特集 2022年1月15日

遺跡から平成建築まで、古いもの好きライターが語る「古いものの面白さ」

デイリーポータルZでは料理、工作、などいろんなジャンルの記事を掲載していますが、そのうち人気ジャンルの一つが「古いもの」。建築物であったり遺跡であったり町並みであったり、とにかく古く歴史あるものを愛でております。

今回は50人ほどの執筆陣の中でも屈指の古いもの好き、木村岳人さんと山田窓さんに、古いものの良さについて聞きました。

インタビュアーは編集部・石川です。

インターネットにラブとコメディを振りまく、たのしいよみものサイトです。

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ベッドタウンから生まれた古いもの好き

石川:
お二人は直接やり取りするのは初めてですよね?簡単に自己紹介お願いしてもいいですか。

木村:
私はもともと旅行が好きで、東南アジアとかあっちこっち行ってる間にいつのまにか古いモノが好きになりました。
今では国内をカブとかでうろうろしてます。城とか町並みとか見て周ってます。
このままおじいさん趣味を極めたいと思っている所存です。

石川:
木村さんは昔から文体がおじいちゃんだと編集部で評判ですね。

木村:
編集部に言われて初めておじいさん趣味だと気づきました。

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「潮が引くと現れる800年前の港の遺跡」より。当時20代。この若さでこの文はなかなか出てこない。
このインタビュー中にも妙におじいちゃん口調になる場面があるのでご注目ください

石川:
あはは。山田窓さんもどうぞ。

山田:
1年ちょっとDPZで書かせてもらっている山田窓といいます。
木村さんの記事を読んで育ったような世代といいますか…(笑)
大学が京都だったので、寺社を回ったりしているうちに自然と古いものが好きになりました。

石川:
木村チルドレンですね。

山田:
木村さんの記事は、個人サイトの方も含めてほとんど読んでいます!

木村:
恐縮です。

山田:
以前に京都の大学の建築の記事を書かれていたとき、ちょうど京都で大学生だったのでリアルタイムで読みましたね。こんなこと書きたいな~と漠然と思っていました。

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2011年の記事「京都では学校建築を見るべきだ」より、龍谷大学。石造りに見えるが擬洋風建築で、実は木造。

木村:
いいなー京都。
京都の大学建築はホント素晴らしいものが多いですよ。神社仏閣だけじゃぁなく、学校建築を目的にツアーしてもいいくらいだと思います。

身近に古いモノがある環境で暮らせたのは素晴らしいことですよ。わたしなんぞ郊外のベッドタウンで身近に古いモノがほとんどなく、古いモノが好きだと気付けたのは大人になってからだったので。

山田:
僕も出身は神奈川県の相模原市です(笑)

木村:
おぉ、わりとご近所ですね!

山田:
だから木村さんのこちらの記事の地元愛と言うか、地元への距離感がすごくわかる気がします

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「あなたは綾瀬市を知っていますか?」。綾瀬出身の木村さんが地元の見どころを紹介する記事。​​​​​​いわく「開発も進んできた。でもやっぱり垢抜けてはいない。そんな田舎とベッドタウンの狭間に揺れる、綾瀬市」

木村:
身近からなんとかネタをひり出してるだけですが(笑)

石川:
懐かしい記事がどんどん出てくる。
かなり読み込んでますね。

古いものに対するコンプレックス

石川:
窓さんは京都いかれる前はそれほど古いものには興味なかったんですか?

山田:
全然なかったですね~。
ベッドタウンで、古い商店街なんかもないような土地柄でしたので
むしろ歴史あるものへのコンプレックスみたいなものがあるかもしれません。

木村:
わかるかも。

石川:
コンプレックスってどういうことですか?

木村:
私の場合、学生の頃は新しいモノの方が良いというような感覚がありましたが、それは身近に古いモノがなかったことゆえの、古いモノに対するコンプレックスの裏返しだったのかもしれません。

石川:
こじらせだったんだ。窓さんは?

山田:
歴史の浅いところで生まれ育ったので、古いものに接すると必要以上に文化の香りを感じてしまうというか…

石川:
なるほど。
でも感受性が高いということだから、いいことだと思いますよ。

木村:
土地にある文化の香りを敏感にかぎ取れるというのは、実に素晴らしいと思います。
ここには古いモノがありそうだというセンサーとして役立つのではないでしょうか。
…と、どうしても文化財巡りの視点で考えてしまいます。

山田:
精進します…(笑)

石川:
見方を変えると、そういうところで生まれ育ったからこそ古いものの良さがわかって好きになった、みたいな

木村:
私は完全にそのパターンですね。日本にも古いモノがあるらしいと知って、まず鎌倉に行きましたが、本当に古いモノだらけでビックリしました。

石川:
あはは、「日本にも古いモノがあるらしいと知って」。
海外が先だったんですね

木村:
学生時代に一ヶ月で東南アジアを周ったのですが、アユタヤにアンコールワットに、歴史的な町並みに――と、これらが私を開眼させてくれました。
古いモノにぶん殴られた感じです。

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木村さんが2003年に初めて訪れたアンコールワット。「カンボジアの車窓から」より。38度の熱にうなされながら撮ったと書かれている。

石川:
アンコールワットに殴られて開眼。

山田:
すごい!
僕は京都にぶん殴られましたね。

石川:
きっかけになった建物ってありますか?

山田:
京都といいながら、奈良の興福寺や唐招提寺かな…(笑)

木村:
いや奈良すごいですもん。

山田:
奈良はやばいですよね

木村:
意外とと京都は室町時代以前に遡るものが多くないですが、奈良は凄い古いモノが凄い密度で残ってますから。さすがは南都というくらいで。

山田:
(↑の木村さんと同時に)京都って度重なる戦乱で室町時代より古いものって案外少ないんです。

石川:
着眼点が同じだ。

山田:
奈良は天平文化(奈良時代)の香りがするんですよね。中国・唐にまで通じているような…

木村:
京都は広い範囲に文化財が散らばっているので、奈良の方がまとまっていて周りやすいというのもあります。

山田:
興福寺の国宝館とか凄い密度でまとまっていますよね

木村:
興福寺は国宝多すぎですよ(笑)

山田:
ほんと、多すぎてめまいがします(笑)

木村:
唐招提寺の天平感もホント素晴らしいです。

山田:
おおらかで、のびやかで、唐招提寺の金堂が一番好きな古建築です

木村:
唐招提寺の金堂! 前面が吹き放ちになってるのがいいですね!

石川:
天平感ってどういう感じなんですか?

木村:
平安時代のものは落ち着いた和建築ですが、天平の建築は異国情緒が残ってるというか。個人的な印象ですが。

石川:
あーなるほど。
「和風」が確立する前ってことですね。
その代表格が唐招提寺ですか?

木村:
あと現存する法隆寺夢殿は天平のものなので、それとかも。

山田:
夢殿もいいですよね~
東大寺の大仏殿も今は江戸時代の再建したものですが、最初に建てられたのは奈良時代のもので。そういうダイナミックさ、スケールの大きさがありますね。

石川:
なるほどー

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人が気づいてない「古さ」を見出したい

石川:
古いものをめぐる一番の面白さって何ですか?

山田:
僕は文化財にまだなっていないものの中にも古いものを見出したいというか…
未来の文化財を探すつもりで、平成初期の建物をみたりしますね

木村:
平成初期の都市計画とか記事にされてますものね!

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「ハイテク通り、テクノガーデン…30年前の未来都市・幕張新都心が懐かしくもカッコいい」より。幕張新都心の街びらきは平成元年!

山田:
すでに木村さんが、ほとんどすべての文化財を網羅されているので…(笑)

石川:
あはは、狩り尽くされてるんだ

山田:
隙間産業的な気持ちでやっています。

木村:
私は逆に文化財ありきになっちゃってるので、築50年以上のものばかり。

石川:
平成くらいだと守備範囲外ですか?

木村:
文化財として評価されるのがおおむね50年なので、現在は昭和前期くらいまでが守備範囲でしょうか。
中期も入ってるか。

石川:
文化財もけっこう迫ってきてますね、平成に。
このペースだと20年後には平成に達しますね。

山田:
高度経済成長期の建築なども入ってきますか?

木村:
この間、代々木競技場が重要文化財になりましたので、それが最新という感じでしょうか。

山田:
なったんですね!知らなかった。

石川:
でも平成に達したらそこはもう山田窓さんが唾つけてるから。

木村:
私はより古い方向へと行くしかなくなります(笑)

山田:
でも、何が残って文化財になるかは正直わからないですね。

石川:
やっぱり、人が気づいてない「古さ」を新しく自分が見出したいっていう気持ちがある?

山田:
そうですね、古さを先取りしたいというか…
冒頭で話したコンプレックスが何か裏で作用しているのかもしれません。

石川:
木村さんはそういう気持ちあります?

木村:
その町の代表的な建築を見て、50年後、100年後に文化財になるだろうな、とかは思います。というかそういう建物が増えてほしいです。

山田:
残って欲しい建物、多すぎますよね。

木村:
山田さんが記事にされている東京都立大学とかは100年後まで残っていれば絶対文化財ですよ。

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「東京都立大学は、平成初期の雰囲気を色濃く残す未来の文化遺産だ」より。東京都立大学南大沢キャンパス内のアーケード。

山田:
大学は比較的残りやすいかもしれないですね。

木村:
うーん、どうだろう。現代建築は割と軽視されやすいですし。コンクリの補修とか大変ですし。現に昭和中期の建築とかどんどんなくなっていってるみたいですし。
すべての年代の代表的な建築が残ってほしいなぁとは思います。

石川:
木村さんはじゃあ自分がいち早く見出したいっていうよりは、残ってほしいなあという、なんというか親心的な感じですかね。
実際平成の建物とか年下だし。

 

ロマンを浴びて育っています

石川:
こんどは木村さんの、古いものの面白さって何ですか?

木村:
単純にロマンですね。これまで自分が生きてきた年月よりも遥かに長い間あり続けているという存在にロマンを感じます。

石川:
そうするとやっぱり古ければ古いほどいいですか?

木村:
最初はそういう傾向ありましたが、時代は流れゆくものなので、古い建物や遺跡から時のうつろいを感じたいですね。
ぶっちゃけ全部の時代のものが好きです。

石川:
博愛だ。
山田窓さんもロマン感じます?

山田:
ほんとロマンですね!
僕は最初は古い仏像や建築が好きだったんですが、木村さんの記事を読むうちに縄文時代から近代化遺産まで、ロマンが広がりました。

木村:
わお

石川:
やはり木村チルドレンですね

山田:
木村さんのロマンを浴びて育っています

石川:
ありがとうございました。
同じ古いものが好きなお二人ですがけっこう楽しみ方は違うんだなっていうのと、とはいえ影響関係があって面白いなと思いました。サイト長く続けてみるものですね。

木村:
私の所業が人様に影響を与えることができていたとは感無量です。
実は私もすでに山田さんから影響を受けています。古代遺跡みたいな児童公園の記事です。

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山田窓さん「東京都文京区には古代遺跡みたいな児童公園がある」より。文京区の元町公園。

木村:
あの記事を読んで、そういえば文化財になった公園の遊具があったなと思いだして、先月名古屋の「クジラ噴水」の記事を書かせていただきました。

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木村さんの『約100年前の「クジラ噴水」が味わい深い~後藤鍬五郎の作品巡り』より。名古屋市南区にある道徳公園。

石川:
おー、素晴らしい流れ

山田:
そうだったんですね! クジラ噴水の記事、遊具にもこんなに古いものがあるんだ!と興奮しました。

木村:
文化財になっていないレトロ公園は完全に私の守備範囲外だったので、凄く感銘を受けました。

石川:
今後ともお互い影響しあってデイリーの古いもの部門を支えていただけると幸いです!

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木村岳人さんが選ぶ山田窓さんの「古いもの」記事3選

鎌倉が好きならば、古都・逗子へも行こう

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鎌倉と葉山の間にあって、その影に隠れがちな逗子を見事にフィーチャーしていて素晴らしいです。名越切通は本当に凄い迫力なので必見ですよ。

 

 

東京都文京区には古代遺跡みたいな児童公園がある

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鷲の象とか大階段のたたずまいが昭和初期感たっぷりで素晴らしいです。良い公園があるモンだなぁと感嘆しました。

 

 

東京都立大学は、平成初期の雰囲気を色濃く残す未来の文化遺産だ

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平成初期に整備された大学と町の雰囲気が素晴らしいです。町全体の景観にまとまりがあって、平成の文化的景観として丸ごと保護してもらいたいくらいです。

 

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山田窓さんが選ぶ木村岳人さんの「古いもの」記事3選

重要文化的景観に見る日本各地の原風景

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重要文化的景観という「風景」の文化財を圧倒的取材量で紹介されている記事です。 他の文化財に比べるとまだまだマイナーで地味な印象のあった重要文化的景観ですが、綺麗な風景写真の数々とともにこんなに派手でうま味たっぷりの文化財だったんだ!と印象が変わりました。

 

 

 

東京都心の蔵探し

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蔵っていいですよね〜。 この記事を読んで、身近な古いものめぐりに最適だなと思いました! 主屋は建て替えても蔵は残したままってことが結構あるし、耐火性が高いので、空襲の写真なんかにも焼け残る蔵がちらほら見えます。 多摩地域には結構な数の蔵が残っていますが、都心で見つけると嬉しさも大きいだろうなと思います。

 

 

東京都内、江戸時代の墓巡り

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京都で古いもの好きになってから東京に戻ってきて、最初は博物館にしか古いものないじゃん…!と勘違いしていたのですが、住んでいるうちにだんだんと見えてくるようになりました。 まだ墓巡りにはたどり着けていないのですが、この記事を読むとめちゃくちゃ楽しそうですね。そのうちハマりそうです。
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