ちょっと聞いてよ 2022年11月3日

「高千穂あまてらす鉄道」では物理ボタンを楽しめ

宮崎県の高千穂鉄道は17年前に休止・廃線となった。

電車が走らなくなった現在はオリジナルカートで線路の上を運行するアトラクションを満喫できる。

しかしそれとは別に、旧高千穂駅に展示されている券売機などの機器のボタンを押すのが面白かったので紹介したい。プラスチックの物理ボタンを好きなだけ触れるのだ。
 

1993年生まれ。京都市伏見区出身、宮崎県在住。天性の分からず屋で分かられず屋。ボードゲームと坂口安吾をこよなく愛している。

前の記事:廃線・高千穂鉄道の列車の宿に泊まる

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グランドスーパーカートに乗る

海沿いの建物のような風情

旧高千穂駅で高千穂あまてらす鉄道が運営している「グランドスーパーカート」は、往復約5kmの道のりをオリジナル車両で運行するアトラクションである。

これがグランドスーパーカート。動力はディーゼルエンジン。
運転席には物がたくさん置いてあって田舎に住むおじさんの軽トラのようだ

カートの運転席を見ると殺虫剤が3本も置いてあった。気になったので聞いてみると蚊やハエなんかの小虫が大量発生するときに使うとのこと。運転席から殺虫剤を振りまく絵面を想像するとおもしろい。 

出発進行!かつてと同じ線路を進む

昔の高千穂駅から岩戸駅を通過し、かつて鉄道橋として日本一の高さを誇った高千穂橋梁まで、往復30分の小さな旅である。途中まで運転士がアナウンスしながら走らせる。

「ケータイを外に落としたら取りに行けないので諦めてください」
「今から鉄橋に向かいます。高所恐怖症の方はしばらく我慢してください」 

山との距離が近い
高さ105m、高千穂橋梁からの景色(強風時には見られない場合もある)
見えづらいがシャボン玉が飛んでいる
なぜなら運転士がサービスでシャボン玉を出しているから

風に舞っていくシャボン玉を見て、同乗していた人たちは「映える映える」と喜んでいた。僕も場の空気にのまれてカメラを構えた。 

トンネルではイルミネーションが天井を彩っていた
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理想のボタンが押し放題!

線路の上を歩いて展示室に向かう

旧高千穂駅構内に残る車庫の一室は展示室になっていて、実際に使われていた券売機などの機器類を見学することできる。 

隅のほうにポツンとあるので立ち寄る人は少ない
中には雑然と計器類が並んでいる
券売機。ただ置いてあるだけで展示の説明書きなどは一切ない

僕はボタンを押すのが好きだ。
それもシリコンゴム製じゃなくて、昔ながらのプラスチック製の硬いのがいい。押し込みは深ければ深いほどよくて、部品がカシュッとこすれるような音がするやつが最高だ。押したあとの反応や電気の流れには関心がない。ボタンがあって、ただ押せて、ただ音がなる。それだけでいい。

最近は利便性の問題なのかどこもかしこもタッチパネルになっているのが悔やまれる。利便や合理を突き詰めた先に本当の幸せはあるのか。

とくにこれが良い

理想のボタンが押し放題!

この券売機の「まとめ買い」ボタンは理想に適う最高のものだった。バネの反発が軽いわりに深くまで押し込めるのと、古典的なカチカチ音が鳴るのがいい。しかし古典的ってなんのことだ。

目が輝いている!

まとめ買いボタンの下にある切符購入ボタンにはあまり心が動かなかった。押し込みきったときに音がならないくせして反発も重かったのだ。

そういうわけでまとめ買いボタンだけを押しまくった。切符100枚はゆうに買えるくらいくらい押した。ここでは切符代も払わなくていい。心の底から楽しかった。 

なにかわからないけど
レバーが触れるからよし!

日頃触る機会がなかったので意識から漏れていたが、レバーもいい。力を入れてグイッと引く運動がおもしろい。動物としてのプリミティブな衝動を突き動かされている感じがする。

風速監視装置や
レインピュータも触れる
なにかしらの制御盤だけど
発々起動ボタンも押し心地がよかった

これら機器類の説明がこの展示室にはまったくないのだ。自発的に調べでもしない限り役割を知ることはできない。そこが逆に押し付けがましくなくて、ただ目の前にあるボタンに集中することが許されているようで居心地がいい。

ボタンを押すのは気持ちいい

物理ボタンを押すことの楽しさをすっかり忘れていた。

今これを書きながらも好みの感触のものを触りたくてウズウズしている。券売機は手に入りそうもないので、手始めに知育玩具の「いたずら1歳やりたい放題」を買おうかどうか迷っている。

ボタンで操作する模擬踏切警報機も構内にある(押し心地は微妙)
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