特集 2015年7月11日

6月の記事ベスト5&「きたなうまいと人間の弱さ」

!
こんにちは、編集部・石川です。

7月になりましたね。毎年思うんですが、梅雨って6月のイメージなのに7月になっても結構続くの、損した気分になりません? おかげで七夕が毎年雨ですし、初夏ムードもなかなか高まりません。

そんなじめじめした毎日を過ごしつつ、せっかくなので梅雨の本場・6月の記事を振り返ってみましょう。最近気になるライターへのインタビューも収録していますよ。
インターネットにラブとコメディを振りまく、たのしいよみものサイトです。

前の記事:電車をもらった鈴木さんと本当の「大人の塗り絵」 人気記事まとめ

> 個人サイト デイリーポータルZ

PVランキング

今月話題になった記事は、1位が拾い食い!これだけ見ると貧乏な人向けの専門サイトみたいですが、一応面白よみものサイトです。そして4位はシャバの飯!全体に殺伐とした6月です。
信頼できる人に安全なものを道に置いてもらって、思う存分拾い食いをしてみよう。
子どもの塗り絵の楽しさを残しつつ、大人が共感できる塗り絵をつくりたい。寿司とか。
羽田に戻ってきてからでもほとんどの都道府県の土産が買えてしまうのではないか。
刑務所から一番近い定食屋には出てきた人が喜びそうなメニューがあるのではないか。
「未来」だと思っていたつくばの街はふつうに歴史を重ねていた。

SNSランキング

つづいては、TwitterやFacebookで話題になった記事ランキングです。

拾い食いはさっきも出たからおいておくとしても、こちらはコーヒーをやかんで飲みつつ賢く見られたいラインナップ。なにか重大な矛盾をはらんでいるような気がします。
信頼できる人に安全なものを道に置いてもらって、思う存分拾い食いをしてみよう。
長野県上田市に電車と暮らす人がいるという。民宿として宿泊もできるとか。話を聞いた。
うちの本棚に知性がほしい。賢そうな岩波文庫風デザインのブックカバーを作ってみた。
スタバのコーヒーを思う存分飲みたい。でかい容器で注文できるだろうか、やかんとか。
墨田区にある長さ1.1kmの団地。これを筆頭に「日本四大防壁団地」をご紹介したい。
次はライター江ノ島さんへのインタビューです。
いったん広告です
光るかっこいいズボンを作って原宿でおしゃれ自慢がしたい。

今回は言い訳からはじまります

安藤「江ノ島くん、こんにちは」

江ノ島「こんにちは」

安藤「6月の記事の振り返りです。まず『光るズボンで原宿を歩いた』。この記事についての言い訳を聞きます」

江ノ島「あれはもともと光るスカートをアイドルが履いていて、『うわ、おしゃれ!』って思ったんですよ。できればもうちょっと光らせたかったんですがペンライトを見たときに『これもカラフルでおしゃれだ!』ってなぜか思っちゃって、これでいいかなと。原宿で写真撮ってて蛍光灯がポケットで光ってるみたいだなと思って笑いました」
どこがおしゃれなんだ。
どこがおしゃれなんだ。
安藤「元ネタにアイドルがいたんですね。とつぜん

>先日、「光るスカート」というものをネットで発見した

って始まるから、どういう検索生活をしているんだこいつは、って思いました。」


安藤「原宿での撮影は、これ夜中ですよね」

江ノ島「夜中です。昼だと全然光ってるのかどうかわからなくて夜にしようと思ったんですが、夕方に寝てしまって起きたら22時でした。驚きましたね」

安藤「寝たんだね」

江ノ島「ええ。それで急いで原宿に行ったんですが、昼間だとあんなに人がいるのに深夜だと全然いなくて、写真撮ってたら酔っ払いの人に『うぇーい!!』と声をかけられました」

安藤「あの状態で声かけられると言い訳しにくいね」

江ノ島「最近よく酔っ払いに声をかけられるので人生のそういう周期に入っているんだと思います。この前も牛丼屋で声かけられて、全然何言ってるのかわからなかったんですが、『牛丼おいしい』だけかろうじて聞き取れました」

安藤「どういう周期なんだよそれは」

スタバのコーヒーを思う存分飲みたい。でかい容器で注文できるだろうか、やかんとか。

3000円のドリンクバーと考えれば

安藤「こちらの記事『スタバラテやかんサイズで3000円』についても聞いていいですか。スタバはよく行くんですか」
おしゃれカフェをやかんで撃退。
おしゃれカフェをやかんで撃退。
江ノ島「ほとんど行かないですね。いつもたくさん飲みたいので、だいたいドリンクバーに行きます」

安藤「やかんで頼めば飲み放題と言っていいんじゃないかな。高いけど」

江ノ島「ですね。あと入店したときお客さんと店員さんに同時に注目されます」

安藤「それはぼくも現場にいたからわかります。でも江ノ島くん、やかん置いたままATMにお金おろしに行ったじゃないですか。その間、おれ一人でやかん見張ってたんですよ」

江ノ島「その節はありがとうございました。おかげでお金がおろせました」
江ノ島「ちょっとお金おろしに行ってきます!」安藤「まじか!」
江ノ島「ちょっとお金おろしに行ってきます!」安藤「まじか!」

やかんで飲むと美味しい

安藤「でもやかんで飲むと美味しそうでしたよね」

江ノ島「そうなんです。プラスチックカップで飲むより美味しく感じましたね。飲みきれない分を持って帰ると薄まりますが」

安藤「あれはそのまま火にかけたら煮詰めることができるんじゃないのかな、やかんだし」

江ノ島「あ!それは思いつかなかったです。なんであの場で教えてくれなかったんですか」

安藤「去っていく後ろ姿が妙にサマになってたので、いいそびれました」
シャツが出てる。
シャツが出てる。

もっと頭の良さそうな記事を

江ノ島「おかげで薄まったラテを家で母と飲みましたよ」

安藤「お母さん、なんか言ってた?」

江ノ島「『麦茶に牛乳入れたらこんな感じだわ』って言ってました」

安藤「その前にスタバにやかん持って行ったことに対してはとくに何も言われなかったですか?」

江ノ島「そうですね『もっと頭の良さそうな記事を書きなさい』とは言われましたね」
母「もっと頭の良さそうな記事を書きなさい」
母「もっと頭の良さそうな記事を書きなさい」
安藤「じゃあ次回の記事はちょっと知的な感じにしましょうか」

江ノ島「そうですね。北海道で買った木刀で野球しようと思っていたんですが、他を考えます」
これの使い道を考えています。
これの使い道を考えています。
次は、ライター斎藤充博さんのインタビューです。
いったん広告です
みんな「見ばえは悪いけれども食べるとおいしい自炊」作っちゃったことありませんか。
石川「今日の議題は、きたなうまい自炊写真です(いま公開されている4回分の目次はこちら)」

斎藤「あのすばらしい企画。最高のウエブコンテンツです」

石川「かなりのペースで4回やりましたね」

斎藤「投稿がたくさん集まったんです。200近くあると思います」

石川「200はすごいなー。日に7件くらい来てたってことですよね、きたないご飯が。
全国の家庭ですくなくとも毎日7食分のきたなうまいご飯ができあがっている」


斎藤「ツイッターのほかに、メールでもたくさんもらいました。
朝起きると古賀さんから「きたなうまい」のメールが何通も転送されてくるんです。朝からこれか、と」


石川「アハハ。毎朝きたなうまいご飯を見ながら朝食食べるんですね」

斎藤「そうそう。これ見たあとで良い朝のスタート切れないですよね」

「きたなうまい」の魅力はストーリー

石川「斎藤さんの好きなのはどんな写真ですか?」

斎藤「やっぱりストーリーが感じられるものが良いです。
たとえば」
斎藤「これ」

石川「あー、誕生日だ」

斎藤「彼氏の誕生日。背景にドス黒いものがもう一つあるんですが、それはステーキなんだそうです」

石川「料理は、誰かのために作るっていう要素がありますよね」

斎藤「そうなんです。このケーキは作った人の『気持ち』があふれてますよね。
料理って気持ち込めない方が良いんだ……というわかりやすい例です」


石川「誰かのために奮発するぞ!みたいな気持ちが、作り慣れないメニューに人を向かわせる」

斎藤「自分のために作ったら『サーモンでお花作ろう』とか思わないですよね 絶対に。
そして失敗に。この投稿は本当にありがたかったです」


石川「僕もまずそうな食べ物の写真ずっと集めてて(※)、一番いい写真くるのバレンタインデーなんですよ。
あとクリスマスに子供のために作ったケーキ。この2日は『年2回の書き入れ時』って呼んでるんです。きたなうまい料理もぜひクリスマス特集やってほしい」


※まずそうな写真自動収集システムを動かしていて、トークイベント等で集まった写真を発表しています。

斎藤「クリスマス特集やりたいですね~!」

石川「お菓子ってご飯とぜんぜん違うじゃないですか、要求されるスキルが。普通に料理作れる人でもきたなうまくなりがち」
斎藤「こっちは別にきたないって程じゃないんですが、わかりやすい失敗と、ほんのりとしたガッカリ感。でも味に支障はない。
日常の小さなことを丁寧に拾い集めていこうっていう、ステキな感じがあります」


石川「そうですね、派手なきたなさだけが良いわけじゃないぞ、っていうのはわかります。わびさびというか」

斎藤「本人が『失敗したな』って思っているのがすごく伝わるんですよね。本当は失敗って程の失敗ではないんでしょうが」

石川「心境が伝わるのはいいですよね。
さっきのストーリーの話もそうですけど、きたなうまい写真を通して作り手が見えるのがいい。
ヘボコンと同じですね。あれもロボットを通して作り手の妥協とか諦めとかの、人間としての弱さが見えるのがいいので。」


斎藤「ヘボコンにてますね。
もう一枚、『弱さといえば』みたいのがこれです。」
斎藤「めんどくさかった、っていう弱さです。
でも『おれは料理に見た目を気にしないぞ』という決意表明にも見えるし、その場合は『強さ』なのかな……」


石川「これは『がさつさ』ですね…」

斎藤「それですね…」

きたな「うまい」について

石川「斎藤さんきたないご飯が見たいだけじゃないですか。
きたないご飯募集!だとあんまりだから「うまい」をつけて、こうネガティブを一気にポジティブなものに覆している、これがいいなと思って」


斎藤「『きたない』だけだと、わざとそのためだけに作ってくる人いそうだな、って思って。それはいやなので
日常の中で出てきたものが見たいので」


石川「やっぱり日々の営みの中で生まれてきたものを見たいという」

斎藤「きたなうまい、ならそういう感じのものがでてくるかなと」

石川「なるほど。あと『きたない飯』だったら古賀さんが企画通さなかったでしょうね」

斎藤「ですね。あと正直自分でもそんなにみたくないかも……。
投稿でも『うまそうだな』って思えないやつは全部ボツにしてます。
だから納豆がグチャーみたいなのはボツ。僕が納豆嫌いなんで」


石川「いまいい話だったのに、納豆の話で急に斎藤さんの好き嫌いになりましたね」

斎藤「納豆はダメ!!! くさいし」

石川「きたなうまい的にはちょっとずるい感じもしますよね。簡単にきたなくできすぎるし。
味付けで言う化学調味料みたいな」


斎藤「そういう安易さも好きじゃないです」

石川「納豆に厳しいな」
「魚たちが見た地獄」というタイトルも秀逸だった第4回のトップ画像
「魚たちが見た地獄」というタイトルも秀逸だった第4回のトップ画像

人類は「きたなうまい」の家畜説

石川「なんかこう、がんばっても、がんばらなくても、きたなうまいって生まれてくるんですね」

斎藤「ぼくの故郷に『しもつかれ』って料理があるんですが、あれも間違いなくきたなうまいで。そういう風にずっと昔からぼくらのDNAのなかに刻み込まれるきたなうまい」

石川「きたなうまいが市民権を得た例ですね。
きたなうまいは、人間が生活を営む上で必ずついてまわる概念なのかも」


斎藤「そう思います。それが人間の『本質』なのかもしれません……」

石川「もしかしたら我々はきたなうまいを作るために生かされているだけかもしれないですね。
本当の地球の支配者はきたなうまいご飯で、その繁栄のために飼われている家畜が人類」


斎藤「ぼくらはそれをただ作って、食べて」

石川「気づかないで、満足していると」

斎藤「そうそう。その満足感もきたなうまいが見せた夢なのかもしれません……」

石川「脳内麻薬はきたなうまいが人類を支配するために埋め込んだ機能かもしれない」



「きたなうまい自炊写真」、次回は7/26に公開予定。投稿はまだまだ募集しております! 投稿方法は記事の末尾に。

7月の予定

ひきつづき友の会「夏のキャンペーン」実施中です。(こちら

6月、7月、8月に松会員のみなさんにいいグッズ(夏を楽しく過ごせるようなグッズ)をお送りする予定。いま入会すると7月からの2か月分がもらえますよ。

そして、今日!7/11はプープーテレビのイベント、プカデミー賞2015です。イベントでは受賞者のよろこびの声の他、年末年始に作った長編「迷惑メールを実写化する」の上映やむかない安藤ショーなど。ゲストにはなぜか今年は直木賞作家、道尾秀介さんが来てくれます。すげえ。詳細は→こちらから!

その他のお知らせは、制作日記TwitterFacebook等でお知らせしますので、なにとぞ要チェックのほどよろしくお願い申し上げます。
それでは、また来月!
▽デイリーポータルZトップへ

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ