神職とは
林:
神主ではなく神職って言うんですね。
窪田:
詳しい歴史はわからないんですけど、公式に我々が自分のことは「神職」っていう言い方をしますね。
林:
禰宜(ねぎ)という呼び方も聞きますが。
窪田:
「神職」が「会社員」のような意味だとしたら、禰宜は役職です。副社長ですね
林:
禰宜以外にも役職はあるんですか?
窪田:
権禰宜が一般職員ですかね。権の意味としては権現とか権化の「仮」という意味。あとは出仕、これが見習いの役職。神社によってはこれ以外にも役職があります。
林:
神職には資格がいるんですよね
窪田:
神社本庁が包括する神社の場合は資格がいります。神社本庁が包括宗教法人としてあって、各神社は被包括宗教法人という関係です。
林:
その資格はどこでとるんですか?
窪田:
僕は皇學館大学の神道学専攻科でとりました。大卒であれば1年間の修業で神職の資格が得られるんですよ。
林:
実は窪田さんは10年前に京都でのイベントを手伝ってもらったことがあって、あのときは別の大学に行ってましたよね。
窪田:
京都の大学に行ってました。あのあと学部を卒業して高千穂に移住して隣町のNPOで2年働きました。
高千穂で自分の内なるものを高めるぞっていうような、そういう夢見がちな青年としてのムーブというか。バンドマンになるために東京に行くような感じで。
それからNPOでお金を貯めて、神職の資格を取りに行きました。
林:
伊勢の皇學館大学に。
窪田:
1年勉強しまして、資格を取って高千穂で奉職。
林:
就職じゃなくて奉職なんですね。
林:
この前の記事で突然、坊主になってたじゃないですか。神職は頭を剃るんですか?
窪田:
いや、全くないですね。
窪田:
ただ、何か発作的にしたくなるときがあって。神職の養成学校でも茶髪、眉毛、耳にかかる髪型は駄目と言われたんで、せっかく伊勢での修業だからとはりきって坊主にしてったら先生に怒られました。
坊主で作務衣だとお坊さんにしか見えないから駄目ですみたいなことをいわれて。
林:
みんな気になっているのは、ライターやって良いのかということなんですが。
窪田:
うちの宮司から許可はもらってますが、もうちょっと真面目なものを書いてるイメージかもしれません。
勤務体系
林:
神職は週休2日なんですか。
窪田:
うちは月8回休みですね。ホワイトな職場です。
林:
このまえ出勤が朝6時半といってましたね。
窪田:
季節によって変わるんですけども。夏は朝早めに来る人もいるからそういう人をお出迎えできた方がいいよねという接遇のお話で。おもてなし精神ですね。
林:
確かに、めちゃめちゃ朝早く人が来そう。
窪田:
門はないので24時間お参りはできるんですけど、御朱印とかお守りとかを授与できるように。朝のうちにしか来れないかたもいらっしゃるから。
林:
6時半出社だとすると、終わりは何時ですか。
窪田:
9時間拘束なので3時半です。
林:
神職ってふだん何やってるんだろうって思ってました。
窪田:
スケジュールでいうと、基本は8時に出社なので、8時に神社に行きまして2時間ぐらい掃除ですね。竹ぼうき持って境内中を掃除して。10時にお茶休憩の時間があって、それ終わったらいろいろ。僕の場合は広報と授与品、お守りや御札を担当してるのでメール返したり。
雑誌の掲載依頼が多いので、原稿のPDFで送ってもらって内容確認して。
あとは、参拝者さんの対応ですよね。お守りや御朱印を授与したりですね。ご祈願の希望があれば奉仕することもあります。
お気持ちはいくら払えばいいのか
林:
なにの祈願が多いんですか?
窪田:
縁結びとか…厄除けは多いですよね。厄払いは終わった後、軽く喋るときに、厄がつく年齢というのは仕事とか地域活動の中で大きな役を、役職をいただく大事な時期ですから、気を落とされずにですね頑張ってください的なことを言います。
林:
神社の人そういう事言いそう!いくら払えばいいんですかあれは?
窪田:
決まってるところが多いですね。3,000円、5,000円、10,000円とか。決まった料金を納めればそれに応じたてっかひんがいただけますよっていう。
林:
てっかひん?
窪田:
撤下品、神様にお供えしたもののお下がりですね。お土産のようなものです。お札がついたりお守りがついたり。金額が決まってない神社は、お気持ちでいいですよっていいます。
林:
その時いくら出せばいいですか、気持ち。
窪田:
お気持ち次第なのですが5000円くらいが一般的ですかね。
林:
宝くじ当たってほしいとか俗っぽい願いでもいいんですか?
窪田:
祈願内容は人それぞれなので良いと思います。ただ、祝詞のなかでサマージャンボ当選しますようにという言い方は僕は避けますね。富が栄えて、より良い生活を築けますようにとかそういう言い方をしますね。
祝詞はやっぱり古い言葉なのでカタカナはあんまり使わないほうがいいかもねみたいなのもあるので。
ただマンションにお住まいの方とかはカタカナが入っちゃいますね。サンヒルズ201号に住まえる田中の太郎にみたいになります。海外で生活してる方だとなんとかストリート、なんとかドライブとか。
林:
しかたない
窪田:
地鎮祭とか、そういうことがあれば外に派遣されて、お祭りを行います。
林:
御朱印は書くんですか?
窪田:
書きます。神社によっては書道の先生を呼んでみんなで習うみたいなのがあったりするそうですね。
林:
御朱印帳がないと書いてもらえないんですか?
窪田:
そうです、うちは御朱印帳を預かって書いてるので。でも持ってない人には紙に書きます。神社によっては御朱印帳持ってない人には、スタンプ感覚であげるものじゃないからってお断りすることがありますね。
林:
おお
窪田:
そこはやっぱり、守るべきところとして。あと、転売の人がいるから。
お祭りとは
林:
お祭りありますよね。えーと大嘗祭とか?
窪田:
あれは宮中祭祀ですね。ただ神社では毎年行う祭がいっぱい決まってて、新穀感謝のお祭りとか、五穀豊穣を祈る祈年祭とか。
林:
お祭りっていうのは、楽しいお祭りじゃなくて神社の行事としての祭りがあるんだ
窪田:
そうです。明治天皇の誕生日に明治祭というのもあったりするんですけど。
林:
村祭りみたいな一般の人を呼ぶお祭もあるんですか。
窪田:
あります。例祭がだいたいそれに当たります。その神社特有の、由緒のある定められた日に行われるお祭りで、お神輿が出たりとか、地域の人と一体になってやるようなお祭りであることが多いでしょうね。
神社って何に拝んでるのか
林:
子どものころ、神社で中入って、祝詞を上げてもらったことがあるんですけど何があったのか思い出せなくて。御神体のようなものがあるんですか?
窪田:
そうです。社殿のなかに静まってる神様が。御神体のかたちはそれぞれのお宮で形が違うと思うんですが鏡だったり、像だったり。
林:
あるんですねそういうものが。
窪田:
だいたい本殿と拝殿にわかれててご本殿はめったに開かないですね。
林:
そうなんだ
窪田:
大切なお祭りのときにしか開かないし、普通の人は入れないですね。神職でも手軽に入れる場所じゃないですね。
林:
お供物をするのはどこに?
窪田:
うちの場合はご本殿のすぐ前。お社の前ですね。これがその年に1年に1回2回の大きなお祭りとなると、ご本殿の扉を開けて、ご本殿のなかにお供えをするっていう作法があります。
林:
もう全然わかってないんですが。本殿と拝殿があって、例えば僕が厄除けで祝詞をあげてもらうところ、あそこは拝殿?
窪田:
普通の場合は拝殿です。
林:
あそこでじっと見ても御神体はないんですね。
窪田:
何に向かって拝むとははっきり言いにくいのですがご本殿に神様がいらっしゃるので、そのことをイメージしてお参りをするといいと思います。人格神を拝んでいるのに姿形が全くわからないというのは少し不思議ですね。
巫女さんは神職ではない?
林:
巫女さんは神職ではないんですか
窪田:
神職資格を持ってる人が巫女やる場合もゼロじゃないかもしれないですけど基本的には神職とは別ですね。
とりあえずうちのお宮の場合は祝詞を読んだりお祓いするということはしません。
女性神職と巫女は違うというのがポイントかもしれないですね。女性で、巫女じゃない場合もちろんあるので。
林:
巫女さんは接客だけじゃなくて事務的な仕事もあるんですよね。
窪田:
そうです。ずっとパソコンにかじりついてますね。神社の事務は全部パソコンなんで。
林:
繁忙期は?
窪田:
正月とゴールデンウイーク。世の中と一緒ですけど。正月はもちろん初もうでがあって、あとゴールデンウイーク、あとはお盆時期。これは観光・帰省で。
この3つがちょっとみんなで頑張ろうねってなる。
ゴールデンウィークとかお盆時期は人の動きが読めないし、助勤の人もいないから大忙しになります。
林:
じょきん?
窪田:
アルバイトとは言わずに助勤といいますね。
林:
賽銭泥棒っていないんですか。
窪田:
うちの親戚の神社に最近出たのかな。
ちっちゃいお宮、元々さい銭箱を置いてなくて、勝手に小銭とかが積み上がっているところのお金を取ってったみたいな。そのあと自分でさい銭箱みたいなのを作ってましたね。
林:
お賽銭って神社の収入としては大きいんですか
窪田:
メインじゃないでしょうね。お賽銭だけで生活していけないところがほとんどだと思います。常駐の神職がいるような神社だと、ご祈願の初穂料や御守の授与料の割合のほうが大きい。
林:
じゃあ誰かとっていきやがったな、みたいなことはない
窪田:
神様への捧げものをとっていったことに対しての信仰的な面での怒りはありますが、そのせいで生活が成り立たなくなるというようなことはあまり考えられませんね。