特集 2022年12月28日

タワマンから逃げる~武蔵小杉のタワマンはどこまで行けば見えなくなるか

多摩川沿いを歩いていると武蔵小杉のタワーマンション群(タワマン)が見える。多摩川をどこまでさかのぼれば見えなくなるのだろう。武蔵小杉のタワマンから逃げる旅が始まる。

1992年三重生まれ、会社員。ゆるくまじめに過ごしています。ものすごく暇なときにへんな曲とへんなゲームを作ります。

前の記事:アメリカ発祥のスポーツ「コーンホール」の魅力に迫る

> 個人サイト ほりげー

武蔵小杉のタワマンは安心する

川崎市中原区に住んでいる。区内を散歩しているとわりとどこからも武蔵小杉のタワマンが見えるので安心する。方角が迷子にならなずにすむのだ。

しかし、同時に「こわい」とも思う。どこに行ってもタワマンが追いかけてくる感覚だ。ときに中原区から離れても追いかけてくる。

逃げども逃げどもタワマンが見える。追いかけてくる。まるで青鬼のようだ。

そこで今回、どこまで行けば武蔵小杉のタワマンから逃げ切れるのかを検証する。バトルフィールドは多摩川だ。多摩川沿いは視界が開けているので、けっこう遠くまでタワマンが追いかけてくる気がする。こっちはタワマンの本気が見たいのだ。

武蔵小杉のタワマンから逃げる旅のルール
  • 多摩川沿いを自転車で上流 (立川方面)に向かう
  • 武蔵小杉のタワマンが見えるギリギリの位置を探す
  • 自転車で通行可能な橋の上も対象範囲とする
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タワマンのふもとからスタート

武蔵小杉のタワマンから逃げる旅。はじまりはもちろん武蔵小杉のタワマンである。 

パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー(左)とパークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー(右)。圧巻である。

まるで筆者がタワマンに住んでいるような言い方だが、筆者はここからだいぶ離れたノーマルマンションに住んでいることを白状しておく。

程なくして 丸子橋へ。

武蔵小杉から一番近い多摩川の橋。ここからずっと多摩川沿いを行きます。

ちなみに自転車はHELLO CYCLINGというレンタル電動自転車である。行った先で自転車を返し、帰りは電車で帰ってくる作戦だ。体力勝負の企画ではないのでできる限り楽させてもらいます…。

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多摩川沿いを楽しもう

ひたすら多摩川沿いを自転車ですすむ。

こんな感じで進んでいきます。©OpenStreetMap

必然的にここからは河川敷の画像が続く。  

このようなのどかな写真ばかりになります。

そこで、この記事の楽しみ方を先に共有しておく。 

★★★★★この記事の楽しみ方★★★★★
① 武蔵小杉のタワマンが見えなくなるのはどこ?(←メインテーマ)
② それはそれとして、多摩川沿いは面白い場所がいっぱい

タワマンが見えなくなるのは記事の最後のほうなので、しばらくは②の「それはそれとして、多摩川沿いは面白い場所がいっぱい」のほうでお楽しみください。

等々力緑地近くの桜並木。春はかなりいい感じの場所。左にちらっと見えるのは社会人野球強豪ENEOS野球部の練習グラウンドだ。
そのすぐ近くにあるのはきれいな園芸。まさかこれが不法占拠だとは…。
タワマンはまだこんなにも近い。母のような安心感。
奥に見えるのは二子玉川のタワマン。多摩川のこの辺りはムサコのタワマンにこたまのタワマンが睨みを利かせ合っているのだ。
突然現れる白くてデカい構造物は等々力大橋(仮称)の橋げた 。2025年度に完成予定だそうだ。

このあたりは多摩川を挟んで神奈川側と東京側の両方に「等々力」「野毛」といった同じ地名がある。度重なる洪水や改修によって多摩川の流れが変わり分断されたのだ。等々力大橋(仮称)は神奈川の等々力・野毛と東京の等々力・野毛を百数十年ぶりに再会させる橋でもある。

…とたいそうなことを書いたが、すぐ近くの第三京浜がその役目を担っているので感動は薄い。

第三京浜道路である多摩川橋。

この第三京浜の近く、東京側の河川敷にはライオンの遊具が埋まっている。つい最近記事にしたのでよかったら見てください。

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ライオンの後ろ、よく見ると武蔵小杉のタワマンが写っている。
二子玉川のタワマンが近づいてきた。

この先、東京側のほうが武蔵小杉のタワマンを見やすいであろう。二子橋を渡り東京側へ移動する。

橋を渡るといったん河川敷から遠ざかり、二子玉川駅のすぐ近くに来た。旧堤防の跡が見える。
アウディーに乗れる自動車学校。プレッシャーがすごい。

 旧堤防にはところどころ、陸閘(りっこう)という切れ込みがある。その切れ込みを通りふたたび川沿いに戻ると、見えた。武蔵小杉のタワマン、久しぶりの再会である。

陸閘越しのタワマン。ずいぶん遠くに来たものだ。
こんなこともあろうかと50倍ズームのコンテジを買っておいた。まだまだくっきり見える。
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二子玉川を過ぎてもまだ見える武蔵小杉のタワマン。©OpenStreetMap

正直、ここまでは想定の範囲内。しかし、ここからは未知の領域。どこまで追いかけてくるのか楽しみだ。 

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調布に行っちゃう

ここからは東京側の堤防の上を自転車で進んでいく。当面の目標は調布(厳密には京王多摩川駅)である。

…と言いつつ、まさか調布までタワマンが追いかけてくるとは思っていない。せいぜい狛江ぐらいだろうとたかをくくっていた。このときは。

タワマンの圧を背後に受けながら。
駒澤大学グラウンド。
なんかかっこいい鉄塔(と武蔵小杉のタワマン)
安全教育センターという警視庁所有のコース。クランクのところにマイクロバスが駐車されているのがテクい。
つづいて警視庁白バイ訓練所。教官の指示がスピーカー越しにここまで聞こえてくる。
何ルド何ックなのだろう…。
和泉自動車教習所。

多摩川沿いは車の練習コースが本当に多い。増水時に沈んでも許容できる広い土地と考えれば車の練習コースはぴったりの使い道だ。もっとも、増水時に車の避難は必要だが。

二ヶ領宿河原堰。ここで水をいったんせき止め、二ヶ領用水として取水し、かつて川崎の農業地帯を支えてきた。現在、老朽化に伴う修繕工事中である。あと全然関係ないけど右のほうに写る川沿いのラブホもエモくていいですね。
さらに進むと蛇行がはげしくて特に利用されていないエリアになった。やっぱり多摩川は自然の物なのだと再認識させられる。
気が付けば狛江に来ていた。奥に見える構造物は多摩川住宅の給水塔だ。「ゲームに出てきそうな給水塔」として当サイトの地主さんが紹介している。
地主さんの記事を読んで筆者も8月にここを訪れた。岡本太郎のアートかと思った。かっこよかった~。この時は電車やバスを乗りついで訪れたので、今日は「こんなところに自転車で来ているなんて!」とゾクゾクする。
多摩川50景のひとつでもある狛江の五本松。(あとの49景については知らないので何景か見逃してるかもしれません。)

そういえばタワマンを見るのを忘れていた。多摩川沿いは面白ポイントが多すぎる。

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まだ武蔵小杉のタワマンは見える。勘弁してくれ。しかし望遠レンズの圧縮効果が強くなってきた。不気味だ。
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場所は和泉多摩川駅京王多摩川駅のちょうど中間あたり。当たり前ですが「多摩川」と名の付く駅ばかりで全然ピンと来ませんね。©OpenStreetMap

いよいよ本格的に調布が近づいてきた。

さらに進むと、河川敷に消防車が並んで訓練をしていた。奥の橋は京王相模原線の橋だ。当面の目標としていた駅にいよいよ着いちゃう。
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消防訓練を見守る武蔵小杉のタワマン。
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これはもう川崎の立山連峰と言ってもいい。
京王多摩川駅のすぐ近くまで来た。©OpenStreetMap

というわけで当面の目標としていた場所に来てもなお、武蔵小杉のタワマンはコンデジのレンズを通じてくっきりと見える。肉眼でもわりと見える。月のようにどこまで行ってもついてくる。こわくなってきた。

1日目の調査はここまでとし、近くの駐輪場に自転車を返却し電車で帰宅した。1日目ということは、2日目があるのだ。 

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2日目。青梅まで行く覚悟

2日目。立川までに終わればいいなと思いつつ、心のどこかで青梅まで行かされる気もしている。その覚悟はできている。

1日目と同じ場所から再開。今日もタワマンが見える。

タワマンからの逃走、2日目が始まった。

よみうりランドだ。その観覧車からは当然タワマンが見えるであろう。
東京競馬場のすぐ近くの是政橋。かっこいい斜張橋だ。
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是政橋から撮影。かなり遠いが、武蔵小杉のタワマンはまだ見える。
ズームしても蜃気楼のようにぼやぼやする。亡霊のようにつきまとうタワマン。
撮影場所はこのあたり。南武線が多摩川を渡るところの近く。東京競馬場のすぐ近くでもある。©OpenStreetMap

しかしこのあたりから「おやっ?」という感じになる。

橋は標高が高く視界も開けるのでタワマン撮影チャンスだ。次は関戸橋か。
関戸橋。あれっ。見えない。右の山に隠れてしまっている。​​​​​

ついに武蔵小杉のタワマンが見えなくなったのだ。別れは突然やってくる。タワマンの急激な弱りっぷりに戸惑いつつ、「でもどうせまたすぐ見えるんでしょ」という気持ちで次の橋へ向かう。

あ、これはマンションのWeb広告でよく見るBrillia Tower聖蹟桜ヶ丘ブルーミングレジデンスだ。こんなところにあったのか~。
府中四谷橋。さあどうだ。

あんなにも武蔵小杉のタワマンから逃げてきたのに、いざいなくなると寂しいものだ。 恋か。

府中四谷橋。武蔵小杉のタワマンは山の向こう。

あの山が邪魔だ。あの山さえなければ見えるのに。 

次の石田大橋はけっこうな高さがある。これなら見えるか?
石田大橋より撮影。いや無理そう。
方角的にこの辺りにあるはずなのだが…。
いっしゅん「おっ」と思ったが、僕の知っている武蔵小杉のタワマンはこんなにもアンテナが大きくない。これはただのマンションだ。

これはもう武蔵小杉のタワマンから完全に逃げ切ったと言っていいでしょう。 対戦ありがとうございました。

結局ほぼ立川まで来た。©OpenStreetMap

というわけで、この記事の楽しみ方①「武蔵小杉のタワマンが見えなくなるのはどこ?」の答えは東京競馬場近くにある是政橋 である。ここまではギリ見える。橋より先に行くともう全く見えなくなる。またひとつ賢くなった。

電車で行く場合は南武線の南多摩駅で降りるとよい。

直線距離で17.5kmの地点。ここより先に行けば逃げ切り成功だ。©OpenStreetMap
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おまけ① 多摩モノレールから武蔵小杉のタワマンは見える?

石橋大橋での撮影から数十分後、 私はカレーを食べていた。

カレー会議室というお店。立川にある。

私は立川にいた。それは多摩モノレールから武蔵小杉のタワマンが見えるのかを調べるためだ。多摩モノレールは途中で多摩川を横断する。モノレールはけっこう高いところにある。であれば、山をこえてタワマンが見えるかもしれない。

多摩モノレール。この先は多摩川。

モノレール車内は混んでいたので、多摩川を横断する手前の駅から撮影することにした。

いや~、だめだ。(奥に見えるビルっぽい建物は武蔵小杉のタワマンではない)

多摩モノレールから武蔵小杉のタワマンは見えない。 それがわかっただけでも大きな収穫だ。

おまけ② 武蔵小杉のタワマンをブロックする山の正体

結局、武蔵小杉のタワマンが最後に見えた場所は是政橋で、以降は山が邪魔でタワマンが見えなかった。

後日、等高線でその山の標高を調べたところ、157mとあった。武蔵小杉のタワマンの最上部が標高153mなので、すっぽり隠してしまっている格好だ。 

そりゃ見えんわ。©OpenStreetMap

この山の正体は多摩サービス補助施設と呼ばれるもので、かつての日本陸軍の多摩弾薬庫だったものが、いまでは米軍横田基地のレクリエーション施設となっている。こんな身近なところに米軍施設があるとは知らなかった。


多摩川という非日常

多摩川沿いには非日常が多く、記事にしやすい。筆者がいままで書いてきた記事の多くで多摩川が登場する。

多摩川の河川敷にひっそりと埋まったライオンの遊具の真相に迫る 

多摩川の土手を自転車で走ると気持ちいい

池を囲んで近距離Zoom飲み会をしたら色んな感情で泣きそうになった

これが本物のたたき台だ!(外でたたき台をたたくシーン)

1日で小学生の夏休みぜんぶやる (外で遊ぶシーン)

今後も多摩川とはうまく付き合っていきたい。

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