れんさい企画「ベルリンのふつうのくらし」
登場人物
ベルリンでどう暮らしてる? を5回にわたって聞かせておくれ
古賀:
私がまってました! というわけで、「ベルリンのくらし」を現地にお住まいのほりべのぞみさんに聞くコーナーが始まりました!
5回連載でテーマは「ごはん」「おうち」「ごらく」「のりもの」「休みの日のすごしかた」の予定です。
ほりべ:
よろしくおねがいします! ベルリンはドイツ国内でも「例外」と言われているので、思い浮かべるドイツとは違うかもしれません。
ずっとベルリンなので、ベルリンのことしか詳しく知らなくて恐縮です……!
古賀:
確かに日本も東京、名古屋、大阪ではあれこれずいぶん違いますよね……。
今回は「ベルリンのふつうのくらし」を教えて!という企画なんですが「って言っても人それぞれ」っていうのが真理ですし、ざっくばらんに「ベルリンでのほりべさんのくらし」を軸に教えてもらえたらと思っております~~!
ほりべ:
はい!
ベルリン、パンとじゃがいもの歌
古賀:
早速ですがドイツではどんなものを食べて暮らしてますか?
ほりべ:
私はお米がないと生きていけないんですが、ドイツはやっぱりパンとじゃがいもの国です。
古賀:
そうそう、ほりべさんは空港でドイツの電圧に対応した炊飯器を買って持って行っているというのを以前お伺いしましたね。
ドイツの方はお米はほとんど食べない……?
ほりべ:
はい。ドイツ料理にはお米の出番はあまりないですね。基本的にパンが主食です。
一般的なパンは黒っぽいパンで、ドイツ語では Graubrot (灰色のパン)と呼ぶこともあって、ロシアの黒パンとはまた違うんですが、酸っぱい感じのパンです。
ほりべ:
じゃがいも事情が結構面白いです。本当にいろんな種類のじゃがいもがあるんですが、煮崩れるもの、煮崩れにくいもの、煮崩れないもの、とカテゴリー分けされて売っています。
古賀:
えっ!そんなに芋を厳密に売るんだ! 日本でも男爵は煮崩れる、メイクイーンは煮崩れないって知識としてはありますが、売り場で煮崩れをガイドしてるのは見たことないですもんね。
ほりべ:
そうですよね! 用途によってじゃがいもを買い分けることができるので便利です。
古賀:
じゃがいもってどうやって使うんですか?
ほりべ:
茹でて皮をむいてメインの炭水化物の付け合わせとして食べることか多いですね。
ほりべ:
あとはカルトッフェルプッファー (Kartoffelpuffer) というじゃがいものパンケーキがあって、それが結構美味しいです!
古賀:
はっ! そうか、おかずにするんじゃなくて炭水化物として食べるんですよね、そうかそうか……!
古賀:
イモを……。我々も青木昆陽先生のお墓にさつまいもを供えたほうがよかっただろうか!
ドイツ人は電子レンジが苦手
古賀:
朝昼晩の三食ってどんな感じですか???
ほりべ:
ドイツの家庭ではパンをスライスして、チーズやハムをのせて食べる朝食が一般的です。
お昼は職場や大学の食堂で暖かいものを食べることもありますが、サンドイッチを持っていくことも多いですね。
夜も結構パンにハムとチーズなどをのせて簡単に済ませてしまう人もかなり多いです。
ほりべ:
もっと手の込んだ料理を作ることもありますが、日本と違って3食とも温かいものを食べる……という文化はもともとありません。なので一日中パン…ということもよくあります。
古賀:
パンに次ぐパンだ! 考えてみたらパン食だと「温かいもの」が食事の概念から遠くなる感じありますね。
ほりべ:
あっ、そういえば電子レンジを持っているドイツ人が少ないことに最初驚いたんですよね。
古賀:
なんと……!
ほりべ:
私はめっちゃ重宝してるので夫と一緒に住むときに買ったんですが、夫は使い方が全く分からず、最初はあんまり使えてなかったみたいです。前の家にもなかったみたいで……。残り物のラザニアとかも温めずにそのまま食べててショックでした。
ほりべ:
そもそも「温かい食べ物」に執着がないのかなー? ないわけではないけど、日本人ほど気にならないんでしょうかね?
古賀:
逆に言うと、日本の食文化はめしの温かさに執着しているところがあるかもしれないですよね。冷遇されることを「冷や飯を食う」と言うくらいですもんね……。
ほりべ:
なるほど……。
古賀:
日本だとコンビニにもスーパーにもレンジがありますが、ないですか?
ほりべ:
あ! 確かにないですね……お湯もないです。
古賀:
ウォー! カップ麵にお湯がいれらんない! カルチャーショックです。
ほりべ:
職場にはかろうじてレンジがありましたが、お店にはないです。悲しい!
古賀:
コンビニで店員さんに「お弁当あたためますか?」って聞かれる文化自体がないんですね、発見だ~~。
ほりべ:
そもそも温める食べ物がコンビニに少ないのかも。常温のまま食べるものが多いですね。
ホットサンドみたいなのはトースターみたいなので温めてくれます。
古賀:
そうか、トースター。トースターは家にもありますか?
ほりべ:
トースターは結構あると思います! 夫は日本のオーブントースターが好きで、上にチーズをのっけた状態で入れられる!って感激していました。あれはドイツでは見たことがないです。直にオーブンに入れてもいいんですが、オーブンは大きいので、オーブントースターがちょうどいいって。
古賀:
そうか、でかいオーブンはそもそもあるわけですよね。
ほりべ:
そうですね……。ドイツ料理はオーブンで作るものも結構あるんですが、私はオーブンを使うのが苦手で使いこなせてません……。
古賀:
ちゃんとビルトインのオーブンがありますね……!
オーブン料理、ハードル高いですよね……。
飲んだ帰りのラーメンがケバブ
古賀:
ベルリンって健康志向のイメージで、以前ジュースの記事(記事「キャベツジュースはタイヤの香り 〜ドイツの野菜ジュース飲み比べ」)を書いていただいたときもそれが丸見えになった感じがしましたが、ジャンクフードなんてあまり食べないですかね……?
ほりべ:
少なくてもベルリンはオーガニックのスーパーなども多くて、健康志向なイメージが強いです。チェーン系のジャンクフード店が少ない気がします(自分が気付いてないだけかもしれませんが!)。人気なジャンクフードといえば、ケバブです!
古賀:
ケバブがジャンクというイメージなかった……!
ほりべ:
酔っ払って家に帰る途中にラーメンを食べるのではなく、ケバブを食べる感じです。
古賀:
ケバブがラーメン的な「あるあるフード」のポジションなんですね。
あ! 日本だと刑事ドラマで張り込みのときあんぱんと牛乳が様式美になってますよね。あれ、ドイツだったら何ですかね……。
ほりべ:
あははは! え、なんだろう! これもケバブか……それかソーセージをパンに挟んだものかな……。
古賀:
ケバブの浸透ぶり!
ほりべ:
ですね! あとやっぱりソーセージ屋台は結構どこにでもあるので、何かあればソーセージですね。イベントがあればとりあえずソーセージ出しとけ、みたいになりますし。
古賀:
うおおパワーワードだ「とりあえずソーセージだしとけ」。お祭り屋台もまずはソーセージですか?
ほりべ:
そうですね!定番中の定番なので、ソーセージ屋台のないお祭りはないと思います。ベーガン祭りとか以外は……。
古賀:
あっ、菜食主義の方ってやっぱ多いんですか?
ほりべ:
ベルリンはベジタリアン率が結構高いと思います。人を呼ぶ時とかご飯に行く時は絶対確認しないといけない感じです。
古賀:
おお、わかりやすく「多さ」を感じますね。
子どものすきな食べ物は「小さなパン」
古賀:
ケバブはトルコ料理でしたっけ。日本にもあちこちにあるし強いですね!
ほりべ:
そうなんです、もともとトルコ料理なんですが、1970年代ごろドイツにもやってきて、それ以来めちゃめちゃ人気です。
古賀:
外国の料理はどんな国のがメジャーですか?
ほりべ:
カジュアルがイタリアン(ピザ)やベトナム料理だと思います!
日本食、中華、韓国料理は結構入ってくるのが遅くて、本格的なレストランだと結構ごちそう感が強いです。安いなんちゃって中華の屋台はスナック感覚でありますが!
でも最近はパックのお寿司とかもスーパーに普通においてるので、庶民的な食べものになってきました。
ドイツ人の幼稚園児に好きな食べ物を聞いたら「パンとお寿司」って答えた子が2人ぐらいいてびっくりしました……。
古賀:
「パンとお寿司」! 芸人コンビの名前みたいな。ちなみにその質問で一番人気だったのって何ですか?
ほりべ:
やっぱりパンだったと思います!Brötchen (ブレートヒェン、小さなパン)というんですが、手のひらサイズの丸いパンです。
古賀:
あっ! ドイツではスライスするパンと丸いパンは同じパンでも「違うもの」だって聞いたことがあります。子どもにとってもとくべつの食べ物なのかな。
ほりべ:
そうです!スライスする方の大きなパンは黒パンが多いんですが、小さいパンは大体ふわふわした白いパンなので子供に人気なのかもしれません!
安く野菜を売ってもらうかわりに農家を手伝う
古賀:
ほりべさんは買い物はスーパーに行ってますか? 八百屋に行って肉屋に行って……みたいなこともあるんでしょうか。
ほりべ:
昔ながらの肉屋~という感じのお店も減ってきてるので、ほとんどスーパーですね。
ほりべ:
最近結構人気なのが、ベルリンの郊外の農家から直接野菜を買えるサービスです。いろんなバリエーションがあるんですが、週に一度その日に取れた野菜を低価格で買える代わりに、年に数回農家を手伝う、というものがあります。ただ野菜は収穫したものをあちらが適当に選んでくれるので、冬はじゃがいもとキャベツ率が高いです……。
単に好きなものを選んで農家から注文して、ベルリンでピックアップ、というサービスもあります。
あとは青空市場みたいなのも多いです! 終わりぎわに行くと残ったものを叩き売りしているので楽しいです!
古賀:
お、おお~~、急激に俺たちのイメージするドイツの姿、という感じがしてきました。
ほりべ:
野菜だと今の季節は白いアスパラガスが出ています。
古賀:
白アスパラガス、日本だとめちゃ高いやつだ、高級食材として珍重されてますよね。
ほりべ:
こっちでも結構高いんですが、アスパラガスシーズンが限られているので、みんな一度は食べないと! ってなりますね。このシーズンにお呼ばれすると白アスパラガスが出てくる率が高いです。
夫が白アスパラが嫌いなので、つらいみたいです。
古賀:
白アスパラガス、いかなごのくぎ煮みたいなポジションなんだなー。
肉は何肉を食べがちですか??
ほりべ:
豚、牛、鶏、全部結構食べられている気がします! あとはベルリン付近は猪が多いので、イノシシ肉とか!
古賀:
えっ!イノシシ!? それ秩父で食べるやつでは……(古賀は秩父の近くが地元)ベルリンのような世界に名をとどろかす大都会でイノシシが……。
ほりべ:
意外ですよね…でも郊外はイノシシが多いので結構見かけます。スーパーではあんまり見ないかもですが、肉屋さんや猟師の人から直接買ったりできます。
ビールはもちろん飲む方向
古賀:
さっきもスーパーがすごいことになってましたが……ビールって実際やっぱむちゃくちゃ量飲む感じなんですかね。
ほりべ:
そうですね、飲んじゃいますね……。レストランでもミネラルウォーターより安いので、ビールを頼んじゃいます。
古賀:
水より安いの!
ほりべ:
はい。レストランだとビールの方が安いんです。ミネラルウォーターが高いのか、ビールが安いのか……。お得な方で選ぶと、いつもビールになってしまいます。
古賀:
ちょっと調べてみたんですが、ビール税がすごく安いようですね。
ほりべ:
ベルリンは外食の値段が結構手頃な街なんですが、料理の値段が安い分飲み物でまかなう店が多く、飲み物が高いところが結構あります。でもビールだけはあまり高くすると苦情が来るんでしょうか……。
古賀:
たのしい国だな……。ビールへの愛とプライドを感じますね。
古賀:
ビール瓶を集める什器が公園にあるのか……「ふつうのくらし」日本とはやっぱりいろいろ違ってめちゃくちゃ興味深いです!
(次回「おうち」編に続く!)
れんさい企画「ベルリンのふつうのくらし」
登場人物