特集 2025年7月2日

3時間かけて「マムシ注意」の看板を見に行く旅に同行したら最高だった

ご当地キャラクターはすべからく撮影したい

本庄市にははにぽんというゆるキャラがいる。遺跡で特徴的なはにわが発掘されたのが由来だそうだ。そういうエピソードにそそられる。

ここからはゆるキャラを軸にいくつかの観察ポイントを紹介する。

コミュニティバスは見どころが多い。

看板デザインもいいし、「はにぽんシャトル」という名前もよい。さらには、経路や時刻表を見ると利用者の暮らしが浮かび上がってくる。

ご当地マンホール。よく見ると市章もあしらわれている。
こんなところにもはにぽん。隠れミッキー的なわくわく感がある。

伊藤:この水色のやつ、これもいいんですよね
ほり:これなんですか?子供が行かないようにしてるんですかね?
伊藤:たぶんそうでしょうね。忍び返しのようなものだと思ってましたが、ちゃんと調べたことがなかった。今度調べてみよう

当サイトでT・斎藤さんが水道管バカ除けコレクションとして紹介している。偉大な先輩たちが本当に多くの路上観察をしているものだ。

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路上観察界隈で有名なものたち

あと少し、路上観察界隈で有名なものをいくつか紹介したい。

033.jpg
個人が敷地内に設置した「自分用」のミラーだ。なぜだかちょっと「うらやましい」という気持ちにもなる。

伊藤:公共のカーブミラーとは別に、家の持ち主が独自に設置したミラーです。「プライベートミラー」と呼んでます

伊藤:知り合いの編集者は「勝手ミラー」と呼んでいました
庭に立たせる双頭タイプも見つかった。

自分専用構造物つながりでもう一つ。

当サイトライター大山顕さんのコレクションで有名な「マイ橋」だ。自分の家専用の橋のことである。

伊藤:これは立派なマイ橋ですね
ほり:マイ橋、味があっていいですよね 
伊藤:たまに鉄板を置いただけのやつとかありますからね

いよいよ目的地に近づいてきた。忘れかけていたが、そういえば我々は「マムシ注意」の看板を目指していたのだった。

山への入り口となる階段には擬木が使われている。本物の木ではない

ここから小さい山に沿って坂道を登っていく。その山には「マム注」があるらしい。家を出発してから4時間近く経っている。 (まっすぐ行けば3時間で着くはずが、ご覧のように歩みを止めまくっているので想像以上に時間がかかっている。)

マム注との遭遇に胸を躍らせる……はずが、ここから伊藤さんの怒涛の擬木トークが炸裂する。

伊藤:6月20日発売の「散歩の達人」という雑誌で私が取材されてまして、私が擬木について語ってるんですよ
ほり:すごい!擬木は何で出来てるんですか?
伊藤:はじめはモルタルですね。もとは左官仕事でしたから、ナマコゴテで職人さんがやっていたんですけど、70年代にナベシマという福岡のメーカーが工場で大量生産が可能なPC (プレキャストコンクリート) 擬木を開発します。80年代になるとプラ製の擬木も出てくるんですよ
ほり:擬木ってれっきとした一般名詞なんですね。失礼ながら、伊藤さんが面白がって名付けているのだと思ってました
伊藤:擬木の呼び名は昭和の初めぐらいですね。それまではそれぞれ作った人が「人造自然木」とか名付けてたんですけど、昭和ひと桁代に、左官師の松村重という人が最初に「擬木」と名付けたと言われています
ほり:90年以上前から「擬木」と呼ばれていたんですね
伊藤:あと、日本最初の擬木が新宿御苑にあるんですよ。明治38年。でもそれはフランス製なんですね。日本製となると昭和の初めまで待たないといけないです

つらつらと繰り広げられる擬木トークが面白く、聞き入ってしまう。そして、「この人はなんでこんなにも擬木に詳しいのだろう」「なぜ擬木にそんなにも惹かれているのだろう」といった興味がわいてくる。正直、これまでの路上観察ネタとは違い私はいままで擬木に関心を寄せてこなかったので、二人の擬木への想いに大きなギャップがある。 

擬木トークをしているうちに坂道をあらかた上ってしまった。

でもこのとき私は「いいなぁ」と思った。日常の延長線上に自分が知らない世界が広がっていて、なぜかそこに対してものすごく解像度の高い人がいる。そして、詳しい人が詳しくない人に熱意を込めて真剣に伝える。

はっとした。路上観察の面白さの真髄はそこにあるのではないか。伝える熱意こそが悦びだ。伝える側もそれを聞く側も、その熱意に悦びを感じる。聞く側としてはずっと聞いていられるし、話す側としてもずっと話していられる。ただ幸せな時間がそこに流れる。

だから私たちは路上で観察したものを記事にするのだ。熱意を持って伝えたいから……。

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結局、マム注はいたのか

坂を上り切った。そこにマム注はいるのか。正直、ここまでの路上観察が面白すぎたのでマム注に会えなくても満足して帰ることはできる。でもここに来るまで4時間掛かっている。そこそこ長い旅だ。やっぱり会いたい。

登り切った先にマム注はいなかった。ここから先、一般人は立入禁止だ。
そんな~!

でも、この小高い山を登る別のルートにマム注がいるかもしれない。まだあきらめない!

坂を下り、芝生が広がるエリアに来た。

そこに、いたのである。

やった~!!!!
うおおおおお!
「まむし」のフォントもかわいいし、イラストもかわいい。有毒だけど。

ほり:いや~、感慨深いです。それにしてもこの看板があるということは、本当にマムシが出るんですかね?大丈夫ですか?
伊藤:まぁそんなにたくさんいるわけではないし大丈夫でしょう。ゴルフ場なんかだと半分脅しというか、立ち入ってほしくないところに看板が置かれることもあります

その後、周辺を捜索し、なんだかんだで多くのマム注を見つけることができた。

「む」の点の位置に注目するとわかる通り、これらは複製ではなく別々に作られている。マム注の個体差が愛おしい。

ほり:そういえばここは早稲田の施設の入り口ですけど、慶應の日吉キャンパスにもマムシの看板がありますよ
伊藤:まむし谷ですよね。地名にマムシが付くのって珍しいんですよ。地名に蛇がつくことは多いんですけどね。蛇の場合は川の流れが蛇行していたとかが由来なんですけど、地名のマムシはそこが沢や湿地で本当にマムシが出たのが由来のことが多いです
ほり:具体性のある地名は比喩ではなくガチなんですね


人生の楽しみ方が変わった

伊藤さんに同行し、「散歩で見るべきポイントがこんなにもたくさんあるとは!」と気づかされた。のぼり旗の土台や排水口の小石の詰まりなど細かいところを観察するだけで、滝のように情報があふれ出てくる。小さな宇宙は足元に広がっているのだ。

そしてそれをためらうことなくどんどん写真に収めていくことも大事。さらにそれを熱意を持って人に伝えることも大事だ。

多くのことを学んだ。散歩の楽しみ方がずいぶんと変わる学びの連続であった。いや、もっと大きく言っていい。人生の楽しみ方が変わった。世界が変わった。

家を出ればそこは小宇宙。集める同士は山ほどいる。特にこのサイトに……。
編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
めちゃくちゃ情報量もパッションも多い大充実の記事なのですが、なんといっても注目してほしいのは、ほりさんの伊藤さんに対するBIG LOVEです。伊藤さんがこれを集める気持ちがわかる、といった表現が何度か出てきますが、書いている嬉しそうなほりさんの顔が目に浮かぶんですよね。路上観察のふりをした、憧れの記事なんです。(石川)

おまけ:まだまだある、伊藤さんとの旅の思い出 

ここから

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