特集 2012年7月28日

漆黒のヘビを探して

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白蛇というヘビがいる。その名の通り真っ白なヘビで、その希少性や神秘性から信仰の対象にもなっている。みなさんも白蛇伝説や白蛇神社なんていう言葉を聞いた事があるのではないだろうか。
そして光があれば影があり、白い恋人に対して白い恋人ブラックがあるように白蛇がいればまた黒蛇も存在する。
ありがたがられ、脚光を浴びてきた白蛇のダークサイドとしてつつましく暮らしている黒いヘビを探しに行こう。
※注意:タイトルにばっちり出ているので遅いですが、この記事はところどころにヘビの写真が掲載されています。青空の写真等も時々は出てきますが基本ヘビなので苦手な方はご注意ください。
1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)


> 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー

黒いヘビとは

白蛇や黒蛇は、そういう種がいるわけではなく、アオダイショウやシマヘビなどのヘビが突然変異によって白化、あるいは黒化したものをそう呼んでいる。
これが「白蛇」アオダイショウの白化個体。ありがたや。
これが「白蛇」アオダイショウの白化個体。ありがたや。
そして、こちらが通常のシマヘビ。背中に走る縞模様が特徴。
我が国では最も普通に見られるヘビの一種で、林や里山の田んぼなどで簡単に見つけることができる。
だってシマじゃん。みたいなわかりやすいネーミング。
だってシマじゃん。みたいなわかりやすいネーミング。
今回のターゲットはこのシマヘビの黒化型で、「カラスヘビ」と呼ばれる黒いヘビである。
あくまで変異なので、その割合は少なく、通常は発見がかなり困難なのだが、そこに住むシマヘビが全てカラスヘビという、壮絶な地域が日本の、しかも東京都に存在するのだ。

黒ヘビの島、伊豆大島へ

それが活火山として有名な伊豆諸島最大の島、伊豆大島である。調布から飛行機でわずか25分。黒ヘビ探しの舞台に最適、というかそこに行かないでどうする。
さっそく調布飛行場から現地に向けて飛び立った。
調布から行くっていうのも都内感があっていい。
調布から行くっていうのも都内感があっていい。
飛べ!黒へビの元へ!
飛べ!黒へビの元へ!
「川や田んぼでさくっと見つかるポピュラーなヘビ」→「しかも伊豆大島では全て黒い」→「いとも簡単に発見可能じゃん!」という安直な三段論法を胸に抱いて。

唐突に遭遇!

こうしてあいにくの曇天の中、伊豆大島に到着。
着陸時の右旋回がアツかった。
着陸時の右旋回がアツかった。
当たり前だが観光マップを見てもカラスヘビはどこにも載っていない。
島の周囲は52km、面積は91㎢、ある程度の目星を付けてかからないと滞在期間はあっと言う間に終了してしまうだろう。

というわけで、生き物の情報は生き物の施設で得るべしとまずは島の北東部に位置する都立大島公園動物園へ行ってみることにした。
なんと入場無料!
なんと入場無料!
すると、インフォメーションセンターのカウンターにはおあつらえ向きに「ヘビ遭遇マップ」が掲示してあるではないか。
いきなりヘビ探しの赤本ゲット。
いきなりヘビ探しの赤本ゲット。
さすがに三原山付近では少ないか、そりゃそうか、などと眺めていたら、ここ大島公園(島の右上のあたり)でも結構な数の遭遇例がある。そうか、ここにもいるのかと奥に進むと
いた!飼ってた!
いた!飼ってた!
隅のケージでその長い身体を持て余すように丸めながら、真っ黒ヘビ「カラスヘビ」が鎮座していた。なにこれ、黒い、かっこいい!

モッズスーツにテレキャスター、ソリッドなロックンロールがよく似合う。その表情にどこか憂いをたたえたミッシェル・ガン・エレファント的な佇まい(ヘビだけど)

いきなりかっこいいカラスヘビを堪能してしまった。

ブラックたるものワイルドでなければ

しかしこれだけでは満足からほど遠い。
さっきまでロックンローラーとか言って興奮していた事は余裕で棚に上げるけど、彼らはケージの中で飼い馴らされた、リスクのない生活を送る所詮「ちょいワル」レベルのヘビである。顔近づけても平然としてるし。

私が見たいのは、時には獲物に向けて恐ろしい牙を剥き、時には天敵から逃れ薮に潜み、この自然の中で生の喜びを体現するように躍動するワイルド・ブラックの姿なのだ。

そう自らを奮い立たせると、野生のカラスヘビを発見すべく、林道へ探索に乗り出した。
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カタツムリバブルに立ち向かう労働力

ヘビ遭遇マップで割と多く分布していそうなエリアを中心に、林道から時には森林に入り、ひたすらカラスヘビを探す。
こんなところや、
こんなところや、
こんなところ。
こんなところ。
さすが自然豊かな伊豆大島、行く先々でいろいろな生き物に出くわす。
タイワンリスが横切る。
タイワンリスが横切る。
メジロがさえずる。
メジロがさえずる。
モリアオガエルの幼生かな?
モリアオガエルの幼生かな?
伊豆諸島に分布するオカダトカゲ。
伊豆諸島に分布するオカダトカゲ。
しかし、何よりも、とにかく多かったのがカタツムリ。
ここにも、
ここにも、
ここにも、
ここにも、
ふりかえればほら、
ふりかえればほら、
カタツムリが!
カタツムリが!
新橋でサラリーマンとすれ違うかのように次々と遭遇。

貝殻の材料となるカルシウムが摂取しやすい石灰岩地では個体数が多くなる事があるらしいが、だとすると大島の地質は滋養満点。全国から湯治に集まるみたいな感じか。

それにしても我が世を謳歌し過ぎだろう。天敵はなにをしているのだ。
と思っていたら彼は現れた。
マイマイカブリ!
マイマイカブリ!
カタツムリを主食とするオサムシ科の昆虫。長く伸びた頭部と胸部は、殻の中に頭を突っ込んでカタツムリを食べやすいように適応した為だと言われている。すごい、まさにカタツムリハンター。

この虫をちゃんと研究したら、人類はもっと上手にサザエを食べられるようになるのではないか。
…なんかバタバタしている。
…なんかバタバタしている。
しかし明らかに数が足りていない。かぶってもかぶっても仕事が無くなりそうもない、カタツムリバブルの中、こちらに一瞥もくれず忙しそうに去って行った。完全にワーカーホリックである。この島で一番忙しいんじゃないのか。

ヘビが見つからない…

この他にも様々な生き物と遭遇したが、カラスヘビは気配すら発見できず。
なんというか、通常シマヘビが多く生息する、里山的な河川沿いの田園風景というものが大島には存在しないのだ。

なので,遭遇マップをたよりに探索してもここぞというポイントが絞れない。広い森林をしらみつぶしに探せども空振りが続く。

夜はこわい

黒いから保護色だし、ひょっとしたら夜の方が活発なんじゃないかという単純な仮説の基に、日が暮れた後も探索に出る。
暗っ!
暗っ!
怖っ!
怖っ!
なんだヒキガエルか(有毒生物好きとしてはうれしい)
なんだヒキガエルか(有毒生物好きとしてはうれしい)
ようやくヘビ発見!と思いきや
なんだマムシか (有毒生物好きとしてはかなりうれしい)
なんだマムシか (有毒生物好きとしてはかなりうれしい)
大島のマムシは赤マムシと言われ、通常より赤みがかかった個体が多いと言われているが、このマムシは、言われてみれば赤く見えるかなあといった程度。いずれにせよ、今回私が探しているのは赤ではなく黒なのだ。こんな事を2日繰り返したが結局成果を得られず。夜の林道は怖かった。
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いよいよ最終日

ていうか2泊もしたんだと言われそうだが、2日間ほとんど林を歩き回ってついに最終日。昼に出る船で大島を去らねばならない。
最終日になってやっと晴れた。
最終日になってやっと晴れた。
時間もそんなにないし、港からあまり遠出はできないので、せめて周囲を探索してみるかと周辺の港町を歩いてみる。

港町といっても至る所に野原があり、蝶が舞い、無数のトカゲが道を走り回る。
あ、いいかも。
あ、いいかも。
なんか活気あるなあ。
なんか活気あるなあ。
…なんかいい雰囲気だ。今まで重要なポイントを見逃していたかもしれない。
捜索にも気合いが入る。

ケーブルに愚弄される。

お、いたか?
なんだ、ケーブルか…
なんだ、ケーブルか…
森林ではカラスヘビを隠すように広がる大島特有の黒みがかった地層に悩まされたが、ここで立ちはだかるのはおもに住宅の壁から伸びている黒いケーブルである。
なんだ..ケーブルか…
なんだ..ケーブルか…
ケーブルかよ。
ケーブルかよ。
ケーブルなのかよ。
ケーブルなのかよ。
もうヘビでいいか…
もうヘビでいいか…
ドキッとする度に腹が立ってシャッターを切り、気がついたら結構な数のケーブルを撮影していた。もし伊豆大島の住宅のケーブルを研究しようとしている方がいれば、お声がけいただければと思う。
わ、これもケーブルか。
わ、これもケーブルか。
草の中に蛇行して横たわるケーブル、なんかもうカメラ動かしながら動画撮影したらそれなりにヘビに見えるんじゃなかろうか。

ケーブル動いた!逃げた!

帰りの船の出航まで2時間を切り、おみやげも買わなきゃいけないし、もうあきらめるかと戻り支度をはじめた時、石段の下にある家屋の壁沿いに1匹の大きいトカゲが顔を出した。
「ほう、でかいね」「いい色ツヤだね」と動きを追ったその先に…
「ほう、でかいね」「いい色ツヤだね」と動きを追ったその先に…
なんか生き生きとしたケーブルが!
なんか生き生きとしたケーブルが!
ヘビだ!カラスヘビ発見!
ヘビだ!カラスヘビ発見!
大島公園で見た個体は顎の下に少し白い部分が見られたが,こちらはすべて真っ黒。太陽の光を受けて怪しい光沢を放つ、まさにワイルドブラックである。

すっかり油断して日なたぼっこなどしおって。ケーブルに擬態して安心しているな(たぶん違う)。
観るだけでは物足りず、この手で捕獲したい欲求がマグマのごとく沸き上がった。

石段を駆け下り、カラスヘビのもとへ走り寄ると、敵もさるもの、危険を察知して身をひるがえし、物陰に隠れようとする。
うひうひ、待て、待てこいつめ(すいません)
うひうひ、待て、待てこいつめ(すいません)
壁際へ逃走
壁際へ逃走
よし、角に追い込んだ!
よし、角に追い込んだ!
ここまで追い込めばもうこちらのもの、写真を撮ったり慌てる様を観察したり、じっくり堪能してからお縄にしてくれるわ。
おー狼狽してる。ふっふっふ、もう逃げ場はないぜ。
おー狼狽してる。ふっふっふ、もう逃げ場はないぜ。
あれ?
あれ?
余裕かまして見ていたら、このままありえない隙間に入って逃げられてしまった…。

なんと身軽な、なんと俊敏な。ちょっと前まで黒ヘビはロックンローラーなんて言っていたが違った。

この黒は忍者の黒だ、忍者、かっこいい!クールジャパン!
そんな思いと共に、時代劇で追っていた忍者に逃げられて城壁を見つめる与力みたいなまぬけ面で立ちつくすのであった。

そろそろ出航の時間だ。

実物の黒ヘビ(カラスヘビ)はかっこよかった

2泊3日にわたる黒ヘビ探しはラストの壮大なカタルシスで幕を閉じた。
人の生活圏のほど近くというスポットにもっと早く気づいていれば、暗闇の林道を2日も徘徊するコトはなかったのかもしれないが、苦労が大きい程感動も大きいというものだ。

伊豆大島に来たら、三原山やスキューバや椿祭りもいいが、離島の情緒溢れる港を歩いてケーブル&黒ヘビ鑑賞なんていかがだろうか。まあ動物園で充分ですよね。
思い出がほぼヘビ。次来た時は三原山行きたい。
思い出がほぼヘビ。次来た時は三原山行きたい。


※この記事に登場したカラスヘビ(シマヘビ)は、毒は持っていませんが攻撃的な性格で歯も鋭く、咬まれると痛い上に結構な傷を負う危険があります。私が言うのも何ですが、見つけてもむやみに触ったり追いかけ回したりせずに、遠巻きに観察してください。
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