またしても謎を解いてもらいます
謎解きゲームを解くのも作るのも大好きで、当サイトでは過去に4回も謎解きゲーム関係の記事を書いている。
1. 自宅脱出ゲームを開催した
2. 自分の作った謎解きを解いてもらうのを見ながら飲むお酒はめちゃくちゃうまい
3. 難易度MAX!激むず謎解きを作って解いてもらった
4. オリジナル謎解き「デイリーポータルZからの脱出」へようこそ
で、今回は場所に関する謎解きゲームを作った。謎解きゲームによっていろんな場所にたどり着くというもの。いわば、「ここはどこでしょう?」の謎解きゲーム版である。
今回も当サイト編集部やライターによる「謎解きゲームを解かされる会 」に解いてもらう。これで4度目の対戦だ。
序盤の謎など秒で解きまくる、解かされチームのメインエンジン。全人口の上位2%のIQをもつというMENSA会員。ゲームマスターのライバル
今回は場所に関わる謎解きということで、「ここはどこでしょう?」の主催者が初参戦。以前より地理への造詣には定評があったが、最近は原付を手に入れフィールドワークに精を出す。
有毒の生物に詳しいが、配信に参加するまで謎解き経験はなし。しかし過去3回の謎解き配信を経て実力をめきめきとつけてきている。
リアル脱出ゲームが好きで15回くらいやったところ、1回だけ脱出成功するという驚異の成功率を誇る。ただし過去3回の配信で勝利したので実質4回脱出。
元気さと声の大きさには定評があるがこの配信に参加するまで謎解き経験はなし。「私、もう一切解く気がなくなっちゃった。分かりようなくないですか?」
過去回では回答欄に適当な文字を入れて総当たりで突破しようとしたり、ページのソースを解析しようとするなど雑な態度で参戦。謎解き経験はなし。低血圧。
そして謎解き作成者でありゲームマスターでもあるのは筆者。
アナログからWEBゲームに至るまで幅広いゲームを制作。根が優しいのでゲームマスターでありながらついついヒントを出しすぎてしまう。
今回もYouTube Liveで生放送。制限時間は2時間のガチンコ対決である。
動画で見ても面白いです。
ほり:私はノンアルのレモンサワーを飲みながら観戦します。がんばってください!
Q1:小謎を解いて場所を求める
いよいよ始まり。
Q1は難易度低めの小問の集合だ。
伊藤:左上の答えは「上」じゃないですか?
伊藤:「おく」の間が「かき」、「えき」の間が「かお」
井上:矢印の向きに間を読むんですね
伊藤:答えは「おい」の間を右から読んで「うえ」ですね
西村:見た瞬間にわかるのすごいですね
伊藤:パッと浮かぶ時と全然浮かばない時があるんですよ(笑)
井上:右下の答えは神社ですね
伊藤:なるほど。ヘビー、アワー、ジンジャーだ
古賀:なるほどなるほど
伊藤:左下は何だろうな429年後か
井上:時代から考えた方がいいですよね。奈良、平安、鎌倉…
西村:諸説ありって書いてありますね
井上:「?」は同じ文字でしょ?たぶん
爲房:鎌倉で正倉院とか?
伊藤:なるほど。あとは年号が合ってればいいということですね
西村:諸説ありといえば鎌倉時代の始まりが昔は1192年だったけど今は1185年と言われている
爲房:正倉院建立は検索したら756年と出てきました
伊藤:だとしたら、新しい説の方の鎌倉(756年の429年後は1185年)じゃないですか?答えは「倉」ですね
西村:これ、秒速で解かれてません?大丈夫なの?
古賀:毎回序盤は良いペースなんだけど最後がめっちゃ難しくて…
井上:答えは「小」ですね。過小、微小、小話、小屋
井上:ということは、上、小、倉、神社。上小倉神社ってあるんですか?ページの上に郵便番号を入れるところがある
爲房:あ、検索したら出ました。上小倉神社。郵便番号もある
井上:〒649-6263
石川 これを入力すると…
古賀:すごーい!
石川:よくできてる
西村:これ、正解ってことか
Q2:ワニマの場所を求める
古賀:ワニマじゃん。ハハハ。これだけでわかるのすごい
伊藤:なんでわかったんですか?
古賀:これ、ジーンさんがやってましたよね
爲房:名作
石川:矢印が右から左にあるんですよ
西村:これを逆から読むということね。マニワ?
爲房:岡山に真庭市がある
伊藤:右はサンセットかサンライズか
古賀:真庭サンセットか真庭サンライズがあるんですかね
井上:検索すると真庭シティホテルサンライズがあるんですけど、これかな
石川:郵便番号を入れてみましょう。〒719-3204
井上:入った~!
ほり:いいですね~。いいペースですよ
井上:ほめられた
Q3:食べログの数字を追いかける
今回もいいペースで序盤の謎をサクサク解いている。
石川:大晦日(おおみそか)は12/31なので、12÷31かな
西村:ジャンボジェットっていくつもあるんじゃないですか?
古賀:でもジャンボジェットで検索するとボーイング747と出ますね
西村:ジャンボジェットはボーイング747なのか~
井上:初の標準設計方式の国鉄貨車は検索すると35000系ですね
爲房:これを計算すると食べログのお店のIDが出るんですかね?
石川:計算してみましょう
伊藤:これが食べログに関係あるのかな
西村:織田裕二の結び目。なんだこれ
伊藤:おだむすび本店
古賀:本当にこれ?(笑)
爲房:織田裕二はレビューの題名ですね。このお店の郵便番号いれます?
古賀:〒160-0023。これで当たったらすごくないですか?
西村:このへんから難しくなる感じかな
石川:端数を切り捨ててるのは変な感じがする
井上:12/31を1231にしてみます?
爲房:「食べログ 44004557」で調べると食べログのお店が出てきますよ
爲房:串焼き輝ちゃん
古賀:串焼き輝ちゃん!いつか行きたい。この縁で
伊藤:輝ちゃん行きたいですね
井上:でも大分県ですよ
古賀:輝ちゃんの郵便番号を調べると、〒870-0821
正解である。
伊藤:おいしそうですね
古賀:おいしそう。いよいよ行きたいですね
爲房:輝ちゃん欲が(笑)
Q4:場所を足して2で割る
爲房:足せるんですか?この二つは。駅とお寺
西村:東漸院は草加市にある
爲房:郵便番号を足して2で割ると?
井上:足すと奇数になるので割り切れないですね
伊藤:緯度経度?でもそんなわけないか~
井上:東漸院と銚子駅の真ん中にある場所ということか
西村:緯度経度はグーグルマップでポイントを置けば出ますよ
伊藤さんのつぶやきが正解へと導いた。
井上:成田山の近くだ
西村:銚子駅と東漸院の間は成田になるんですね。ここの郵便番号は〒286-0834です
Q5:西村さんの出番
ちょっとずつ難しくなってきた。
古賀:西村さん出番ですよ
西村:市章かな?「カ」にみえる
ほり:西村さんの人力で解くところが見たいです
西村さんは市章事情に詳しい。これは楽しみだ。
西村:さすがに全部は知らないですからね
古賀:Googleレンズで検索すると…出た出た。北海道深川市!
伊藤:この2重丸は何なんだろう
爲房:2重丸って市役所でしたっけ?
古賀:爲房さん冴えてるよ!
石川:深川市役所の郵便番号を入れてもダメでした
井上:「の周辺」って何だ?
西村:市役所って独自の郵便番号があるんじゃないかな?だから、市役所じゃない場所の郵便番号だったら…
古賀:市役所の住所は深川市二条で、その郵便番号は〒074-0002
正解である。
古賀:さすが西村さん!
伊藤:なにその知識!
井上:建物独自の郵便番号があるんだ!人生経験だな~
西村:ふだん郵便を使ってるか使ってないかですね
西村さんは郵便事情にも詳しい。大活躍だ。
Q6:日本最大の吊り橋
謎を解きすすめているうちに画面の背景がどんどん暗くなってきた。あと2問。
伊藤:白蛇は山口県の岩国とか有名ですね
伊藤さんは蛇に詳しい。この「謎を解かされる会」はいろんな専門家があつまるアベンジャーズ状態なのであった。
井上:あ、「白蛇」「龍」「橋」「夢」で検索すると出てきた
西村:これ、日本最大の吊り橋、九重“夢”大吊橋だ。言われてから気づいた
Q7:「ここはどこでしょう?」主催者との対決
いよいよ7問目。表示されている中で最後の問題だ。
石川:これはもう「ここはどこでしょう?」じゃないですか
ほり:一番楽しみにしていました
ついに「ここはどこでしょう?」主催者の西村さんとの対決である。この謎解きゲームを作ったときからずっと楽しみにしていた。
西村:城、神社。後ろの電車が何線かってことですね。オレンジ色のJRだと中央線?
井上:関西にもこのカラーあるのかな
爲房:城跡に神社があって、電車が通ってるところですよね
西村:鉄道が詳しくないからな……
ほり:えぇ?
井上:鉄道、詳しくないの!僕たちは
ほり:え、井上さんも西村さんも路線図詳しいじゃないですか
西村:路線図だけ好きなの。車両は詳しくない
井上:これ武蔵野線?武蔵野線だとすると…?
西村:たしかに武蔵野線の可能性はありますよね
井上:武蔵野線の城址で検索すると平山城址公園ってありますね
伊藤:平山城址公園に蛇探しにいったことありますよ
古賀:フィールドが広い!(笑)
西村:あ、上に神社があるじゃないですか!
石川:平山城址公園の〒192-0355を入れてみます。…ちがう!
爲房:「武蔵野線」「城跡」「神社」で雑に調べると城山神社というのも出ます
西村:埼玉の東所沢の神社ですね
古賀:いい神社だなぁ
井上:線路がこっちのほうが近いですね。
石川:郵便番号は359-0013。入れてみますか?
井上:あっ!いった!
ラスボスとの戦い
表示されていた7問を全部解いて終わり~!と思いきや…
石川:いままでの集大成的なやつじゃないですか?
伊藤:いままでの答えをマッピングする?
西村:たしかに北海道もあった
井上:大分の答えが2つあったから左下2つが大分ってことか
そして、この矢印をたどると、よく見ると問題番号とはちがう順番になっている。これに気づいた井上さん。
井上:〒162-4357の場所じゃないですか?
西村:たしかに、7桁になってる
古賀:すごい!
このあと、今度は問題番号順に矢印の順番を拾って〒135-4627と出たが、こちらもハズレ。
伊藤:あれ、そもそも答えはひらがなを入れるんでしたっけ?
石川:この図がちょっとサンタクロースの帽子っぽくないですか?
西村:ということは?
古賀:ハテナの5文字は?
全員:「くりすます」!!????
伊藤:いままで解いてきたものは何だったんだ
いよいよ停滞してきたのでここでヒントを出そう。
ほり:ふざけはじめたのでヒントを送ります(笑) こちらのページを使うとよさそうです
ほり:この「郵便番号から該当地域を検索する」でいままでの答えを整理しなおすといいと思います。
古賀:えぇ?
伊藤:いままでの?
西村:町域っていうのが出てきますね。関係あるのかな
西村:この作業は合ってるのかな?
爲房:「シテ」ってあやしくないですか?指示文になりそう
古賀:文章になりそうな雰囲気
西村:並び替えると「2乗して」ってなりそう
井上:本当?すごいな~
爲房:どうやって作ったんだ…
井上:これを矢印の順番に並び替えるということか
井上:シモミケタノソウワダシテ2ジョウシロ ですよ
全員:おお~!
井上:こんなのよく作るな~
古賀:すごーい!本当すごい!
西村:じゃああとは誰か計算してください
古賀:算数への興味のなさが(笑)
全員:(笑)
伊藤:神か、ワイ
井上:この謎解きゲームのタイトルが「Am I God ?」 ですからね
伊藤:「神か、ワイ」「上河合」「かみかわい」
井上:ダジャレだな~
西村:2文字入れるってことですよね?
爲房:ノーヒントすぎませんか?
伊藤:「神か、ワイ」に答えればいいんじゃない?
石川:「はい」かな
西村:なんで墓に書いてあるんだろう
爲房:作者のほりさんの墓じゃないですか?
伊藤:そもそも上河合ってどういうところなんですかね?
西村:金沢のちょっと北のほうですね
石川:この辺に墓のような形のものがあるのかな
伊藤:なんか神社の入り口の石碑に書いてあるんじゃないですか?道祖神みたいな
石川:禁酒の碑がありますよ
井上:禁酒って入れてみます?
古賀:ほんとにー?
ほり:おめでとうございます!!!!
石川:目についたものを入れるだけだったのか~
爲房:それで今日ノンアルなんですか?
全員:あ!
ほり:はい。実は伏線を張ってました
禁酒の誓い
最後の答えは禁酒。Wikipediaによれば、舞台となった上河合では、小学校の新校舎建設費用を捻出するため、「全村民で酒を飲んだつもりで毎日5銭以上を貯金する」というつもり貯金をしたとある。
石川:いい話だなぁ
ほり:自分がその村民だったら最悪だと思いますけどね
伊藤:禁酒の規約もけっこう厳しいですね。アルカポネの世界じゃないですか
爲房:酒屋は自主廃業したって書いてあります
古賀:当時は8軒も酒屋があったって書いてある
伊藤:僕の母方の実家の街ではPTAがゲームセンターを全滅させたんですよ
西村:「禁ゲーセンの碑」だ
謎解きゲーム制作秘話
いや~、楽しかった。自分で作った謎解きゲームを人に解いてもらうときのドキドキ・ワクワクには中毒性がある。これは作った人にしかわからない中毒性だ。
この中毒性のせいで定期的に謎解きゲームを作っているのである。苦労すればするほど、解いてもらうときの快感も大きい。というわけで今回の謎解きゲームを作ったときの苦労話を聞いてください。
突然降りてきた「郵便番号」
それは突然の神の啓示であった。ベランダで夜風に当たりながらレモンサワー(アルコール3%)を飲んでいた時、「郵便番号で謎を作りなさい」というメッセージを受信したのである。「これだ!」と思った。この時点でおおまかなコンセプトは固まっていた。
②場所をつなげると大謎を解くためのメッセージになる
③大謎では小謎の郵便番号をメッセージにしたがって計算し、別の郵便番号を導き出す
大謎を作るのが大変すぎた
しかしここからが大変。そもそも、場所って「県」「市」「区」「町」などの粒度によって呼び方にバラツキがあるので謎解きゲームには不向きだ。統一した呼び方をさせるにはどうすればいいか?
で、たどり着いたのが郵便番号の町域である。郵便番号は基本的に町域ごとに設定されている。これを使おう。
次の問題が、メッセージをどうするか。謎を6個~8個ぐらいとして、それぞれの郵便番号を使って何らかの計算をして、郵便番号を導く。
そんないい感じの計算方法はあるのか?
なんとなく足し算や引き算だけでは面白くないので、2乗とか3乗をさせたい。しかしそうすると桁数が7桁より大きくなってしまう。そこで、郵便番号の下2桁とか下3桁を出して2乗とか3乗をさせることを思いついた。でもそんなメッセージを作れるのだろうか?町域だけで。
これで下3桁 (しもみけた) が作れそうだ。3桁を「みけた」と読ませるのはちょっと苦しいが間違いではない。
で、結局「下3桁の合計を2乗する」という計算方法にした。これで計算結果が7桁になりそうな気配がある。しかし次に最大の難関が待ち受けていた。7桁の数字が出ても、郵便番号じゃないことが多いのである。調べると日本の郵便番号の使用率はたったの1.4パーセントだ。てきとうな7桁の数字が出ても、98.6パーセントの確率でそれは郵便番号じゃないただの数字である。
では、この1.4パーセントの当たりくじをどうやって引いたのかというと、数うちゃ当たる作戦である。
この画像に載っている以外のパターンも試しているので、実際に試したのはだいたい100パターンほど。
このように謎解きゲーム制作には「しもみけ」のような奇跡と、「数うちゃ当たる作戦」のような泥臭さの両方が必要である。すべてはみんなに解いてもらうときの驚きや感動のため。なので謎を解く側の人には多少オーバーリアクション気味になってくれたほうが、謎制作者としては報われる。(もちろん無理にそうである必要はないですが…。)
現場に行った
「場所謎解きゲーム」を作るにあたり、1つ決めていたことがあった。それは、ちゃんと現場に行くこと。ぜんぶの謎の場所に行くのはさすがに大変なのであきらめたが、せめて一つぐらいはちゃんと現場に出て謎を作りたい。そこで、元祖場所謎解きゲームともいえる「ここはどこでしょう?」へのリスペクトの気持ちも込め、「ここはどこでしょう?」の問題だけは自分で撮影に行った。
その後、電車が来るのに合わせて何枚も写真を撮り、最後はいい感じにトリミングして難易度を調整して完成。
検索謎について
ふつうの謎解きゲームでは検索禁止の場合があるが、今回の謎解きゲームはむしろ積極的に検索しないと解けない問題である。こういう謎解きゲームは検索謎と呼ばれている。
検索して正解にたどりつくことの楽しさを筆者に初めて教えてくれたのは「ここはどこでしょう?」である。「ここはどこでしょう?」がどうして楽しいかと言うと、自分が重大事件の刑事になったような気持ちを味わえるからだ。もしも犯人特定につながる重大な1枚の写真がよくわからない場所の風景だったらどうしようか?警視庁捜査第一課はGoogleを駆使して血眼になってその場所を探すであろう。つまり、刑事が本当にやっているかもしれないことをやれるのだ。
検索謎にはそういう面白さがある。もう少し一般化していうと、フィクションではなく本当に世の中に存在する事象にたどり着く面白さである。真実にたどり着く面白さだ。
そして「ここはどこでしょう?」の次に本格的な謎解きゲームとして検索謎の面白さを教えてくれたのは零狐春SICKS MONSTERS No.5 Σφίγξ(スフィンクス)である。友人と集まってワイワイと検索しながらポンポンと真実にたどり着くのがあまりにも爽快で、自分もそういう謎を作りたいと思っていた。
しかし、今回実際に作ってみて、検索謎を作るのには独特の大変さがあった。Googleが優秀すぎるので言葉一つですぐに答えにたどり着けてしまう。かといってヒントを減らすと今度は難しすぎてしまう。少しの味つけで難易度が極端にぶれるのである。おまけに今回は場所謎解きだ。言葉は悪いが、答えの多くがなんの変哲もない普通の場所である。特徴のない場所に対しどうやって謎を作るか、頭をひねりにひねった。
そのため、本来はスフィンクスのように「検索そのものが謎解きゲーム」にしたかったのだが、今回は主に「謎解きゲームの過程で検索を要する」というスタイルになってしまった。検索謎を作るのは本当に難しい。でも楽しい。まだまだ模索中です。