特集 2020年12月23日

マンション広告の「光の柱」を実際に作ってみた

光柱、多摩の地に現(うつつ)となりし

今年の漢字が「密」に決まったそうだが、あのアニメの影響からしたら本当は「鬼」とか「柱」なんじゃないだろうか。
いっぽう、今年もイルミネーションの瞬く季節が巡ってきた。
柱、イルミ…そうだ、あのイルミネーションを作ろう。

無理めな導入だが、あの「マンション広告で頻発する光の柱」を、現実化してみたいと思ったのだ。奥調布の輝ける大地を、貴方の傍にお届けします。

1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

前の記事:「キジバト笛」を作ってハト本人と共演したい

> 個人サイト 妄想工作所

無垢のプラ棒を出現させる

まずは皆さんに「マンション広告で頻発する光の柱」の画像をお見せせねばならないのだが、わたくしの住まう調布では、ここ最近その手のマンション広告が郵便受けに入ってこないのだった。あれか、「呼ぼうとしたとたんに来なくなる新幹線の車内販売」か。

しかしさすが、当サイトで三土さんがマンション光柱を、大山さんがマンションポエムのおかしみを記事にまとめていらした。下の画像は三土さんからお借りし加工したものである。そして、以後ちょこちょこ出てくるポエムっぽい言い回しは大山さんの記事を参考にしました。皆様ありがとうございました。

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ほら、お手元のチラシでも、建設予定地から光が吹き出していることでしょう。

記事ではキラキラがまぶされていたり、電離層まで届くかという光柱が立っていたり葉っぱが舞っていたり(?!)たいそう賑やかだが、ここでは上の画像のようなスタンダードな光柱を作ることを目指そう。スタンダードな光柱って何だ。

となるとやはり無垢のアクリル棒にLEDで下から照射、と考えるわけだが、ちょうどいい長さのものが売ってなく、それに長いの買うとけっこうお値段が張るんだよね。切るのも大変。

と、材料を考えあぐねて悶々としていたのだけど、ふと作業部屋の片隅に目をやると、私を思い出してと訴えるように3Dプリンタが佇んでいる。そうか、これで無垢の丸棒、出力できるな。

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オンラインで簡単な3D CADを組めるサイトで、たんなる丸棒のデータを生成。
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クリアレジンを買って、約9時間(高さ8cm)かけて出力だ。丸棒が突然うちに現れた!
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モノリス真似して世界各地にこれを立てようか。すごく黄ばんでるけど!

後述する光源の大きさに合わせ、35mmほどの太さのレジン柱を制作。3Dデータで少しだけ残っていた円周のポリゴンが、うまい具合に縦線となって現れていた。なのでボディの大半はヤスリがけせずこのまま使おう。

しかし黄ばんでいる。アクリルと違い、クリアレジンの透明さはこのへんが限界か。まあ下からLEDで照らすのが主眼だから、これでよしとしよう。

ここから、あの広告風に見えるようにと、少しだけ加工する。

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先っちょをなるべく磨いて、縦線が消失するようにしたいのです。

柱はこれで完成ってことで。問題は、舞台装置である。あの広告っぽく見せるために、ジオラマを作らねばならない。ひゃぁ、こっちのが大変だ。

ジオラマ能力を来年はもっと高めたいです

紙を貼れるスチロールパネル、A4サイズのが家にあったので、これを大地にしたい。多摩アドレスのラグジュアリーな暮らしを、A4サイズに収めることになった。

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ここに夢を描く…。左隅のマークがなぜか兵士がお辞儀しててかわいいぞ。
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ど真ん中でなく、少し中心をずらして配置するのがそれっぽいと思う。
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道路色に地を塗る。このA4区画の整地作業だ。
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どこかにありそうでなさそうな街路を整備。

最初はGoogleMapでどこかの地図を出力し、それに合わせて…なんて思っていたのだけど、想像すればするほど縮尺とかわかんなくなって、やめた。のびのびと、「ぼくのそうぞうするまち」を作ることにした。

ぼくのまちは、ぜんぶスタイロフォームでできているよ。切りやすいけど、小さいとグズグズになるんだ。

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これも想像に任せて、マンション風やらオフィスビル風やら平屋やら切り出す。
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色数はあまり増やさないほうがそれっぽいので、ほぼグレーに塗りつぶす。

「街も3Dプリンタで出せば良かったのでは…」と思ったそこの君、たぶん当たりだ。

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でもこういう楽しい作業は3D出力じゃ経験できないもんね〜
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できた家を、ここはマンション密集地、ここは昔ながらの住宅地…などと想像しながら置いていく、のも楽しいんだもんね〜
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少しだけ違う色にしていた家も、やっぱり屋根だけグレーで統一しよう。
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ほぼ全ての物件に、窓もついております!

あー、けっこう楽しいなこれ。ふだん犬の散歩や地図の鑑賞で見るような家並みの、記憶をなぞるように建物を割り振りしていくのが楽しい。当然、用途地域とかあまりわからぬまま適当に配置しているが、「っぽい」街並みにしていくのが、ごっこ遊びみたいでゾクゾクする。神がこういう気持ちで下界を作っていたらヤだけど。

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空いたところはとにかく緑化だ緑化!弁当のゆかりのごとく敷き詰める。
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建物のそばに緑を置くと、ぐっとそれらしくなる。
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それでも思ったよりスカスカなので、2回ほど大規模な住宅供給を行った。

それにしても縮尺が適当だ。でもまあここはそんなに力を入れるところではないのだ。全てはあの光柱を演出するための、まさに舞台装置なのだから。

さて肝心の、光源である。以前から目をつけていたLEDコースター、この企画のために満を持して購入。

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もともとコースターとして使う予定、はなっからナシ。
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素晴らしい。もうこういうのだいたい中国からだよね。

このコースターに、例のレジン柱を貼り付けて、ジオラマ被せて、さあできた。「マンション光柱ライト」、此処に誕生をみる。 

いったん広告です

もっと光をーー欲望のままに棲まう

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黄ばんだ柱だなぁ、って思うじゃない?
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点灯!建設予定地が今まさに光を放ち始めた。
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このコースター、7色に変化するのだ。
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一番光るのはこれ。もはやサイバー空間である。マザーが中で大暴走おこしてそう。

 7色の変化は動画でどうぞ。

 

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ごめんなさい、自分で撮っておきながらロイコクロリディウムに見えてきてしまいました(カタツムリの寄生虫。探さないように)

おっと、そもそもライトとして考えたので、暗いところで光らせないとな。

いろいろな都合上、風呂場で撮ることに。

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普及タイプのユニットバスに、特別な137邸が建とうとしている。遠目に見るとより「らしく」見えるな。
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嗚呼…ここが至高の舞台。太平洋をはるか臨む(水平な光はたまたま漏れてた)
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137戸全部にクラゲが住んでそう。
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これは一番光柱のイメージに近いっちゃ〜近い。おっといっけね「イメージ通りの景観、まさに約束の地」でしたわおほほ。
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これがホントのピンクビル…ほら、桜川の…

 

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次の瞬間、バクハツすると見た。あるいはゲーミングマンション。

 

調子に乗って、マンションポエムもプラ板に貼ってみた。これはイマイチだった。自分映り込んじゃうし。見えにくいし。「七色の光」に「※」マークもつけたんだけどな(大山さんの記事参照)。

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「七色の光を纏いて奥調布に澄まう」奥調布、って表現、マンションチラシで初めて見たんだよ。どこだよ。
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フハハハ、億ションドリームがついに私の掌のうちに…

かくして、あのマンション光柱を現実に目にすることが、とりあえずできた。 クリスマスはこれをツリー代わりに、貝柱でもつまみながら飲もう。


まとめ

光の柱はあまり労せず?できたものの、街並みが非常に時間がかかった。3Dプリンタのあるご家庭では、一気にプリントするとよかろう。そして壁に貼ったりなどすれば、うっかりお洒落アートっぽくなりそう。って私がまずやるべきか…

今後、家に入るチラシに注意しつつ、新手の表現が出てきたらまたネタに使わせていただこうと思います。

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