神様にお供えする食物、神饌とは
まずは神饌がどういうものなのかご覧いただこう。
神様をもてなすために最大限の努力を尽くして供する食物、それが神饌である。
神様に供えたあとの「お下がり」を我々人間が食することで更なる力をいただくことができるとされている。これは他の宗教でも見られることだ。
現代の神社において、神饌の並べ方は概ね画一化されているのだ。
古くからの慣例で神社独自の規則を守っているところもあるが、今回は筆者が神職養成機関で教わった一般的なルールを説明する。
神饌の序列について
それでは早速、お供え物の序列を紹介しよう。
基本的にはこれら13品目が神饌として用いられる。1位の米が最も尊いとされていて、13位の水が最下位になる形だ。
米は神様がもたらしたものということが神社信仰の根幹にあるので、上位は米関係が占めている。そのほか品目の補足については後にまわす。
毎日の神饌としてはこの中から数種が選ばれることがほとんどだ。13品目すべてが揃うのはよほど大きな神社の祭典だろう。僕は一度も見たことがない。
また、質問上手な方は「ここにないお供え物、例えばお茶っ葉とかはどうなるの?」と疑問を持つかもしれない。
手元の教科書には「その他の産物を副えて供する場合は神饌の次とする」旨のことが書いてあった。私が知る限りでも実際の運用はそうなっている。返す刀があってよかった。
祭場の位次について
ここから少しややこしいのだが、神饌は祭場の位次という位置関係のルールに従って並べられる。右から順に米、酒、餅…単純に並べるわけではないのだ。
祭場の位次というのは、一般社会でいう上座下座のようなものである。ざっくり説明すると下記のようなルールだ。
・神前に近きを上位、遠くを下位とする
・正中(社殿の正面真ん中)を上位とし、次に向かって右側を上位とし、左側はその次とする
これもややこしいので図で表そう。
上図は9台の神饌を祭場の位次に基づいて並べたときの例である。①が最上位で⑨が最下位となる。
・①の位置は神前に近くて正中線上にあるので最上位。
・②③は神前・正中までの距離が等しい。この場合は向かって右が上位なので②の位置が上位。
この位次に従い「米・酒・餅・海魚・野鳥・海菜・野菜・菓・塩」の9品目を上位から順に並べると以下のようになる。
そういうわけなので、神饌を正しく並べるためには品目の上位下位を覚えるほかに祭場の位次も覚えなければならないのだ。
よし、理解度を深めるために少しだけ発展させよう。上図に「水鳥」を加えるならどこに配置するのがいいだろうか。
水鳥は野鳥より下位で海菜より上位である。全部で神饌は10品目になるので前列と後列で5台ずつ並べると美しいだろう。
それぞれの品目のこと
並べ方を説明したところで、それぞれの品目についての説明と注意点をあげていこう。
まず、米については「和稲(にぎしね、にごしね)」と「荒稲(あらしね)」の2種類がある。和稲は籾殻を取り除いた米、荒稲は籾のままの米である。
米に限らず、神饌として供するときは平べったく盛るよりかは山になるようにしたほうがいい。そのほうが豪華に見えるから。
玄米は籾が取り去られているので和稲に分類されると習った。とはいえ、せっかくなら白米を用意するといいだろう。
酒は日本酒を専用の容器に入れて供えるのが一般的だ。本来なら蓋は取って脇においておく。
たとえ米でできていても焼酎はあまり適さないようである。南九州は土地柄、神前に一升瓶で焼酎が供えられることも多いが、その場合は瓶子に入れず瓶ごと置いて供えるのがいいだろう。梅酒や洋酒等も同様である。