特集 2019年11月25日

焼くと革っぽくなる粘土で革べこを作る

焼くとフェイクレザーになる粘土、革製品が作り放題だ。

ネットで新しい文房具の情報をいろいろ見ていたら、ちょっと面白そうな製品が出ているのに気が付いた。

鉛筆や画材でお馴染みのステッドラーの『フィモレザー』という粘土で、説明によると「オーブンで焼くとフェイクレザーになる」というのだ。粘土を焼くと陶器になる、なら分かるんだけど、フェイクレザー(合成皮革)になるってどういうことか。

よく分からないけど面白そうなので、とりあえず買って試してみることにした。

1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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革粘土、本当に革になるのか

画材屋さんで入手した『フィモレザー』が、こちら。

60g弱の塊で450円+税。最近はオーブンで焼くと固まる樹脂粘土なんかが100均でも買えるので、そういうのと比べるとちょっとお高めな感じ。

ただ、焼くと革っぽくなるというのはかなり珍しいし、それが本当なら弊サイトの他の工作系ライターの人も使いたくなるんじゃないだろうか。

ということで、まずは実験である。

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カラーは全12色。とりあえず一番革っぽく見えそうなナッツ(茶色)を中心に買ってみた。

袋から出してこねてみると、かなり固い。粘土っちゃギリ粘土だな…ぐらいの固さ。粘土の類は手で温めながらこねていると、なんとなーく柔らかくなってくるもんだけど、これはしぶとい。

のばし棒でグイグイ伸ばそうとしても、弾力が強くてなかなか薄くなってくれないのだ。

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しっかり体重をかけて伸していかないと、わりと大変。
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薄くなったところをさらに手であちこちに引っぱり伸ばすと、表面がいっきに革感が出る。

なんとか薄くなったところを手で掴んで、ちょいちょいとさらに引っ張り伸ばしてやると、表面が細かくひび割れて皺(シボ)ができる。これがなかなか革っぽい感じなので、いっきにテンションが上がるのだ。

とはいえ欲張って引っ張りすぎると割れてしまうので、なんとなく革かなー、ぐらいで止めておくのが良さそう。

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焼くときはまず天板にダンボールを置き、さらにティッシュを敷いた上に素材を乗せて焼くと良いそうだ。ティッシュが熱源に触れないように注意。
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焼き上りの見た目はビーフジャーキーっぽい。ぐにぐに丸めたりできるぐらいの柔らかさで、細く伸ばして焼くと革紐も作れる。

それをオーブンに入れたら130℃で30分焼いたのがこちら。

おおー、革……かな? なんかイメージしていたよりは少し固いけど。手触りとしては、ゴム板と皮革の中間ぐらいの雰囲気だろうか。

というか、そもそも焼いてもカチカチに硬化せず、弾力を保ってるというのが面白い。

もちろん焼成後は切ったり貼ったりもできるので、工作素材としてはかなり魅力的である。

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粘土状態・焼き上がり状態ともにカッターナイフなどでサクサク切れて加工しやすい。
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普通の領収書もレザー調カバーをつけるとかっこよくなる。

実際に使ってみた感覚としては、手帳カバーとかふせんケースとか、そういった革小物ぐらいならわりと手軽に作れそう。

これなら完全一体成形で縫い目なしの革ジャンとか作れるぞ!とか思ったが、そもそも革ジャンがそのまま焼けるサイズのオーブンってあまり無いよな。

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『赤べこ』の牛としてのアイデンティティを取り戻す

「焼くとフェイクレザーになる粘土」と聞いて、革ジャンの次に作りたいと思ったのが、会津地方の民芸品にして、弊サイトでもライター乙幡さんの工作でお馴染みの赤べこである。

ほらアレ、べこ(牛)じゃないか。なのに紙の張り子細工で作られているの、アイデンティティ的に揺らぐんじゃないか。

牛なんだから、やっぱり革でできてるのが正しいと思うのだ。いや、今から作るのは牛革じゃなくてフェイクレザー…というかフェイクレザーになる粘土だけど。まぁ紙よりは革だろ、と。

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革べこ、現時点ではほぼ肉巻きおにぎり。

ということで、まずは新聞紙をガチガチに巻いて固めた芯を作り、そこに粘土を貼り付けてつく。

このとき、バーツを複数に分けてしまうと後からくっつけるのが大変(なんせ粘土としてだいぶ固いから)なので、できるだけ大きな塊をうまいことコネコネ成形しながら形を作っていくことにした。

ついでに白と黒の粘土を薄くのばして貼り付けることで、ブチ模様も演出。

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足の裏だけが焼けすぎないよう、ダンボールを敷いて加熱。
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焼き上がったら紙芯を抜く。焼き上がり直後の熱いうちは革がだいぶ柔らかいので、その間にスポッと。

これまでと同様にオーブンで焼き上げて、中の芯を抜いたら胴体は完成だ。

安定性を考えて粘土を厚めに盛って作ったので、さほど柔軟性は無いが、それでも指で押すとある程度の弾力は感じられる。

続いてはまた紙芯を中心に頭を成形して、こちらも焼こう。

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頭と尻尾のパーツを追加焼き。
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焼き上がりを細く切ってクルクル丸めると、革のタッセルになるのだ。これで牛の尻尾のフサフサを表現したい。

一緒に焼いた薄いパーツは、焼き上がったところをきれいにカット。さらに細かく切れ目をいれてクルクルと巻くと革のタッセルになるので、これは尻尾に接着する。
最後に頭を胴体の中に吊したら、革べこの完成だ。

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完成…なんだけど、やや革感が弱いかも。
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尻尾はこんな感じ。これはかわいい。

完成はしたんだけど。いや、実は焼く前からちょっと気付いていたんだけど。

コネコネと成形していく段階で表面を触りすぎちゃって、せっかく革っぽく伸ばした皺が全部きれいに無くなって、やたらとなめらかになってしまったのだ。

おかげで、いまいち革っぽさがない。これ、単なる茶色いべこだな。

ということで、追加でもうひとつ工作。

今度は皺が消えないように慎重に伸ばしてコネコネして、べこに被せていく。で、そのまま焼く。

メーカーのサイトには「焼くのは一回だけ。二度焼きはしないで」的なことが書いてあったが、うーん、まぁやってみるかなー。いちおう焦げ防止で、胴体の露出部分はアルミホイルで包んでおこう。

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焼く前の赤色はウェットな生肉っぽさ。
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赤革ジャンべこ、焼き上がり。

はい、赤い革ジャンを着たべこのできあがり。

本当なら革ジャンは脱着可能にしたかったんだけど、さすがに関節が可動しない牛に脱ぎ着をさせるのは無理だった。

とはいえ、なんとかジャンパーの革っぽさは残せたので、これなら革べこと名乗っていいんじゃないか。

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思ったよりかわいくできたんじゃないかしら。

造形技術がしょぼいので今回はアレな感じだったけど、これ、器用な人が使ったら「革製品の3Dプリンター」的な使い方ができると思う。

人形の革ジャンや革つなぎとか、そういうハンドメイド系にも良さそうなので、ぜひお試しあれ。


今回、実はちゃんと脱ぎ履きできる革ブーツも革ジャンとセットで作っていた。ただ、懲りすぎてきちんとソールまで作っちゃったもんだから、やたらと厚底になってしまったのだ。

結果、履かせると後肢だけが高くなりすぎておかしなことになるので、残念ながら無かったことに。

とはいえかわいくて勿体ないので、最後に写真だけでも載せておきます。ひづめ型のべこブーツ。

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ブーツというか足袋というか。
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