買ったのはWitmotionのWT901BLECLとそのアダプタ。いわゆる9軸センサというやつで、3軸加速度、3軸ジャイロ、3軸コンパスのセンサがついている。
センサ本体はミンティアの半分の大きさ。
これがどういうものかというと、センサ本体の動きや向きなどが数値として取れるのだ。しかもワイヤレスでパソコンに数値が届く。
使用イメージ。この手のセンサはスマホにも内蔵されているが、スマホとは独立した軽くて小さな箱というのが最大のメリットだ。
メーカーが用意しているソフトを使えば自動車をグリグリ動かすこともできる。楽しすぎ。これだけで元を取れた感がある。
さて、このセンサを使って何ができるだろう。思いつく限りを試してみた。
目次
① クローゼット閉め忘れ防止IoT
② 猫背矯正システム
③ なんちゃってアイトラッキングシステム
④ ゲームを新しい操作でプレイ
① クローゼット閉め忘れ防止IoT
最初に思いついたのはまじめなやつ。このセンサではコンパスセンサによって「いまどこを向いているか」がわかる。つまり、クローゼットの扉に貼り付ければ、扉が開いているか閉じているかがわかる。
これを利用すれば、IoTでクローゼットの閉め忘れをスマホに伝えることができる。
クローゼットの扉の内側にテープでセンサを貼っておきます。
全体のイメージはこんな感じ。
センサ→パソコン→インターネット→スマホという情報のリレーです。
パソコン側で「閉め忘れの判断」「スマホへの通知」 の処理をプログラミングする。
はんなりとプログラムを書いていきます。たったの70行ほどで完成。
実演。今回はクローゼットが10秒間開きっぱなしだとLINEにメッセージが届く。
クローゼットを開けた状態で10秒ほど待つと、スマホのLINEに「クローゼットが開けっ放しです!」のメッセージが届いた。だいぶせっかちだ。
クローゼットを通じて現実世界とインターネットの世界がつながった瞬間である。
クローゼットを閉じずにいるとすごい勢いで怒られる。頭がおかしくなりそう。
今回はクローゼットに取り付けたが、これを玄関のドアに取り付ければ、外出中に玄関のドアが開いたらスマホに通知が届くみたいなことも可能である。防犯や子供の帰宅把握など普通に使えそう。
ただしセンサのバッテリは10時間しか持たないので毎日充電が必要だ。
② 猫背矯正システム
次は猫背矯正システムだ。筆者はパソコン作業に熱中するとつい猫背になってしまい肩が凝る。そんな生活から抜け出すための画期的なシステムを考えた。
GoPro用の帽子にセンサを無理やりマウントする。
帽子の傾きが変わるとコンパスセンサの値が変わる。これで猫背を検知できるぞ。
この帽子を装着し、自作の猫背矯正システムを起動する。そしてタイピングゲームに挑戦する。なぜならタイピングは猫背になりがちなので。
序盤は猫背にならないよう意識。
次第に熱中して猫背になりかける。
ああ~。
猫背矯正システムにより猫背アラートが画面いっぱいに表示された。タイピングは強制終了。
猫背になっただけなのにそんなに怒らなくてもいいじゃないか。自分でシステムを作っておきながら少し腹が立ってきた。
それにしても猫背って「気を付けよう」と思った30秒後にはもう猫背になってるぐらい、本当にすぐになってしまう。この猫背矯正システムはわりと有効かもしれない。
これはビッグビジネスか?と思い検索したところ、すでにいくつかの研究がされていた。やはりみな思いつくことは同じだ。
③ なんちゃってアイトラッキングシステム
先ほどと同じように頭の傾きを利用すれば、「なんちゃってアイトラッキング」が可能だ。説明が難しいので先に動画を見てほしい。
画面の中に赤い丸があり、動く。
視線の先をセンサで推測して表示している。
これでいま筆者が画面のどこを見ているのか、すべてコンピュータに筒抜けである。いったいこれの何がうれしいのかというと、これはアイトラッキングと呼ばれ、ユーザの画面閲覧の様子を分析するものである。Webページのデザインの改善などに利用する。
本当は専用のメガネで眼球運動を分析するのだが、今回は頭部の傾斜センサだけでやっているので「なんちゃってアイトラッキング」としている。
2つのグラフを見比べている様子もバレバレ!
常に視線の先で赤い丸がうろちょろするのでとても邪魔だが、あくまでもデモ用に大きく表示しているからである。本当に分析に使う場合は赤丸は非表示にするか、もっと小さく表示する。
④ ゲームを新しい操作でプレイ
センサをゲームへの入力として使うことを考えた。普通のパソコンのゲームはキーボードやマウスやUSB接続のコントローラで遊ぶが、センサを使えばWiiやSwitchのような遊び方ができるはずだ。
アンパンマンのハンドルのおもちゃを買った。
アンパンマンの部分にセンサを取り付けた。ダークサイドに堕ちた感がすごい。
これでコンパスセンサによってハンドルの向きがわかる。よく考えたらここまでコンパスセンサしか使っていない。
ネットでてきとうに見つけたレースゲームをアンパンマンのハンドルでプレイする。
くお〜!! ぶつかる〜!! ここでアクセル全開、ハンドルを右に!
アンパンマンのおもちゃがカチカチと音を立て、画面の中ではスポーツカーがすごい勢いで旋回し、壁に激突しながら前に進んでいく。メタバースってこれのことだったのか。(絶対に違う)
せっかくなので自作ゲームも遊んでみた。
鮭が酒を避けるゲーム、「さけげー」。実際に遊べます。
本来はスマホのタッチ操作やマウスやキーボードで遊ぶゲームだが、これをアンパンマンで操作する。
反応はものすごくいいが、途中で止まるのが難しすぎる。
がんばれば操作できないこともない。しかし新たな感動が生まれることもない。アンパンマンを使って鮭を動かし酒から避けたという情報過多な事実だけが光の速さで通り過ぎていく。残ったのは虚無。虚無パンマンだ。
虚無の理由は明快だ。「鮭が酒を避ける」と「アンパンマン」の間に何の関連もないことだ。ならばこちらの自作ゲームはどうだろう。
メキシコを落として釘にひっかけるゲーム、「メキシコひっかけ」。6年前に作ったゲームだが、メキシコの方々に失礼じゃないかといまさら不安になってきた。
本来は「DROP」をクリックすると上空からメキシコが落下する。カリフォルニア湾の部分がうまく釘に引っかかればポイントゲットだ。
で、これをセンサを使ってどう遊ぶかというと、こうだ。
センサをマウントしたマラカス。
メキシコといえばマラカスであろう。マラカスを振ることでメキシコが落下し、釘にひっかかる。どうだろう。やっぱりちょっとわからない。
マラカスをシャカっとすることで加速度センサの値が変わる。これをパソコン側で検知し、メキシコが落下する。左のマラカスはただの飾りである。
ただただ陽気なゲームになった。これはよい。
ゲームのアクションに「マラカスを振る」が入ることで、非常に陽気なゲームになった。任天堂さん、今度のコントローラはマラカスがいいと思いますよ。 ……と思って調べたらセガのサンバDEアミーゴというゲームがマラカス型のコントローラだった。
もっともっと使いこなしたい
9軸センサで4つの使い方を試したが、もっともっと遊べる余地があると思う。もっと馬鹿馬鹿しいことに使いたい。そのためのブレストも開きたい。
もしこの記事を読んでセンサの新しい使い方が思い浮かんだら、ご自身で試されてもいいし、試すのが面倒ならせめてアイディアだけでも教えていただけますと幸いです。Twitterやはてなブックマークでのコメントお待ちしております。
ちなみに、データを取得するPythonプログラムはインターネット上に見つからなかったので今回自作したのですが、今後同じところで悩む人がいないようにこちらに載せておきます。間違ってたらごめんなさいね。