
林です。
面白がらせる、をテーマに語る連載第5回です。前回、次回の更新は9月27日ですと書いておいて1週のばしました。9月は毎週イベント続きで疲れちゃったからです。8月はひまだったので用もないのに1日1万歩歩いて疲れてました。疲れるのが好きなんだと思います。
さて、連載第5回、今回から分かりにくいテーマでどうやって人を面白がらせるか、です。

〇〇を××にずらす
人生何週目ですか?って言い方がありますよね。
若いのに妙に世慣れた人に対してそう言ったりします。仕事の段取りがスムーズだったり、ラーメン屋で主人に頼んでチャーシューだけおつまみとして出してもらったりとか。
私はめちゃくちゃ人生一周目です。しかも、ものすごく一周目。なんにでも戸惑います。
さっきライフ(スーパー)に行ったとき、三角コーンにビニールテープで「ライフ」と書かれていたのが面白くて写真を撮ってました。
50代の大人たるもの、ニヒルに決めたいところですがビニールテープでアガってしまう。近所ですらこれなので観光した日には1日の驚きの摂取量を超えてぐったりします。

ただ、ビニールテープで書かれた文字っていいよね、と言ったところでたいていは聞いてもらえません。なぜならビニールテープで書かれた文字はカーチェイスやNetflixほど面白いものではないからです。
ビニールテープの面白さを理解してもらうには、聞き手に前のめりになってもらわないといけない。
ビニールテープの面白さが20、カーチェイスが90だとしたら、差の70の分を受け手が負担する必要があるんですよね。
ここまでの章では、「そういえば」って思ってもらえるものなど、説明しなくてもこっちを向いてもらえるものがテーマでした。ここからは人に面白さがすぐに伝わらないものを面白がってもらう方法について説明します。
そのためには面白いと思ったところを分かりやすく浮かび上がらせるのが手っ取り早いと思います。その方法が今回のテーマの「ずらす」です。
ずらした記事の例
特定の表現の型を関係ないものに応用することを「ずらす」と呼んでいます。デイリーポータルZの編集・ライターはよく使っている言葉ですが、一般的かどうかは分かりません。デイリーポータルZはほぼこれで成り立っているといっても過言ではありません。

まずはこれ。楽天市場の商品紹介ページには独特の様式があります。とにかく長いし、特大の文字で書いたりと独特です。まず、この書き方は面白いぞ、と思ったんですよね。
ただこれを「楽天市場のページが長くて面白い」って記事にしても、楽天市場に興味がある人にしかタップしないし、ちょっと揶揄しているようになってしまう。林って嫌味っぽいやつだなと思われてしまう(もう伝わってるかもしれませんが)。
さんざん見て研究して、真似したくなっていたので別の題材を当てはめることにしました。選んだのはカフカの小説「変身」です。朝起きると虫になっているという世界の人が「なんで?」と思ったお話です。
ポイントは、①楽天市場とまったく関係ないもの、②そして誰もが知っているものです。
例えば題材がコンビニのおにぎりだと近すぎて、楽天市場の商品紹介ページにフィットしてしまいます。獅子文六(昭和初期に人気があった小説家)の小説だと今は有名じゃないから意外って思ってもらえない。
「意外~!」って思ってもらうためには、関係ないうえにどっちもメジャーじゃないといけないんですよね。BTSに大谷翔平が加入するとか。
たいていの表現には型があるので、それを関係ないものにあてはめるとその型の独特さが浮かびあがります。
例えばYouTuberの謝罪動画、野球の応援、テレビの通販番組。どれもパターンがありますよね。
例えばそれをずらして、耳なし芳一を謝罪動画風にする、九九の覚え方を野球の応援風にする、エナジードリンクの缶のデザインで「泥水」と書く。
あり得ない組み合わせにすることで、「謝罪動画ってこういうのだよね」という型の特徴、あるあるに気づきやすくなります。
いまだったらAIが書いたポスターですかね。ずらすとすると、あれをクレヨンで手書きするとかどうでしょう。
AIとクレヨン、関係がないうえにどちらもよく知られています。(と書いていたらやりたくなってクレヨンを買ってしまいました)。
ずらした記事の例
ずらす記事は無限にあるのでいくらでも紹介できるのですが、3つ選びました。
パワーポイントの提案資料が大好きだったので、みんな大好きペリーに当てはめました。ペリーに開国をパワポでプレゼンしてもらいました。
同僚と電車移動中に見たニュースがきっかけです。どこかの私立大学が入学試験にセンター試験を利用するというニュースでした。ってことはセンター試験を私立大学に売り込んでいる人がいるのだろう。
センター試験を入試に使えば独自の問題を作るより省力化できますとかパワポで資料を作ってるんでしょうね、などと話をしたのを覚えています。センター試験とパワーポイントという組み合わせの意外さにうっとりしましたが、記事ではもっと意外性を強くしてペリーにしました。
ペリーは教科書で誰もが知っているものなので安易に選びました。
ライター西村さんの傑作。シチューもカレーも最初は一緒、あとのほうが違ってくる→これって鉄道の各駅停車、急行、特急の停車駅と同じ!というアナロジーから生まれた記事です。
注目すべきは路線図風デザインの完成度の高さ。ずらし記事のときは元の型にできるだけ近づける必要があります。デザインがあまり似てないと「気持ちは分かるんだけど……」と読者に負荷を掛けることになってしまいます。
フォトショップやイラストレーターで真似たいものを見ながら、写真やイラストなどの素材を同じ位置に配置し、同じフォント・同じ色で文字を重ねていくと意外と簡単に似せることができます。
ミュシャとカツ丼というモチーフの無関係さがお手本のようなずらし記事。ただミュシャ風に描くところはべつやくさんの画力が支えています。似せるために何度も書き直していました。
本当にそうだっけ?
ってすらすらと分かったようなことを書いたのですが、自分でもちょっと違和感を感じています。
おれってこんなに理路整然とネタを考えていたっけ?
一人称も私からおれになるぐらいの戸惑いです。
こういうアイディア術の本って後出しじゃんけんみたいにうまくいった例だけを書くのでうさんくさいですよね。いま、私はとてもうさんくさい。私は大事なところを書いてない気がします。
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