ピタンガとの出会い
5年ほど前、沖縄に旅行で訪れた際、道の駅で見知らぬ果物と出会った。
ピタンガだ。
農産物や沖縄土産がこれでもかと揃う人気スポット・道の駅許田で、店の隅にある冷蔵庫でひっそりと売られていた。
さくらんぼ大くらいの真っ赤な実が15~20粒ほど入っていて、ぱっと見アセロラだと思った。実際にアセロラと横並びで売られていた記憶がある。
しかし、ラベルにはピタンガと表記されていた。
聞き馴染みのないかわいい名前にも惹かれ、店員さんにどんな果物か聞いたら「アセロラみたいな感じですね」と言っていた。
その言葉を聞いて、この時点ではなんの疑いも持たず、1パック買って宿泊するホテルに向かった。
ホテルにチェックインし、部屋で早速洗って食べてみると衝撃的な味だった。
渋み、えぐみ、そして襲い来る謎のビリビリ…これのどこがアセロラなんだ!!!
いや、もしかしたら1つ目に手に取った実が偶然ハズレだった可能性もある。もう1つ食べてみよう。
そう思ってトライした2つ目も、1つ目とまったく同じ結果だった。
三度目の正直という言葉がある。3つ目も口に運んだが、ご想像の通り同じ味を3回味わっただけだった。
この果物は一体なんなんだ…口の中に余韻を残しつつ、そっとパッケージのふたを閉じた。
その後も気になるピタンガの存在
味があまりにも衝撃的だったからか、沖縄から帰宅後も、さらに年をまたいだそのあともピタンガがずっと頭から離れなくなってしまった。
広告は見込み客を怒らせた方が印象に残りやすいとどこかで聞いたことがあるが、果物もおいしかった記憶よりもなんじゃこりゃという味の方が脳に記憶されるのだろうか。そんな記憶はいらないので、おいしいものに囲まれて幸せに生きていきたい。
しかし一度食べてしまったものは簡単には忘れられず、気がつくと沖縄からお取り寄せできるピタンガをインターネットの隅から隅まで探していた。
ピタンガの旬は7~10月らしく、その時期は「ピ」と打つとピタンガが予測変換の1番に挙がるくらい毎日探した。少し時期はずれたものの再度沖縄を訪れた際も、道の駅やファーマーズマーケットでピタンガを探し回った。
しかし、一度目に出会った道の駅許田を含め、どこを探してもピタンガと再会を果たすことはできなかった。
そしてついに先日、探し始めてから5年の歳月を経てピタンガのお取り寄せに成功した!
沖縄にある果物屋さんの通販サイトで見つけ、在庫状況は「売り切れ」になっていたもののダメ元で問い合わせたら、冷凍でよければ出せます!という素晴らしい返事をいただいたのだ。
ほかの誰かに買われないよう量や値段をよく見ず速攻で購入したら、500gも届いた。
道の駅許田でピタンガを買った時は子どもの手に乗るくらいの小さなパッケージだったので、想像以上の量に自分で買っておいて引いた。
植わっている割にみんな知らない
実食する前に、なぜこんなにピタンガが気になっているのか記したい。
気になる理由として先に挙げた味はもちろんなのだが、沖縄での認知度の差があまりにも激しいのだ。
ある人は知っているし食べたこともあるというし、またべつのある人は知らないし食べたこともないという。
より深く知るために、沖縄にゆかりのある3人にコンタクトを取った。
まずは沖縄の宜野湾市でギャラリーのあるコーヒー屋さんを営んでいたデイリーライターの安藤昌教さん。
パパイヤもそこらじゅうに生えてます。あとバナナも。
5年弱沖縄に住んでいたという安藤さんは、ピタンガという名前は初耳だったものの、実物は沖縄の庭で見たことがあるとのこと。
アセロラ、パパイヤ、バナナと出てくる果物がThe・沖縄で、想像するだけで今すぐ沖縄に行きたくなった。
続いてはデイリーポータルZで沖縄といったらこの方、DEEokinawaのやんばるたろうさんにも話を聞いた。
しかも買って食べただけでなく、DEEokinawaの南国フルーツでつくるネクスト大福という記事でピタンガを大福で包んでおり、ご存知どころではなかった。
先ほどの記事では「松ヤニの味がする」と書かれていた。松ヤニを食べた経験がないけど、めちゃくちゃ共感。
DEEokinawa編集部の皆さんにも聞いていただいたが、
・移住当初にファーマーズマーケットで買って食べたことはある
・友だちの庭に生えていたのがアセロラかピタンガ
・加工品は見たことがない
との結果で、やんばるたろうさんとほぼ同様の回答だった。
庭に生えているのにここまで食べられていない、そしてよくある割に加工品になったり浸透している様子がない点がさらに謎を深める。