奄美大島の鉄板ツアー「金作原」
奄美大島といえば世界自然遺産にも登録された雄大な自然を堪能するアクティビティが観光の目玉だ。島の大部分を占める森林の奥で流れ落ちる滝を目指してトレイルしたり、生い茂るマングローブの間をカヌーで探索したり、天然記念物の黒いウサギ「アマミノクロウサギ」を探すナイトサファリなど、いろいろある中でも有名なのが「金作原原生林ツアー」である。

原生林というからには手付かずに近い状態で保たれている林で、亜熱帯植物が生い茂り、クロウサギだけでなく、ルリカケスやアマミイシカワガエルなど希少な生物が生息している。
島の随一の繁華街である名瀬(なぜ)から車で30分ほどでわりとさっくり行けるが現在は貴重な自然を守るために保護区となっており、奄美群島エコツーリズム推進協議会が認定したプロのガイド同伴でなければ入ることはできない。認定ガイドと回るツアーに参加する必要があるのだ。

これだけ奄美大島へ来ているにもかかわらず、ハブ探しに没頭してこのザ・奄美ともいうべきスポットに足を踏み入れていないことに気づいた。8年かかったか。
Deep Amamiと金作原へ
で、この夏、ついにツアーに申込み、金作原原生林をぶらぶらすることとなった。
案内してくれるのは「Deep Amami」という屋号で、その名の通りいわゆる観光ツアーとは一味違った深掘りなアクティビティを主催する認定ガイドの越間茂雄(こしましげお)さんだ。

3分で絶命しそうな8月の炎天下だったが森に入ると嘘のように涼しくなる。茂りに茂った草木のおかげで日が当たらないのだ。



―― 原生林というけれど、他の森とのわかりやすい違いってなんでしょう?いつもハブ探しに入っている林道となんか違うのだけれどそれが何なのかがよくわからない。
「木の太さが違いますよね。奄美大島は土地の約7割が森だけど、多くが二次林といって人によって伐採されて再生した林になっています。だから樹齢が30年〜40年の若い木が多いんだけれど、金作原原生林は人の手があまり入っていなくて(全く手つかずではない)、大きい古木がたくさん生えています」

「奄美はシイの木、カシの木、いわゆるドングリの島だと思ってもらえればわかりやすいですね。スダジイ、マテバシイ、アマミアラカシ、オキナワウラジロガシ、こういった木が奄美や徳之島の森を作ってるといっても過言ではないです」
―― 奄美の森というとパンフレットとかでヒカゲへゴの葉っぱがぶわーっと茂っているビジュアルが多くて、それが秘境感を出してるなと思ったりしたんですが。

「もうすぐヒカゲヘゴのポイントに着きますよ。はい、ここで見上げてみてください」

―― あ、そうそうこんな感じ!こういうのがずっと続いてると思ってました。
「パンフレットとかで使われるのはだいたいここで撮った写真ですね。でも、ヒカゲヘゴに森全体が覆われているかというとそんなことはない。ヒカゲヘゴは名前がややこしいんだけど、日光が大好きな植物で、日が当たるところで成長していきます」

「だからこの深い森だと、がけ崩れとかがあって日光をふさぐ木がなくなったところに群生するんですね。つまりヒカゲヘゴがたくさん見えるのはそういった限られたところです。この画像で見るとよくわかります」

「さっき言ったように奄美の森はシイやカシの木が多くて、もこもこっとして見えます。ブロッコリーのような森ってよく言われますね」
―― なるほど、逆にそんな中でヒカゲヘゴが集中してると、ここでなんかあったな、ともなるんですね。
そんなのピーターラビットじゃん
「太い木があるので樹洞(木の中にできる空洞)にルリカケスが巣を作ったりします。この前はケナガネズミがひょこっと顔を出してすすーっと降りてきました」

―― ええ、そんなピーターラビットみたいなことがあるんですね。
希少生物が木の穴からひょっこり顔を出す、そんな優しい世界がここにはあるのだ。
「向こうに木があるでしょ、アマミイシカワガエルが顔を出してますよ」
越間さんが道から10mほど奥に立っている木を指差す。木には細長い 穴が空いていた。


「夜に活動するんだけど、昼間はああいった樹洞に好んで入ってボーッとしていますね」

2011年に沖縄に分布する種(オキナワイシカワガエル)と分けられてアマミイシカワガエルとなった。
―― はじめてこのカエルを見たのはキャンプ場の和式便器の中だったんですけど、あれ樹洞っぽかったんですかね......。
「他に奄美固有種のオットンガエルやアマミハナサキガエルが見られます。アマミハナサキガエルは夜は地上でエサを待ち構えているけど、昼間は一段高いところにいてやっぱりボーッとしています」


10cmぐらいになる大型のカエルで力強い足を持ち、脅威のジャンプ力を見せる。
初めて奄美大島を訪れた夜、ハブを探して真っ暗な林道を歩いていたら後方からビターン!ビターン!と路面を蹴るような音が段々大きくなってきてギョッとしたら真横を大きなアマミハナサキガエルが狂ったような連続ジャンプで追い抜いて薮に飛び込んでいったのだった。

「昼は一段高いところにいる」のだがそこは木や岩とは限らない。
