伊藤健史というライター
当サイトには何十人ものライターがいるが、中でも私がとびっきり好きなライターが伊藤健史さん。13年以上書き続けている先輩ライターで、北海道の痛いカニサミットや、奄美・沖縄諸島でのハブ探しなど、北に南に幅広いフィールドワークを基にした記事を多く手掛けている。
今回、伊藤健史さんのフィールドワークに同行させてもらえることになった。場所は埼玉県本庄市。ここに「マムシ注意」(マム注)の看板があり、それを見に行くのだ。

Google Mapで調べると自宅から「マム注」まで3時間かかる。
「遠いな」という感情と「最高だな」という感情が同時に沸き起こり、その後「最高だな」だけが残った。伊藤さんも私も普段は会社勤めのサラリーマン。貴重な休日を「マムシ注意」の看板を見るためだけに捧げるのだ。3時間かけて行って、看板を見て、3時間かけて戻ってくる。なんて贅沢な旅なんだろう。そんなの絶対に楽しいじゃん。

改札を出たところで伊藤さんに合流。

マム注までの道のりがずっと楽しい
いまからマム注の看板を見るために駅から歩くが、その道中で他の路上観察もするという。
この記事の楽しみ方を先にお伝えすると、旅の途中で伊藤さんが様々な路上観察を披露してくれるので、それら一つ一つを味わってほしい。「変なことしてる人がいるなぁ」(←失礼)でもいいし、「面白そうだから自分もやってみよう」でもいい。そして最後はもちろんマム注。見れたのか、見れなかったのか。お楽しみに。

路上観察によって歴史がわかる
最初に伊藤さんが撮影したのは、のぼりのベースだ。

伊藤:これね、だんだん用途が変わってくるんですよ
ほり:なるほど。奥の石のベースにも昔はのぼりが立っていたんでしょうね。それが役目を終えて、いまは別のベースにひもでつながれているんですね!
街の様子は目まぐるしく変化するが、ベースだけはなぜか変化が遅く、その場にとどまり続けることもある。
説明の都合上 時系列順でない紹介となるが、「のぼりのベース」は今回の旅で最も多く収集された物の一つだ。

よりコアな方向けにお伝えすると、グーグルストリートビューでこの場所の2020年の様子と2018年の様子を見比べると面白い。このベースはかつて駐車場だった奥の土地から移動してきたことが分かる。


伊藤さんの路上観察ネタで、周辺の歴史を感じられるものは他にもある。 例えばこちら。

進入禁止マークを描いた後にガス管や水道管の工事があって、掘り起こしたのだろう。当然だが、新しい工事ほど路面を上書いていく。
歴史を感じる系で私がいちばん感慨深かったものが次だ。

伊藤:石が詰まってるの「いいなぁ~」って思うんですよ

伊藤:たまたま溝の幅とおなじ大きさの石がここに来て、上から押されてハマるわけじゃないですか。結構すごいことだと思うんですよ
ほり:奇跡みたいなことが、何回も起きている
伊藤:周囲の地形に左右されたりするわけですよ

伊藤:ここなんか……

伊藤:この塀はあとから設置されたんじゃないかと予想できます
ほり:すごい。地層と同じですね。排水溝に詰まった石から当時の様子を推測できる
実際、ストリートビューで2022年と2024年を比べると、この推理が正しいことがわかる。(進学塾の左の土地をご覧ください。) めちゃくちゃ面白い。


三角コーンといえば当サイトライターの三土さんだが、別に縄張りがあるわけではないので集めるのは自由だ。
ほり:朽ち果て度合いが強いと「どれだけ前からあったのだろう」と考えさせられますね
歴史を感じるタイプはさらにもう一つ。
