自動車道で約600㎞、車で片道7時間、新幹線で4時間(最短)
まずは、岡山県が長崎からどれぐらい離れているのかを調べることから始まりました。
長崎県佐世保市に生まれ、大学でのそっと佐賀の地に足を踏み入れ、社会人で九州を転々とし、結局佐世保に戻るという穏やかなルートを辿ってまいりました。ライターの山本千尋です。
昨年12月に公開された記事『「どうだ明るくなったろう」山本唯三郎の意外な人生をたどる』でわたしの心にロマンの灯をともしてくださったオカモトラボさんに仕送りさせていただくことになりました。
わたしが「これは」と思う、地元長崎で手に入るアイテムでぜひともワクワクしていただきたい!そう思ったのですが、岡山と長崎って絶妙な距離感。ひょっとすると、だいたいの日配品は手に入るのでは。おそるおそる選んだ結果、男子大学生に仕送りする不器用なおかんのような中身になってしまったことを先にお詫び申し上げます。
(1)ぽると総本舗 ぽると、マリアン
佐世保市の定番土産の1つ「ぽると」です。せっかくなので、ぽると総本舗に足を運びました。
おすすめの食べ方は、お皿の上で、ブラックコーヒーか濃い抹茶と一緒に。県外の方が食べると、実に豊富なリアクションを見せてくれるお菓子です。
(2)井手の玉こんにゃく
白十字パーラーの帰り道につい立ち寄ってしまった野菜市場で発見しましたので、こちらも購入。買うつもりじゃなかったのに、というこんな偶然の出会いも仕送りの段ボールに入れてしまいます。まるで日記のようです。
(3)島原そうめん
地元の店でよく見かけていたけれど、じつは一度も食べたことがないものを投入してみました。反則のような気がしますが、外側の視点を持ってわが故郷を知るというスタンスでいこうと思っています。
(4)かんころ餅
長崎県五島列島の郷土料理です。
(5)食べるいりこ
西日本では「いりこ」、東日本では「煮干し」というそうですね!岡山ではどちらでしょう。無限に食べても罪悪感のないおやつです。
(6)味カレー(スナック&焼きそば)
DPZ編集長の林さんが、「関東のダイソーで見たことがある!」とおっしゃっていましたのでひょっとするとご存知かもと思いましたが、こちらのバリデカ(ぼっけぇ大きい)バージョンとカップ焼きそばバージョンはご覧になったことがないかもと思いニヤニヤしながら購入させていただきました。
(7)マルタイ棒ラーメン
設立60周年記念キャンペーンで、マルタイの光るシャワーヘッドの抽選に応募したのですが当たりませんでした。残念!
福岡のソウルフードともいわれるマルタイ棒ラーメン(「棒ラーメン」の名称はマルタイの商標登録なんですね!)。こちら、九州外だと手に入りにくいという噂を耳にしました。岡山県ではいかがでしょうか。同じく人気のハウス食品の「うまかっちゃん」も考えましたが、やはり棒があるのかないのかが気になってこちらにしました・・。
(8)これだ
パッケージが独特ですし、一応醤油ラーメンということになっています。九州福岡を中心に販売しているとのことですが・・。
(8)大和製菓 チョーコーの亀せん
九州=亀せん、関東=歌舞伎揚げ、とのことです。佐世保のスーパーには歌舞伎揚げがなかったので、こっちは亀なんだ!と知りました。
仕事で佐世保から1時間ちょいかけて平戸市へ。この日は曇りなのですが晴れているようなよく分からないお天気です。とろんと鈍く光る空を見あげハッとしました。
「はっ。岡山…」
そこでも思い出すわけです。山崎まさよしばりに。ここ数日、オカモトラボさんのことばかりを考えている。
そんなわけで向かったのは「平戸瀬戸市場」。
平戸産の新鮮な魚介や野菜果物、土産物各種が揃っています。そこで手に入れたのがこちら。
(9)鬼洋蝶(おにようちょう)
平戸の民芸凧。ミニ版をどうぞ。飾れますし、ちゃんとあがります。
(10)平戸のおかんがつくったアクリルたわし
道の駅の売り場の壁際あたりでよく見かけるのですが、おそらく婦人会の方々が作ったと思われるハンドメイド雑貨コーナーがあります。
そこに平積みになっていたアクリルたわし。洗剤なしで汚れが落ちるエコなアイテムです。
(11)丸山さしみ醤油
「九州の醤油は甘い!」とは有名な話ですが、本当に我が家では甘い醤油がスタンダード。お気に入りのブランド「マルヤマ醤油」のさしみ醤油は本当に甘いです。と言いつつ、岡山も醤油甘そうだな~と勝手にソワソワしています。脂ののったなにかの刺身でぜひ。
(12)佐世保バーガーマスコットキャラステッカー
佐世保市の名物「佐世保バーガー」のマスコットキャラクターのステッカーです。キャラデザはアンパンマンの作者、やなせたかし氏が手掛けてくださいました。
楽しくお買い物ができました。
岡山県を通じて、西日本と東日本との違いをさぐりさぐりしたいです。アイテムを選ぶたびに、「西日本と東日本で違う!・・はっ、では岡山はどうなんだろう・・」と毎回岡山が頭をよぎるのが楽しかったです。徐々にファンレター的な感覚に。
古賀さんからのメモが嬉しかったので、わたしもつけてみました。
オカモトラボさん、くれぐれもご自愛くださいね。よろしくお願いいたします。
山本より。
長崎佐世保の山本さんから
岡山の岡本へ
荷物が届きました!
「そうきたか!」
岡山の岡本です! 山本千尋さん、仕送りありがとうございます。
山本さんとは一度もお会いした事がないものの、同じ地方在住ライターという事で勝手にシンパシーを感じている。
事前に長崎から仕送りが届く話を周りの岡山県民にすると、みんな「カステラとちゃんぽんだ」と予想していた。岡山県民がイメージする長崎から届くものといえば「カステラとちゃんぽん」なのである
荷物を開けると僕の想像は大きく外れ、見た事がないものがたくさん入っていた。
目新しく味が想像できないものばかり。まるで長崎佐世保旅行が箱詰めされたよう。
(1) 和洋折衷「ぽると」とマリアン
まず手に取ったのは南蛮菓子ぽると。
山本さんからのそれぞれの商品に対する説明メモが付いていて交互に見るだけでも楽しい。
僕はぽるとという名前自体を聞いたこともないし、もちろん食べたこともない。
ぽると(写真中央)は柚子風味の餡をクッキーでサンドしたお菓子だった。
南蛮菓子とのことだが、洋菓子っぽくもあり柚子の風味が和菓子っぽくもある。
クッキーはそっと持ち上げないと崩れてしまうほどで、口に入れるとホロリとほどけていく。リンゴのぽると(左)は柚子餡がリンゴ餡になっていて、右のマリアンは柑橘の香りのマドレーヌだ。
食べたことないものを食べるのはこんなにもワクワクするものか。
(2)岡山ではレア「白い玉こんにゃく」
続いては玉こんにゃく。山本さんは当初買うつもりではなかったとのことだが、よくぞ買ってくれました。岡山では白い玉こんにゃくはめちゃくちゃ珍しいので嬉しい。
まず岡山では丸い形のこんにゃくはあまり食べられていない。四角いこんにゃくか糸こんにゃくのほうがなじみ深いのだ。
加えて、このような白いタイプのこんにゃくも少ない。岡山含めた西日本では色付きの(黒いつぶつぶの入った)こんにゃくが多く、白いこんにゃくは東日本に多いと聞いたことがある。僕自身もずーっと、しらたきをこんにゃくだとは認識していなかった。
岡山でスーパーをいくつかはしごしたが、丸くて白いこんにゃくはどこにもなかった。長崎では白い玉こんにゃくも普通に流通しているのか。
なお初めての白い玉こんにゃくは調理法が分からずネットで調べ、形に戸惑いながらも美味しくいただいた。
(3)岡山ではバチと言う
さて続いては島原そうめんの端っこである。
袋も山本さんからのメッセージも「ふし」となっている。なるほど、長崎ではそうめんの端っこを「ふし」と言うらしい。
岡山ではこのそうめんの端っこが三味線のバチに似ていることから「バチ」と呼ぶことが多いのだ。
ふしはモチモチっと柔らかめの所もあればコシが強い部分もあり食感が変化して飽きが来ない。
さらに島原そうめんは僕が普段食べているそうめんよりも随分おいしいぞ。
(4)重さに戸惑うかんころ餅
これも初めてだが、まず僕がびっくりしたのはその重さ。かんころ餅を見たことない人は↑の写真から重さを想像してほしい。
柔らかい菓子と思いきや、実際は密度が高くて硬く、想像の2倍は重い。持ち上げると手にのしかかってくるよう。
見た目と実際の重さが違うお菓子ランキングがあったら全国でも上位に食い込むだろう。山本さんが「手に持つと暖かくなる」のは軽くトレーニングになっている可能性すらある。
食べてみるとお餅とサツマイモのちょうど中間のようだ。サツマイモの上品な甘味とお餅のモチモチとした食感があわさり、昔ながらの素朴なお菓子という感じ。
しかしバターで炒めると事態は急変する。
バターと焼き芋の香ばしさが広がり、やさしい甘さにバターの濃厚さと塩味が加わる。おこげはカリカリ、中はもちもち。他に形容しにくいがめちゃくちゃ美味しい。
これは絶対バターがおすすめだ。
(5)長崎はいりこも有名なのか
箱の中からいりこが出てきて不思議に思ったが、そうか長崎はいりこも有名なのか。しかし岡山では長崎のいりこのイメージはまだとどろいていない。
岡山でも呼び方は「いりこ」呼びが優勢なものの、「煮干し」や「いり干し」 とも言う。
たしかにこれは罪悪感がない。おやつに最適だ。
(6)「味カレー」
続いては味カレーだが、山本さんの心配をよそに僕はそもそもオーソドックスな味カレーさえ食べたことがなかった。
元ネタを知らない状態で派生商品を見たため、異なる商品が同じ表現を使っている…「味カレー」は「カレー味」を意味する方言?と思ってしまった。
この知らないことに戸惑う感じ、なつかしい。これは旅行だ。
よくよく調べてみると僕が知らなかっただけで、岡山でも駄菓子専門店や、ホームセンターのナフコ(本社・福岡)にはオーソドックスな味カレーだけはあった。
しかしながらやはり山本さんの読み通り、やきそばとバリデカは見つけることができない。
味カレーは僕が知っているもので例えるなら、かなりスパイシーなかっぱえびせん。小さな子供には少しピリ辛なので心配だが、長崎の子供たちは辛さに耐性があるのかもしれない。
本来なら普通サイズからバリデカへと段階を踏むはずが、初心者の僕がいきなりバリデカから食べる。これでは普通の味カレーでは満足できなくなってしまう。岡山では入手不可能なのに。
(7)九州だったのか!マルタイ棒ラーメン、(8)これだ
見たことないものばかりの中で唯一「これは見た事がある!」と思ったのがマルタイ棒ラーメンだった。
山本さんの情報に反して、岡山でもマルタイ棒ラーメンは人気で、ほとんどのスーパーに置かれている。
しかしマルタイが九州の会社だったとは気にしてなくて悔しい。
一方「これだ」は見たことがなかったし、見つけることもできなかった。
早速いただいてみる。
マルタイ棒ラーメンのスープはシンプルで飽きが来ない味。ごまの風味がふわっと香り、麺は生麺のようにツルツルシコシコのストレート麵だ。
対して「これだ」は縮れ麺で、スープも濃くスパイスのパンチが効いてはっきりした味。僕はこれだのほうがやや好みかもしれない。
(8)亀せんでも歌舞伎揚げでもなく、ぼんち揚げ
岡山県民はこれを「ぼんち揚げ」と呼ぶと思う。
ぼんち揚げは大阪府大阪市のぼんち株式会社が作っている亀せんによく似た米菓子だが、大阪からそれほど遠くない岡山でも多く流通しているせいか一般名詞化している。
歌舞伎揚げという呼び名も聞いたことはあるが、亀せんは聞いたことがなかった。
亀せんは開けるとふわっと醤油の香り。思っていたより甘さが強いが単純に甘いわけではなく、醤油の風味も加わり深みのある甘辛さ。また亀せんはけっこう硬く、ぼんち揚げより硬い。前歯で噛むのは歯が欠けやしないか心配なほどで、僕は奥歯で噛んだ。
強い意志で食べるのを止めなければ無限に手が伸びてしまうほど。癖になる。
(9)鬼洋蝶
続いては鬼洋蝶という名前の凧。
実際に飛ばすこともできるらしいが、あまりに小さいので一応飛ぶ程度だろうと予想した。さすがに大きな凧ほど安定はしないはず。
しかし飛ばすと想像に反してすごい安定感だ。
強い風が吹くとねずみ花火のようキュルキュルと暴れるが、それでも空気をつかんで離さない。コンパクトでかわいいし、これからいつでも凧揚げできるぞ。
(11)甘口の醤油
多くの岡山県民は生涯、醤油の塩辛さに疑問を抱くことはないだろう。
かくいう僕も九州の醤油が甘いことはなんとなく聞いたことあり、全国展開の回転寿司チェーンで見た事もあったが手を付けた事はなかった。
塩辛さの象徴たるべき醤油が甘口なんて「酢豚にパイナップル」を超える衝撃的な組み合わせだからだ。 九州でもごく一部の好事家がやっているのかと思っていたが、山本さんの家も含めて一般的な話らしい。
これが僕にとって正真正銘初めての甘い醤油である。
「甘い醤油」という言葉のインパクトがあまりにも強く、覚悟を決めて口に運ぶが想像していたよりも甘くはなかった。全然大丈夫…いやむしろ美味しいぞ。
お刺身に付けるだけでは甘さは抑えめだが、たまごかけご飯などに使うとはっきり甘い。そして握り寿司につけると酢飯との相性が抜群だ。醤油の新しい世界が拓ける!
長崎佐世保の仕送り力におののく
知らない土地からの知らない物をいただくというのはとても楽しく、仕送りリレーとは発見の連続だ。
そして改めて長崎佐世保の仕送りは、食べる物から遊ぶものまでバラエティーに富んでいるし、限られた値段のなかでその地域らしさが出ていて素晴らしい。山本さんのセンスと長崎佐世保の地域力に改めて舌を巻いた。
次回の仕送りリレーにむけて僕の両肩にはかんころ餅が乗ったようなプレッシャーを感じている。
山本さんのこれからのご活躍も楽しみにしています。
次回、岡山の仕送りが北海道に届く!
はい、ここで再度案内役の編集部古賀です。
山本さん仕送りありがとうございました。そして岡本さんの、最高の品々の堪能ぶりよ。
さて、リレーというからには連載はまだまだ続きます。「かんころ餅が乗ったようなプレッシャーを感じている」という岡本さん、どうか気楽にいつも買っているものを送ってほしい……ですが、次の宛先はなんと北海道! ジーンさんが受取人として登場します。
人を魅了してやまぬ北海道という大地を岡本さんはどう攻略するのか(という企画ではないのですが!)、きびだんごで手なずけられるのか(だからそういう企画じゃないのですがね!)。
どうぞ、ご期待くださーい!