ、「仏子か」と。そうして読みを確認せず、とりあえず仏子へと出発してみた。
難読駅の花形といえば「喜連瓜破」や「飯山満」など派手な字面が話題に上がりやすいが、そこへ来て「仏子」。ありがたい名だが難読加減は地味である。全くノーマークであった。何となく読み方想像できるしな。
あえて読み方を調べず、乗り換え案内に漢字で「ほとけ」「こ」と一文字ずつ入力したら、私の住む調布からはなかなかの行程を経ることがわかった。
京王線で分倍河原まで行き
南武線で一駅だけの府中本町まで行き
武蔵野線で新秋津へ
新秋津から秋津まで、例の徒歩移動で5〜6分
西武池袋線飯能行きで、飯能の2駅手前で降りる
なぜか詩形式で語ってしまったが、4路線使って1時間半ほどの久々の小旅行である。全く行ったことのない、通過くらいはしたことあるが全く印象にない駅へ、難読であるというご縁のみで行って帰って来る。いいぞいいぞ、久々のこの感じ。
ぶし。後から名前の由来を調べてみたが、地形から来る説、「仏師」から来る説、「武士」から来る説など諸説あることがわかった。まぁ特に由来には触れず、ひたすら散策に徹することにした。
さて、駅の北と南、どちらの改札から降りようか。何となく南から降りてみた。こんなときは野生の勘を頼るに限る。
住宅街が広がるのみである。ほんとに。私の野生の勘はなくなってました。私はもう都会っ子でした。
おっと、目の前にカフェらしき洒落た家がある、ここでまずはお茶でもすれば1つネタができるか…と思いきや、閉まっていて、もう店ではなくなっていた(?)とにかく立ち寄れる感じではない。
そうなると北口方面に望みを託すか。とにかく線路を越えようと、踏切の方まで歩いてみる。
左側には丘のような山並みが迫り、線路から反対側はなだらかに広く下って、川へと続く、そんな地形らしい。群馬で言えば渋川とかか。知らない土地を、私は故郷群馬に例えがちだ。「ガンダムに例えてくれ」っていうアレである。
鳩に富士、と何となく縁起の良さそうなアイコンに出会い、不安も少し紛れる。仏子、何かありそうだな。そして北口方面へとやってきた。
やばい。「ここ何もなさそう」の序曲が聞こえてきた。地方に取材に行ったりすると、土地勘なさすぎてこういう駅でお昼を迎えてしまい途方に暮れたものだったが、今がそうだ。
しかしなおも歩くと、魅力的な看板が。ぜんざい、良いね!
…実は私、前日にZOOM企画で結構楽しく飲み、そして飲み過ぎ、よりによってこの日は猛烈な二日酔いだった。よって、出発が午後になってしまい、着いたときはもう14時を回っていたのです。だめだこりゃ。
それでも、散策でやっと胃が回復してきたわけなので、猛烈に今は腹が減った。こうなったらとにかく食べ物屋を探そう。
お、何かのお店かな?と近づいたら…
幸せな自販機からまた折り返し、別方面にも歩いてみる。カフェやネイルサロン、古着屋が軒を連ねている一帯を発見。ナポリタンなど出すカフェは営業していたが、中から常連さんたちの声が響いてきて、おののいて入らずに通り過ぎてしまった。
ここで中に割って入っていって「仏子ってどんなとこ?」みたいな話を引き出すべきか、否か。
旅好きだけど、着いた土地でいっさい地元の人と話さない「ひきこもり旅」派なんだな、私は。自分という列車に乗って、車窓から中の自分がじっと外を見続けている感じである。そんな旅もいいじゃない。
何かその土地で買って帰るというミッションを遂行するため、そして食料を確保するため、ここでパンを選ぶことにした。とても良いパン屋さんで、ついつい家用のバゲットやシュトーレンを普通に買ってしまう。地元民を装って。
その中で、この焼きそばパンの規格外な佇まいがとても良い。パンに比べて焼きそばがぎゅうぎゅうなのだ。
これで何とか食事の心配は無くなったので、ひたすら仏子をうろつこうと思う。
駅前の、切手とかも扱ってる化粧品屋さんの佇まいがかっこいいのでぜひ近寄ってみよう。
しかし何かこう、目玉が欲しいな。と思っていたその矢先、良い雰囲気の建物が見えてきた。
何か楽しげな、レストランのような雰囲気もあったが、違った。入間市文化創造アトリエAMIGO!という施設で、元々は繊維関係の工場・試験場だったものを、文化施設として再生しているらしい。
このままこの中で一生暮らすところであったが、間一髪、俗世に戻ってきた。デイリーポータルZの企画「難読駅ぶらり旅」を再開である。
ここで、また腹が減ってきた。吐くほど飲んだ次の日は、なんてお腹が空くんだろう。そういう童謡あったっけ。さっきまでバイオリンに幻惑されていた同じ者とは思えない心模様である。
GoogleMapで周辺を調べると、ある店が一応徒歩圏内にあるようで、そこまで頑張って歩くことにする。片道15分なら、行くしかない。
初めて歩く道は、なんて長く思えるんでしょう。体感時間30分、実働15分で、目的地に着いた。東京では車でもないとめったに行けない、嗚呼堂々の山田うどんである。せっかく埼玉に来て、徒歩15分なら行かない手はない。もうほとんど仏子関係なくてめんぼくないが、カレーとうどんのセットが猛烈に食べたいんだ。
いまだ少し本調子でない私を、天はまだ許してなかったようだ、おお。かくして、汗だくでまた15分の道のりを経て駅まで戻り、おとなしく帰ってきたのだった。
ほとけの子、とは程遠い内容になってしまったが、歩き倒したおかげで体は回復した。結果的にはありがたいご利益があった仏子駅といえよう。
ダウナーに終始しちゃったかなと思いつつ、正直こんな感じもまぁ楽しいなという旅で、年末らしくて良かったです。
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