我が家にはピコがあった
ずいぶん昔の記憶だが、我が家にはピコがあった。黄色い本体、青いシート、絵本型のカセット。ああ懐かしい。懐かしすぎる。自分の走馬灯の冒頭3秒ぐらいは、きっとピコが流れるだろう。
絵本をタッチペンで押して操作する。タブレットでのタッチペン操作もできる。絵本のページをめくると画面が切り替わり、物語が進む。今思うとけっこうハイテクだな……。
妹とよくピコで遊んだ覚えがある。それをもう一度したい。しかし、実家では断捨離がすすんでいてピコなんてとうに捨てられている。頼みの綱はメルカリだ。
Wikipediaによればピコの出荷台数は340万台だそうだ。当時多くの家庭にピコがあった。それが時を経てこうしてメルカリに出品されている。
ここに出品されているピコで遊んだキッズたちは現在、アラサーだろう。自分と同世代だ。
定年を迎えた親たちが「家の片付けでもするか」と思い押入れの奥にピコを見つけ、孫を連れて帰省してきた娘に手伝ってもらいながらメルカリに出品する――そんな光景が目に浮かぶ。出品のひとつひとつに家庭があり、子の成長がある。ああ泣けてくる。検索しただけなのに。
生きてるピコを見つける
メルカリに並ぶピコを一つ一つ見ると、いずれも「動作確認出来ないのでジャンク品です」といった記載があることに気づいた。それもそのはず、ピコをテレビにつなげるにはRCAの差込口が必要なのだが、近ごろのテレビには搭載されていない。「動作確認したくてもできない」が実情だろう。
そのうえ、運よくRCAの差込口があったとしても、カセットの端子が酸化していると動作しない。もちろん中には本当に故障したピコもあるだろう。メルカリには生きてるピコと死んでるピコが混じっている。玉石混合。そこからどうやって生きてるピコを選ぶか。
……雰囲気から嗅ぎ分けるしかない。
結局、箱入りで保存状態が良さそうなピコを選んだ。温かい家庭で大切に扱われたであろうピコ。たのむ、動いてくれ。
妹を呼ぶ
ピコの本体とカセットがそろった。妹を呼び、当時を思い出しながらピコで遊ぶことにした。
妹:めっちゃ楽しみ~!
動いてくれ
ピコを動かすための準備は万全だ。まず、自宅のテレビにはRCA差込口がないので、変換器を買った。
これでひとまずピコとテレビがつながった。頼む、電源ON!
ぜんぜんつかないが、一瞬画面が暗くなるのが期待を持たせてくれる。正直ここまでは想定済みだ。カセットの端子が酸化していると接続不良になるのだ。その場合は接点復活剤を吹きかけるといいらしい。
ま、そもそも本体が壊れていた場合はどうしようもないのですが。
さきほど「準備は万全」と言ったが、これでダメなら策は無いです。頼む!動いてくれ!!
画面に映ったのはガビガビのプーさん。当時ブラウン管のテレビでは全く気にならなかったが、こんなにもガビガビだとは。でもそんなことよりも、圧倒的に懐かしさが勝つ。
妹:……すごくない?
筆者:泣きそう
プーさんのピコであそぶ
最初にあそぶのはプーさんのカセット。プーさんがはちみつを求めて仲間を訪ね回るという物語だ。
絵本に書かれた物をタッチペンで押すと、ミニゲームが始まる。
筆者:鏡をペンで押して
妹:なんでちゃんと覚えてるの?笑
妹: はははははは
当たり判定がやたら厳しくて手こずったが、何とかクリア。
妹:うれしい~!
筆者:これ覚えてる?
妹:正直全然覚えてない!
筆者と妹は3歳離れている。ピコのプーさんは筆者がギリ思い出せるレベルの記憶なので、妹が覚えているはずがない。でも僕はめちゃくちゃ懐かしい。
妹:あ、死んだんやけど
筆者:普通に難しいよね
ピコのアクションゲームは子供向けとは思えないほど難しい。大人になったいまでも普通に失敗する。
妹:あぶない!
筆者:なんとか耐えたね
プー氏の残機を減らしながらも無事クリア。
妹:伝え方が独特~!
その後も数々のミニゲームをクリアし、いよいよ最後のページへ。
これは「ピコあるある」なのだが、絵本の最後はお絵描きになっていることが多い。子供の創造力を育むのがねらいであろう。
妹:やった~!お絵描き!最後のお絵描きだけは覚えてる。
妹:たのし……
妹:あ、操作まちがえた。戻したい
筆者:Ctrl+Z無いのよ
妹:全部消すしかないのか……笑
なんだかんだで夢中になり、プーさんだけで40分も遊んでいた。
筆者:いや~、楽しいゲーム。すばらしい
妹:名作……!(パチパチ)