
林です。
面白がらせる、をテーマに語る連載第4回です。これまでは原稿のストックがありましたが、今回は一昨日ぐらいに完成した原稿です。
インターネットらしいテンポになってきました!
今回は、遠くに行けば普通のものが珍しくなるって話です。将棋の「歩」が成るように、普通が珍になります。

当たり前を別のところに持ってくる
数年前から「AIインタビュアー」を作ろうとしています。「なにか面白いことありますか?、ふむふむ、それはどうして?」などとチャットで聞いてくれるAIです。ライターじゃなくても記事が無限にできる!メディア業界を変えるゲームチェンジャーじゃん?と興奮しながら作っていました。
ただ、プロトタイプを人に試してみたところ、最初の質問で止まってしまうことに気づきました。その質問は「なにか面白いことありますか?」です。
読者投稿でもインタビューでも、この「なにか面白いものないですか?」という質問は盛り上がりません。『なにか面白いことを言えや』と迫られているように聞こえますし、しゃべっても『その程度で面白いって思ってるんだ~』って思われたらどうしようって心配してしまいます。
昨今のこの「面白さ強迫症」とも言える状況ってどうなんだよ?と思いますが(お笑いブームの弊害です)、まずはいったんは避けて通りたいと思います。
そもそもこの質問が良くなかった。
「AIインタビュアー」では、まず「カバンにいつも入れているもの」や「スマホのホーム画面に入っているアプリ」など、相手と世間話をしてもらうように仕様を変更しました。すると、抵抗なく質問に答えてもらえることが分かりました。また、AIはその人にとっての「当たり前」を聞いていって、途中でおやっと思うところで深掘りします。それはつまり「当たり前」が「面白い」に変わるタイミングです。そのタイミングは距離、シチュエーション、時間に分けられます。
① 距離を移動する
特定の場所では当たり前なのに、よそに持ってくると面白くなるものがあります。海外の習慣はそうですよね。メキシコのドクロ祭り、タイの水かけ祭りなんて日本人の私たちにとってはあからさまに珍しい。でもそういうことではなく、スーパーの惣菜でも切符の買い方など生活レベルのものでもじゅうぶん面白い。
イギリスに行って一番印象に残っているのはドアノブでした。ドアノブがドアの中央についていました。ピカデリーサーカスとか行ったはずなのに、一番の思い出はドアノブ。海外旅行で一番楽しかったのが地元のスーパーだった人も多いと思います。日本に来ている外国人観光客がコンビニや居酒屋で楽しんでいるのは、まさにそれだと思います。
外国の当たり前が面白い。
国内でも地域が変わるだけで違います。いや、自分の家以外、人の家でも習慣は違うのでやっぱり面白い(人の家は最後の秘境です)。
「普通」は距離を移動すると「面白い」に変わります。
福沢諭吉は海外の思想を日本に紹介してましたが、ネタという点では海外から輸入してくるのはいまだに有効だと思います。
さて、そんな構造のデイリーポータルZの記事はこれらです。
ストレートに、海外の読者に普段食べているアイスクリームを聞いた企画。海外の当たり前が日本では珍しいことが分かります。デンプンで作った麺状のデザートなどまったく馴染みがないものが投稿されています。海外の当たり前にまったく馴染みがなくてずっと読んでいられます。
逆に似たものがあるのも面白いんですよね。海外ではメジャーなマグナムというメーカーが作っているチョコバーは日本のパルムにそっくりだったりして。どっちが先かは分かりませんが、距離は離れているのに似たようなものを食べている、と考えると平和な気持ちになります。
アメリカに進出した日本のカニカマメーカーがどうやってカニカマを売ったかのインタビューです。袋から出して冷凍ケースの中に並べたり、うまみ成分が生臭いと感じられるので味も変えているとのこと。カニカマにつけるのはお酢でもマヨネーズでもなくカクテルソース。
アメリカの現地法人に駐在している日本人に聞いたので、アメリカでは当たり前、でも日本では珍しいというエピソードをまとめて話してくれました。時間をかけて気づいたことばかりだったので、ひとつひとつのエピソードに力がある記事になっています。
カナダでは定番だという袋入りの牛乳。こんな珍しい見た目のものが定番だなんて。インターネットで海外の情報が入りやすくなっていると思っていましたが、全然そうじゃないですね。
ってことはまだまだネタがある、おれは何も知らないのだ、そう気づいて尻の下がじりじりするぐらい焦りました。
静岡県西部、愛知県で祭りの時期に飾られる花。地元では当たり前ですが地域限定でした。
これは掛川在住のライターを訪ねたときに見つけました。そのライターに聞くとずっと昔からあるものだから気にしてなかった。ほかの地域にはないのか?という反応でした。
これはよくある反応で、そこに住んでいると当たり前すぎて見えなくなります(私もきっと地元の珍しいものを見逃していると思います)。遠方のスーパーなどに行ったときは地元の人に案内してもらうと珍しいものが見つけやすくなります。
(a)地元の人にとっても珍しいものがたまたま売ってたのか、(b)地元の人にとっては当たり前なのかの区別がつきます。(a)が結構あるんですよね。
旅先のコンビニに入って、地域限定の珍しいものがある!と興奮して買って帰ってきたら地元のコンビニにもあったというパターンです(ただの新商品だった)。
② 状況を変える
特定の状況では当たり前だけど、切り離して考えると面白くなるものがあります。
木魚、スイムキャップ、カラオケルームの大きなリモコン、飛行機のキャビンアテンダントが受話器を横にしてマイクとして使うこと、ひとり暮らしの家にある100万円貯まる貯金箱。
どれも、その状況では見逃してしまいますが、そこだけを切り取るとかなり変わってます。自宅のテレビのリモコンがカラオケルームぐらい大きかったり、受話器を横にして使っている人がいたら面白い(きっとキャビンアテンダントです)。
これまでのデイリーポータルZの記事からこのたぐいの記事を探すとこれらです。
籠盛りのフルーツを買ってきて元気な人だけで食べる企画。いいフルーツは食べたいけど入院はしたくない。そもそも美味しいものを食べるなら元気なときの方が良い、などと言い訳をしつつ果物を食べています。入院と結びついている「フルーツ」だけを切り出しました。
渋谷の西村で買ってきましたが、意外なことにキウイが驚くほどにおいしかったです。
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