連載 2026年8月16日

おもしろいって言われたい 第2回

林です。
書籍化のための連載第2回です。ウェブの連載用に「おもしろいって言われたい」ってロゴがあったほうがいい、そう前回掲載後に思いました。次回までに作ろうと思っていたらもう次回です。
2週間、気を失っていたのかもしれません。
今回は、面白い場所とは「あーそういえば」と言われる場所。その条件を考えます。ではどうぞ。

第1回はこちら 


 

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第1章 自分の「面白い」を発見する

この章では素材の強さを活かした面白がらせかたを取り上げます。
誰が見ても面白いものであれば、面白がらせるのは簡単です。伝え方を工夫しなくても素直に紹介すればいい。でも「誰が見ても面白いもの」ってなんでしょうか?
誰が見ても面白い、もちろん自分が見ても面白い、それにはいくつかのパターンがあります。

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1-1) 珍しい場所を訪れる

例)フォッサマグナに気づきたい

日本を縦断する断層フォッサマグナを見に行く旅行記です。
まず「フォッサマグナ」という単語が理想的です。知っている人が多いのに、よく知らない。
これは後述する「教科書で見た」のひとつです。教科書には他にも六波羅探題、アメンホテプ3世、T2ファージ、ジオイド高、カルスト台地、ゾエア……など不思議な響きの言葉が登場します。学校の勉強なんて役に立たないと言う人がいますが、ネタ探しではとても役に立ちます。意味は忘れても音だけ憶えておくと便利です。
「フォッサマグナってあったよね~」と学校あるあるとして出すと私の薄っぺらさが分かってしまうので、あくまで地学が好きなふりをしました。

フォッサマグナを発見したのは地質学者のナウマンです。ナウマンが断層であることに気づいた峠が長野県にあります。ナウマンはナウマン象の由来になったあのナウマンですし、行ってみたら分水嶺もありました。(ついでにナウマンは奥さんを部下にとられて決闘を申し込んでいます。調べるとこういう余談がどんどん出てくるので自然と興味は出ちゃうんですよね)。
フォッサマグナ、ナウマン、分水嶺という、聞いたことあるけどよく知らんワードが溢れている記事です。題材の力が強いのであとはあまりひねらずに、素直に書けば良いパターンでした。

例)なくなったサイトで見る場所へ行く

かつてインターネットでドメインが失効したサイトで表示される画像がありました。
2000年から2010年代にインターネットを見ていた人にとっては一度は見たことがある画像です。意味がある画像ではなく、ドメインが失効したメッセージといっしょに表示される写真、いわば埋め草です。
ニュース番組の後ろに見える風景や包装紙として使われている英字新聞など、意味はなく埋め草として使われているものにわざと注目すると、スルーしていたものに気づきます。
その画像が撮られた場所を特定して(米カンザスシティ郊外でした)訪れる記事です。
このような「見たことはあるけど見てなかった」はデイリーポータルZの勝ちパターンのひとつです。
素材の力が強いので、記事そのものはその場所のようすと行くまでの過程をストレートに書いています。よく読まれました。
この記事は好評で、題材は見たことがあるのに意識してなかったという声が多くてしてやったりでした。隠し玉で急にアウトにしたような気分です。

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「あーそういえば」と言ってもらえる場所

フォッサマグナやドメインガール撮影地は簡単に言うと珍しい場所です。そのまま見せれば面白がってもらえる場所、そのようすを書けば面白い記事ができあがります。
人を面白がらせるには珍しい場所に行けば良い。
あたりまえすぎて「はあ?(怒)」と思われているかもしれません。
美味しい料理を作る秘訣で「100gあたり2000円の肉を使いましょう」って言ってるようなものですからね。

いや、でも待ってください。
でもその面白がってもらえる題材には特徴があります。
それはその名前を言ったときに「あーそういえば」と言ってもらえることです。
いちどは聞いたことがある、でもその存在をすっかり忘れてた。それが面白がってもらえる珍しい場所です。整理すると以下のパターンに分かれます。

・聞いたことはあるけど行ったことがない
(渓流下り、あしかがフラワーパーク、など)
・教科書で見た
(チグリス川、フォッサマグナ、など)
・映画やマンガ、歌で聞いた
(京都福寿園、底なし沼、番町皿屋敷)
・電車の行き先だけで見た
(森林公園、京都国際会議場)
・知ってる名前だけど、違う
(米ワシントン州にある町「ワラワラ」)

共通するのは、少し知っているということ。名前だけ知っている、もしくはステレオタイプなイメージしか持っていない状態です。脳の奥の方からそれらの言葉が出てくるときに、出る声が「あーそういえば」です。
この「そういえば」は考えても出てきません。「そういえば」と言うってことは忘れているわけなので、忘れていることは考えても出てこない。
そのためにはなるべく思いもしないことにぶつかる回数を増やすしかありません。それは街を歩く、興味のないテレビ番組を見る、書店に行く、人と話す、人の話に聞き耳を立てる、です。
さらに背景と中心の垣根を外すと気づくことがあります。さっきも例に出しましたが、英字新聞が包装紙として使われていたら、読む。カラオケ店の外観に歌っている人が貼ってあったら、この人は誰だろうと考える。
「スイカでも支払いできます」と書いてあったらICカードのスイカではなく、果物のスイカかもしれないと思う。
世間知らずとして世界を見るといろいろ引っかかります。つり革って革じゃないし、白ワインは白じゃなくて透明です。

ネットは検索もSNSも私の興味に最適化されたものが出るので、「そういえば」探しには向いていません。AIも凡庸なことを言うようにチューニングされているので同様です。
余談ですが、AIをネタ出しに使うときは「まんじゅうに関係ない場所を10個言って」と指示すると便利です。「そういえば」と思う単語があるかもしれないので。(でもすぐに宇宙とか言い出すんですよね。関係ない言葉=宇宙というAIの発想が凡庸です)。

さて、そうやって見つけた場所は名前だけでフックになります。フックというのは名前の通り引っかけることです。釣り針のようなもの。具体的にしたら痛そうな比喩でした。でもフックはよく使う言葉なのでこの後も使います。
これらフックがある場所は多くを語らなくても名前を伝えるだけで「あーそういえば」や「え、それって本当にあるの?」と興味を持ってもらえる。言い換えれば、珍しすぎない場所です。

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珍しすぎると手がかりがない

逆に言うと馴染みのない場所の記事は読まれません。

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