小出し記事 2021年5月20日

「温かい食べ物」に執着がない? ベルリンのふつうのくらし・ごはん編

ドイツはベルリン在住11年目のライターほりべのぞみさんに、「ふつうのくらし」を聞いてみたい!  外からでは見えないことをたくさん教えてもらいました。

今回は「ごはん」のおはなし。

四角いパンとまるいパンはパンはパンでも別概念、じゃがいもも煮崩れるやつと煮崩れないやつが別々に売られている、レンジは持ってない人も多い……などなど、たのしい「へ~」の連発です。

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登場人物

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ほりべのぞみ
ドイツ・ベルリン在住11年のイラストレーター、ライター、日英翻訳者。
ベルリンの語学学校でドイツ語を学び、大学に通ったあと仕事をはじめ現在にいたる。
だんなさんがドイツ人。
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古賀及子
デイリーポータルZ編集部員。
15年前に旅行でミュンヘンに行って以来ドイツは憧れの土地。海外経験はとても少ない。
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ベルリンでどう暮らしてる? を5回にわたって聞かせておくれ

古賀:
私がまってました! というわけで、「ベルリンのくらし」を現地にお住まいのほりべのぞみさんに聞くコーナーが始まりました!
5回連載でテーマは「ごはん」「おうち」「ごらく」「のりもの」「休みの日のすごしかた」の予定です。

ほりべ:
よろしくおねがいします! ベルリンはドイツ国内でも「例外」と言われているので、思い浮かべるドイツとは違うかもしれません。
ずっとベルリンなので、ベルリンのことしか詳しく知らなくて恐縮です……!

古賀:
確かに日本も東京、名古屋、大阪ではあれこれずいぶん違いますよね……。
今回は「ベルリンのふつうのくらし」を教えて!という企画なんですが「って言っても人それぞれ」っていうのが真理ですし、ざっくばらんに「ベルリンでのほりべさんのくらし」を軸に教えてもらえたらと思っております~~!

ほりべ:
はい!

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ベルリン、パンとじゃがいもの歌

古賀:
早速ですがドイツではどんなものを食べて暮らしてますか?

ほりべ:
私はお米がないと生きていけないんですが、ドイツはやっぱりパンとじゃがいもの国です。

古賀:
そうそう、ほりべさんは空港でドイツの電圧に対応した炊飯器を買って持って行っているというのを以前お伺いしましたね。
ドイツの方はお米はほとんど食べない……? 

ほりべ:
はい。ドイツ料理にはお米の出番はあまりないですね。基本的にパンが主食です。
一般的なパンは黒っぽいパンで、ドイツ語では Graubrot (灰色のパン)と呼ぶこともあって、ロシアの黒パンとはまた違うんですが、酸っぱい感じのパンです。

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友人のおばあちゃんの家でお昼の準備をしている様子です。バゲットも写っていますが、手前にスライスして重ねてあるのが典型的なドイツのパンです。(以降、写真のコメントはすべて ほりべさんより)

ほりべ:
じゃがいも事情が結構面白いです。本当にいろんな種類のじゃがいもがあるんですが、煮崩れるもの、煮崩れにくいもの、煮崩れないもの、とカテゴリー分けされて売っています。 

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青空市場のイモ売り場です。煮崩れのしやすさで分類されています。正面のじゃがいもの値札には「mehlig (粉っぽい)」と書いてありますが、煮崩れしやすいのでマッシュポテトなどに向いている品種です。

古賀:
えっ!そんなに芋を厳密に売るんだ! 日本でも男爵は煮崩れる、メイクイーンは煮崩れないって知識としてはありますが、売り場で煮崩れをガイドしてるのは見たことないですもんね。

ほりべ:
そうですよね! 用途によってじゃがいもを買い分けることができるので便利です。

古賀:
じゃがいもってどうやって使うんですか?

ほりべ:
茹でて皮をむいてメインの炭水化物の付け合わせとして食べることか多いですね。

002.1 じゃがいも_茹でたじゃがいもをスライスして玉ねぎなどとカリッと焼くのも定番料理.jpg
茹でたじゃがいもをスライスして玉ねぎなどとカリッと焼くのも定番料理です。

ほりべ:
あとはカルトッフェルプッファー (Kartoffelpuffer) というじゃがいものパンケーキがあって、それが結構美味しいです!

003 カートッフェルプッファー Karoffelpuffer.jpg
ここではソーセージとザワークラウトが添えてありますが、アップルソースと一緒におやつみたいにして食べることもあります。

古賀:
はっ! そうか、おかずにするんじゃなくて炭水化物として食べるんですよね、そうかそうか……!

002.2 フリードリヒ2世はイモ栽培を奨励したことで知られるらしくお墓にはイモが備えられています.jpg
フリードリヒ2世はイモ栽培を奨励したことで知られるらしくお墓にはイモが備えられています。

古賀:
イモを……。我々も青木昆陽先生のお墓にさつまいもを供えたほうがよかっただろうか!

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ドイツ人は電子レンジが苦手

古賀:
朝昼晩の三食ってどんな感じですか???

ほりべ:
ドイツの家庭ではパンをスライスして、チーズやハムをのせて食べる朝食が一般的です。
お昼は職場や大学の食堂で暖かいものを食べることもありますが、サンドイッチを持っていくことも多いですね。
夜も結構パンにハムとチーズなどをのせて簡単に済ませてしまう人もかなり多いです。

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屋台のサンドイッチを食べているのを、欲しそうに眺めるワンコ。確かクリスマスマーケットの屋台だと思います!

ほりべ:
もっと手の込んだ料理を作ることもありますが、日本と違って3食とも温かいものを食べる……という文化はもともとありません。なので一日中パン…ということもよくあります。 

古賀:
パンに次ぐパンだ! 考えてみたらパン食だと「温かいもの」が食事の概念から遠くなる感じありますね。

ほりべ:
あっ、そういえば電子レンジを持っているドイツ人が少ないことに最初驚いたんですよね

古賀:
なんと……!

ほりべ:
私はめっちゃ重宝してるので夫と一緒に住むときに買ったんですが、夫は使い方が全く分からず、最初はあんまり使えてなかったみたいです。前の家にもなかったみたいで……。残り物のラザニアとかも温めずにそのまま食べててショックでした。

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今ではちゃんと使えるようになりました。

ほりべ:
そもそも「温かい食べ物」に執着がないのかなー? ないわけではないけど、日本人ほど気にならないんでしょうかね?

古賀:
逆に言うと、日本の食文化はめしの温かさに執着しているところがあるかもしれないですよね。冷遇されることを「冷や飯を食う」と言うくらいですもんね……。

ほりべ:
なるほど……。

古賀:
日本だとコンビニにもスーパーにもレンジがありますが、ないですか?

ほりべ:
あ! 確かにないですね……お湯もないです。

古賀:
ウォー! カップ麵にお湯がいれらんない! カルチャーショックです。

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チェーンのコンビニがないので、売っているものとかサービスがまちまちで、個性が出ます。ここはオーガニック商品も扱ってるちょっといい系のコンビニです。

ほりべ:
職場にはかろうじてレンジがありましたが、お店にはないです。悲しい!

古賀:
コンビニで店員さんに「お弁当あたためますか?」って聞かれる文化自体がないんですね、発見だ~~。

ほりべ:
そもそも温める食べ物がコンビニに少ないのかも。常温のまま食べるものが多いですね。
ホットサンドみたいなのはトースターみたいなので温めてくれます。

古賀:
そうか、トースター。トースターは家にもありますか?

ほりべ:
トースターは結構あると思います! 夫は日本のオーブントースターが好きで、上にチーズをのっけた状態で入れられる!って感激していました。あれはドイツでは見たことがないです。直にオーブンに入れてもいいんですが、オーブンは大きいので、オーブントースターがちょうどいいって。

古賀:
そうか、でかいオーブンはそもそもあるわけですよね。

ほりべ:
そうですね……。ドイツ料理はオーブンで作るものも結構あるんですが、私はオーブンを使うのが苦手で使いこなせてません……。

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電子レンジはなくても、でかいオーブンは絶対あります。先程の友人のおばあちゃん宅です。
007 オーブン_以前ルームメイトと暮らしていたアパートのキッチンです.jpg
以前ルームメイトと暮らしていたアパートのキッチンです。

古賀:
ちゃんとビルトインのオーブンがありますね……!
オーブン料理、ハードル高いですよね……。

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飲んだ帰りのラーメンがケバブ

古賀:
ベルリンって健康志向のイメージで、以前ジュースの記事(記事「キャベツジュースはタイヤの香り 〜ドイツの野菜ジュース飲み比べ」)を書いていただいたときもそれが丸見えになった感じがしましたが、ジャンクフードなんてあまり食べないですかね……?

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体に良さそうなジュースたち

ほりべ:
少なくてもベルリンはオーガニックのスーパーなども多くて、健康志向なイメージが強いです。チェーン系のジャンクフード店が少ない気がします(自分が気付いてないだけかもしれませんが!)。人気なジャンクフードといえば、ケバブです!

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ずっと欲しいと思っているケバブのお店のランプです。

古賀:
ケバブがジャンクというイメージなかった……!

ほりべ:
酔っ払って家に帰る途中にラーメンを食べるのではなく、ケバブを食べる感じです。

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ケバブを掲げるケバブ屋さん

古賀:
ケバブがラーメン的な「あるあるフード」のポジションなんですね。
あ! 日本だと刑事ドラマで張り込みのときあんぱんと牛乳が様式美になってますよね。あれ、ドイツだったら何ですかね……。

ほりべ:
あははは! え、なんだろう! これもケバブか……それかソーセージをパンに挟んだものかな……。

008 ケバブ 02 ベルリン郊外で食べたケバブはお皿に入ってきました.jpg
ベルリン郊外で食べたケバブはお皿に入ってきました

古賀:
ケバブの浸透ぶり!

ほりべ:
ですね! あとやっぱりソーセージ屋台は結構どこにでもあるので、何かあればソーセージですね。イベントがあればとりあえずソーセージ出しとけ、みたいになりますし。

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ベルリン名物「カリーヴルスト (ソーセージにケチャップとカレー粉をかけたもの)」で有名な店はいつも行列ができてます。
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ドイツ人はBBQも大好きです。

古賀:
うおおパワーワードだ「とりあえずソーセージだしとけ」。お祭り屋台もまずはソーセージですか?

ほりべ:
そうですね!定番中の定番なので、ソーセージ屋台のないお祭りはないと思います。ベーガン祭りとか以外は……。

古賀:
あっ、菜食主義の方ってやっぱ多いんですか?

ほりべ:
ベルリンはベジタリアン率が結構高いと思います。人を呼ぶ時とかご飯に行く時は絶対確認しないといけない感じです。

古賀:
おお、わかりやすく「多さ」を感じますね。

002.3 フライドポテトも定番のジャンクフードです.jpg
また芋ですが、フライドポテトも定番のジャンクフードです
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子どものすきな食べ物は「小さなパン」

古賀:
ケバブはトルコ料理でしたっけ。日本にもあちこちにあるし強いですね!

ほりべ:
そうなんです、もともとトルコ料理なんですが、1970年代ごろドイツにもやってきて、それ以来めちゃめちゃ人気です。

古賀:
外国の料理はどんな国のがメジャーですか?

ほりべ:
カジュアルがイタリアン(ピザ)やベトナム料理だと思います!
日本食、中華、韓国料理は結構入ってくるのが遅くて、本格的なレストランだと結構ごちそう感が強いです。安いなんちゃって中華の屋台はスナック感覚でありますが!
でも最近はパックのお寿司とかもスーパーに普通においてるので、庶民的な食べものになってきました。
ドイツ人の幼稚園児に好きな食べ物を聞いたら「パンとお寿司」って答えた子が2人ぐらいいてびっくりしました……。

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スーパーのお寿司です。閉店間際に行っても値引きされてませんでした。
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お寿司売り場です

古賀:
「パンとお寿司」! 芸人コンビの名前みたいな。ちなみにその質問で一番人気だったのって何ですか?

ほりべ:
やっぱりパンだったと思います!Brötchen (ブレートヒェン、小さなパン)というんですが、手のひらサイズの丸いパンです。

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右の小さいパンたちが Brötchen です!

古賀:
あっ! ドイツではスライスするパンと丸いパンは同じパンでも「違うもの」だって聞いたことがあります。子どもにとってもとくべつの食べ物なのかな。

ほりべ:
そうです!スライスする方の大きなパンは黒パンが多いんですが、小さいパンは大体ふわふわした白いパンなので子供に人気なのかもしれません!

安く野菜を売ってもらうかわりに農家を手伝う

古賀:
ほりべさんは買い物はスーパーに行ってますか? 八百屋に行って肉屋に行って……みたいなこともあるんでしょうか。

ほりべ:
昔ながらの肉屋~という感じのお店も減ってきてるので、ほとんどスーパーですね。

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ここのスーパーのビール売り場は巨大で、毎日一種類飲んでも追いつかなさそうです……
011 スーパーのビール売り場は巨大です.jpg
ケースでも積んであります

ほりべ:
最近結構人気なのが、ベルリンの郊外の農家から直接野菜を買えるサービスです。いろんなバリエーションがあるんですが、週に一度その日に取れた野菜を低価格で買える代わりに、年に数回農家を手伝う、というものがあります。ただ野菜は収穫したものをあちらが適当に選んでくれるので、冬はじゃがいもとキャベツ率が高いです……。
単に好きなものを選んで農家から注文して、ベルリンでピックアップ、というサービスもあります。
あとは青空市場みたいなのも多いです! 終わりぎわに行くと残ったものを叩き売りしているので楽しいです!

古賀:
お、おお~~、急激に俺たちのイメージするドイツの姿、という感じがしてきました。

ほりべ:
野菜だと今の季節は白いアスパラガスが出ています。

012 白アスパラ スーパーの売り場.jpg
スーパーの白アスバラガス売り場

古賀:
白アスパラガス、日本だとめちゃ高いやつだ、高級食材として珍重されてますよね。

ほりべ:
こっちでも結構高いんですが、アスパラガスシーズンが限られているので、みんな一度は食べないと! ってなりますね。このシーズンにお呼ばれすると白アスパラガスが出てくる率が高いです。
夫が白アスパラが嫌いなので、つらいみたいです。

012 白アスパラ.jpg

古賀:
白アスパラガス、いかなごのくぎ煮みたいなポジションなんだなー。
肉は何肉を食べがちですか??

ほりべ:
豚、牛、鶏、全部結構食べられている気がします! あとはベルリン付近は猪が多いので、イノシシ肉とか

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ベルリンの郊外の猟師の家に泊まった時の朝食です。パッと見、ごく普通のドイツ式朝ごはんですが、ハムやサラミが鹿肉やイノシシ肉でした。(おいしかったです!)

古賀:
えっ!イノシシ!? それ秩父で食べるやつでは……(古賀は秩父の近くが地元)ベルリンのような世界に名をとどろかす大都会でイノシシが……。

ほりべ:
意外ですよね…でも郊外はイノシシが多いので結構見かけます。スーパーではあんまり見ないかもですが、肉屋さんや猟師の人から直接買ったりできます。

ビールはもちろん飲む方向

古賀:
さっきもスーパーがすごいことになってましたが……ビールって実際やっぱむちゃくちゃ量飲む感じなんですかね。

ほりべ:
そうですね、飲んじゃいますね……。レストランでもミネラルウォーターより安いので、ビールを頼んじゃいます

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これは1リットルジョッキですが、ベルリンでは珍しいので撮ったんだと思います。通常ベルリンではビールは 0.3 (小) または0.5リットル (大) 単位で頼みます。(飲んだ量が計算しやすいですね。)

古賀:
水より安いの!

ほりべ:
はい。レストランだとビールの方が安いんです。ミネラルウォーターが高いのか、ビールが安いのか……。お得な方で選ぶと、いつもビールになってしまいます。

古賀:
ちょっと調べてみたんですが、ビール税がすごく安いようですね。

ほりべ:
ベルリンは外食の値段が結構手頃な街なんですが、料理の値段が安い分飲み物でまかなう店が多く、飲み物が高いところが結構あります。でもビールだけはあまり高くすると苦情が来るんでしょうか……。

古賀:
たのしい国だな……。ビールへの愛とプライドを感じますね。

014 ビール_空き瓶を集めて換金する人のためにビール瓶を集めるものが公園にできてました.jpg
空き瓶を集めて換金する人のためにビール瓶を集めるものが公園にできてました

古賀:
ビール瓶を集める什器が公園にあるのか……「ふつうのくらし」日本とはやっぱりいろいろ違ってめちゃくちゃ興味深いです!

(次回「おうち」編に続く!)

登場人物

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ほりべのぞみ
ドイツ・ベルリン在住11年のイラストレーター、ライター、日英翻訳者。
ベルリンの語学学校でドイツ語を学び、大学に通ったあと仕事をはじめ現在にいたる。
だんなさんがドイツ人。
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古賀及子
デイリーポータルZ編集部員。
15年前に旅行でミュンヘンに行って以来ドイツは憧れの土地。海外経験はとても少ない。
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