特集 2024年11月21日

マムシは時にシルクハットをかぶり、ヒルともコラボする~「マム注」コレクション

引き返すがよい

人とマムシの交錯する場所には出現を警告する注意看板が立てられており、私はこれを「マム注」と呼び、観察している。

マムシはおもにカタカナで表記され、噛まれやすい人の特徴も記される。マムシは時に帽子をかぶり、ヒルともコラボする。多彩すぎるマム注の生態をここに記録した。

1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

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> 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー

マムシは森林や田畑、水辺など自然下のさまざまな環境で生息する。年間で1000〜3000人ほどが咬まれ、10名ほどが亡くなっているという。恐ろしや。

正しくは「ニホンマムシ」といい、対馬には「ツシママムシ」がいる。ハブより小さいが毒自体はハブより強い。

 しかしマムシは臆病なヘビで、歩いている我々に向かって「二酸化炭素吐き散らしやがって、あいつら咬むか」と積極的に襲いかかってくるわけではない。草むらや物陰に潜んでいる彼らが、山菜採りや2億円が詰め込まれたカバン探しなどで薮に入った人間に踏まれたりして驚いてカウンターで噛みつくといった不幸な接触が起こるのが主たる原因である。

14年前に隠岐の島で見つけたマムシの幼蛇。元気でやっているだろうか(たぶんもう死んでる)

そんならお互いコミュニケーションをきちんと取って接触しないようにすればいいのだが言語を解さないマムシに「人間に注意」と伝えるのは難易度高しなので人間側に注意を促すしかない。こうして「マムシ注意」という看板が掲げられるのである。

舗装路の一歩むこうはマムシ界。

日本にいるマムシは「ニホンマムシ」と「ツシママムシ」の2種のみだが、マム注で描かれるマムシには日常に潜む死への畏怖が反映されたり、その姿は実に多様だ。

集めたマム注をざっくりジャンル分けして紹介するので年末調整の息抜きに鑑賞していただきたい。

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字マム

「マムシ」毒蝮三太夫のように頭にわざわざ毒とつけなくとも、野外ではその字面だけで十分に恐ろしさが伝わってくる。

かわいい丸ゴシック書体にさわやかカラーリングで言ってきた。
ゴルフ場にもフィットするスマート&スタイリッシュな短冊型(ここは田んぼ)
真ん中の「間」がよい。

マム注全般にいえることだが、マムシ表記をひらがなにするかカタカナにするか問題がある。もちろんどちらでも間違いではないのだが、私が見てきた中ではカタカナが多い。ひらがなはまむし酒や精力剤などマムシ製品の品名で用いられることが多く、ほのかに滋養強壮感がある。 

シンプルながら雄弁。
たぶんマムシではないかという注意。
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 写マム

「ここにいるぞ!」というリアリティを臨場感豊かに表現するのはやはり写真である。マム注で初めてマムシの姿をちゃんと見るという人もいるかもしれない。

発見日時も詳細に記される。
自然公園系はやはり情報がきめ細かい。
ピクトさんとコラボ。
異なる施設で同じ写真素材を見つけるのは看板集め人(にん)の愉悦である。
好きなマム注。白バックにすることでマムシの存在が際立っているし、迫力がありながらもヘビが持っている静けさのようなものを内包したいい写真だ。
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リアル絵マム

マムシの印象をより鮮明にすべくイラストで表現されたマム注が各地で掲げられており、マム注の中で一番多彩なラインナップとなっている。
まずはしっかり描き込まれたリアルなマムからいってみよう。

なんかかっこいいぞ!
ほれぼれする精細さ。体の特徴も細かく書き添えられている。

このマム注では重要な指摘がなされている。

よくかまれる人。

前述したように不意に接触して咬まれるパターンの他に、マムシのことを知らない子どもが興味本位で捕まえて咬まれたり、逆に中途半端に「おれヘビ慣れてますから」みたいな感じを醸し出している人が手を出してやられたりといったケースが頻発しているのだ。例えば、そう....私のような。 
マムシは見つけても決して触ったりせず、観察するだけにしていただきたい。自戒も込めに込めまくって。

ほどよくデフォルメされているがこちらもマムシの特徴をよく再現している。
体の模様はリアルだが、やや口角を上げた不敵な表情に我々が一般的にマムシに抱いている不穏で悪(あく)いイメージが投影されているかのようだ。
こちらも頭の形状や体の模様がきっちり書き込まれている。なによりもいい位置にマムシを這わしておるな。
爛々と赤く輝く目が不気味。林道でいきなりこれが出てくるとゾッとなる。

⏩ シルクハットをかぶったマムシ

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