新しい飲み会スタイルを試してみよう
コロナ禍になって1年半。一時期流行ったZoom飲みも最近はほとんどしなくなった。早くみんなと会って飲みたい。でも密になるわけにはいかない。
そこで、その両方を叶えるため、近場に集まって少し離れてZoom飲みをすることにした。密じゃないのに会って飲める。夢にまで見た光景だ。(こんな何でもないことが夢になってしまう世の中に対し、もうすでに泣きそうになっている。)
密を避けそれぞれがふぁ~っと集まり、所定の位置に着く。
大声で話せば届く距離だが、周りには多くの親子連れが休日を楽しんでおり、邪魔するわけにはいかない。我々の会話手段はZoomである。
とりあえず乾杯。
とりあえず乾杯だ。直接会って乾杯するのはいつぶりだろう。
りばすと:すごい久しぶりだ。この感じ。
トルー:外でお酒飲むのいいですね。
ほり:乾杯している様子直接見えるかな…。見えた!泣きそう!
もちろん盃を交わすわけではなくZoom越しの乾杯である。しかし、我々は今同じ場所にいる。同じ池を囲んで同じ西日にあたりながら乾杯をしている!しかもギリ見える!うれしい。うれしいけど、果たしてこれが僕たちの描いた未来だっただろうか。近くにいながら盃を交わすこともできない。とてつもないディストピア乾杯ではないか。
どこにいるか探すので盛り上がる
このディストピア飲み会が今後流行ったとして、おそらく定番となるであろう流れがどこにいるのか探すくだりである。
ほり:トルーさん見えた!
トルー:結構近いですよね。
林:おれからも近い。
りばすと:木が邪魔で僕からはトルーさん見えないです。
林:ほりさん、テントだ!
りばすと:テントいいなぁ。
続いて林さんを見てみよう。
ほり:林さん、いるのはわかるんですけれども…
林:ここです。ここです。
ほり:めちゃくちゃ逆光です。
林:望遠メガネ買ったんですよ。
林:これ掛けるとトルーが目の前に見える。
ほり:いいなぁ。
あとはりばすとさん。対角線上だけど見えるかな。
ほり:りばすとさん、手を振ってもらってもいいですか?
りばすと:ここです!ここです!
ほり:あ、居た居た!
りばすと:この時点でもう楽しい。
話そう。
林:Zoom飲みだとずっとモニターを見るのがつらいけど、これは景色が見られていいですね。
りばすと:みんなを直接見られるのが面白い。
ほり:すぐそこにいますからね。
林:他人を見て飲んでるような気分になる。
りばすと:こうして見ると他にもたそがれてる人が結構いますね。
ほり:みんな誰かとZoomしてるかもしれない。
やがて、おつまみ自慢の流れに。
りばすと: 0番から99番まで百種類のおつまみが売ってたんですよ。そのトップバッターがホタルイカ。
トルー:私はローソンの焦がしキャラメルアーモンド。
林:おれは笹かまぼこ。胃に優しいやつ。
このあたりはいつものZoom飲みっぽい。密が許されるなら持参したおつまみを交換し合いたいところだ。
林:これ、トイレに行きたくなったら「荷物見とくよ~」とは言うものの、距離があるから置き引きにあっても誰も助けられないですね。
ほり:文字通り「見る」だけだ。
トルー:でも林さんの位置なら3人で追い込めそうですね。
ほり:後ろが多摩川ですからね。背水の陣だ。
近距離Zoom飲み会だがそこまで近くない。仲間の置き引きをギリ助けられないぐらいの距離感である。
楽器を弾こう。
りばすと:突然ですが、ヴィブラスラップを持ってきました。
トルー:なんですかそれは。
りばすと:鳴らしますね。
ほり:ハンバーグ師匠のやつだ!
りばすと:リコーダーも持ってきたんですよ。
林:なんか吹いてくださいよ。
トルー:いいですね。
りばすと:Zoomだからワイワイってなりますけど、外でひとりでやってると思うと恥ずかしい。
林:これ、イヤホン外すと素に戻りますね。
我々は今、Zoomという仮想空間と河川敷という現実世界の両方にいる。 そして、両方で通じ合っている。楽器を演奏するとZoomの中では恥ずかしくないのに現実世界では恥ずかしいというのは、新たな発見だ。逆のような気もするが、合っている気もする。
ゲームをしよう。
ほり:クソデカQRコード読み取れるかゲーム!
りばすと:絶対に読み取りたい。
ほり:いまからこれを掲げるので、スマホで読み込んでください。見えますか?
りばすと:見えます!たしかにQRコードだ!笑
ほり:あ、風が強い。めくれる。
林:インターネットの外に出ると風があるんですよね。
トルー:「風ってあるなぁ」と思いますよね。
林:…全然読み込まないな。
後から調べたのだが、QRコードはひずみに弱いらしい。紙を貼り合わせるのが雑だったのでそもそも距離関係なくダメだったのかも。
りばすと:僕からは「紙があるなぁ」ぐらいしか分かりませんでした。
ほり:もう1個ゲームを持ってきたんですよ。Tシャツの文字何でしょうクイズ!Tシャツの背中の文字、見えますか?
林:拡大鏡だとすぐわかっちゃう。ズルいかな。
トルー:肉眼だと難しいですね。カメラをズームにしたらわかるかも…。
トルー:ター…ヤジス?発音が難しいですが。
ほり:正解です。
りばすと:見たいなぁ。近くで見たいなぁ。手書きなのか印刷なのか気になるなぁ。
ほり:BEAMSとのコラボグッズです。ちょっと待ってね。今Zoomで見せます。
りばすと:僕のサーティワンTシャツとニアミスだ。
林:りばすとさんのシャツもなんか書いてあるなぁと気になってた。
状況を共有しよう。
近距離Zoom飲み会の面白さとして、同じ空間の状況を共有できるというものがある。
トルー:ほりさんの近くでカップルが撮影してるのが妙に面白い。
ほり:ほんとだ。めちゃくちゃ美人な人だ。
りばすと:いいな~。僕だけ見えないのじれったいな~。
林:トルーの近くの親子、なんか池で捕ってるね。
トルー:魚かなぁ。いや、ちがうなぁ。
ほり:その親子さっき僕の近くでシオカラトンボ捕ってましたよ。
りばすと:少しずつ日が傾いてきましたね。僕のところはもう日陰になりました。
ほり:今度は僕の近くに水着のおばあちゃんが居ます。
りばすと:いいな~。ほりさんの周りだけイベント盛りだくさんだ。
林:いま俺の横を夫婦が柴犬を連れて通って行ったんですけど、かわいいですよ。
ほり:あ、ほんとだ。かわいい!
ほり:りばすとさんが会話に参加できなくてかわいそう。
りばすと:いや、ちょっと待ってください。さっきまでほりさんの近くにいたと思われる「撮影しているカップル」がこっちに来ました。
林:本当だ。さっきのカップルだ~。
まさかの伏線回収に、はっとする。こういうの、普通のリモート飲みだと無いなぁ。
林:いま俺らどれくらいの声でしゃべっているのかわからないな。
りばすと:品のないことをめちゃくちゃ大声で言っている可能性がありますね。自分たちの世界に入りこんじゃう。
飲み会が盛り上がると自分たちの世界に入り浸ってしまう。お風呂で熱唱してしまうような感覚である。気を付けなければ。
こうして近距離Zoom飲み会はお開きとなった。密を避けながらも、ほとんど実際に会ったときのような解像度だった。楽しさとうれしさと切なさがごっちゃになったような変な感情で、よくわからないまま泣きそうになった。
「状況の共有」が重要
Web会議サービスを使えば「離れていてもつながっている」は簡単に実現できるが、普通のリモート飲みでは物足りない。その原因はなんだろう。
今回、近距離Zoom飲み会をして、状況の共有こそがリアルにつながっていることの証としてとても重要だと感じた。同じ柴犬を見たり同じ夕陽を見たりすることで、つながっているなぁと感じた。
逆に言えば、離れていても状況の共有さえできていれば何とかなるのかもしれない。オンラインゲームが流行っているのも状況の共有がしやすいからだろう。
「状況の共有」と「密を避ける」は両立する。他にも実現する方法がないか、今後もしばらく模索したい。