謎解き×〇〇〇
謎解きが流行っているなかで、世の謎解きクリエイターたちは謎解きに何かを掛け合わせることで新たな価値を出している。その成功例が今回の 謎解き×服屋 だと思う。次は何と掛け合わせるのだろう。
謎解き×レストラン?
謎解き×旅行?
謎解き×スポーツ?
……調べてみたら、どれもすでにあった。うげ~。みんな考えているな。
謎解きをしないと服が買えない服屋がある。謎解き好きとしては行くしかない。
まずはこの服を見てほしい。
実はこれは謎解きになっていて、その答えはアルファベット4文字の言葉になる。今回訪れる「トキキル」というアパレルブランドの服だ。
このように、トキキルでは服のデザインが謎解きになっており、その謎を解いた者だけがその服を買うことができる。当サイトで数々の謎解き記事を書いてきた筆者としてはぜひとも挑戦したい。
トキキルは毎日やっているわけではなく、定期的に開催されるイベントだ。この日は南青山で開催される。
地下にはいっぱい人がいた。壁にかかっている服はぜんぶ謎解きの服だ。
解かないと着られないので、みんな謎解きを頑張っている。服屋なのにみんな真剣な表情で考え込んでいて、なんだか異様な光景だ。
実際どんな服なのだろう。謎を解いてみよう。
難易度Sと聞くとめちゃくちゃ難しそうに感じるが、実際はその逆。トキキルでは、難易度がS、M、L、… のように服のサイズの形式で表される。つまり難易度Sとは初級だ。
これが謎解きになっているという。わかる?私はわかった。ポイントは地球が5つに分けられているということだ。
実は、それぞれに1つの文字が当てはまる。つまり、地球を5文字に変換する必要がある。
(シンキングタイムスタート)
((?))
(シンキングタイム終わり)
記事執筆にあたりネタバレ許可をもらったので、特別に大ヒントを出すと、地球 = earthである。
しかし、earthが答えではない。earthをさらに読み替える必要がある。飛行機に注目し、通った順番に文字を拾うと…
heart になる。 答えはheartだ。パチパチ。そしてこのシャツ、もうひとつすごいのが……
心臓(=heart) の位置に描かれているのである。オシャレ……。さすがに出来過ぎである。この謎が完成したとき、現場は大いに盛り上がったことだろう。
続いても難易度Sの服に挑戦する。
シンプルだ。パワポで書けそうなデザイン。
あ~わかったかも。言葉を当てはめればいいのか。こうして、こうして、こうだ。
今後会う友人に「ねー、この服謎解きになってるんだけど、解いてみて」などと会話することができる。天気の話より遥かに盛り上がるだろう。
続いて、難易度M(中級)の服。
とっかかりが見つからず、スタッフにヒントを聞いた。まずは英語をひらがな3文字に変換してみましょうとのこと。ということは、「ちしき」だ。この並び……。あっ。そういうことか~!すっきり!
(皆さんも考えてみてください。解けないとモヤっとしますよね。そういえば昔IQサプリという番組で伊東四朗が「モヤっとボール」を浴びる恒例のくだりがありましたよね。あれ好きだったな……。)
店の奥には、オモコロのダ・ヴィンチ・恐山さんの制作した服がディスプレイされていた。
一見、2種類のTシャツが飾られているように見えるが、実は同じTシャツの前面と背面を展示しているのだ。
まずは前面の謎を解いてみる。描かれたフォルダの数を数えると26個ある。26といえば、アルファベットだ。
あとは、模様の書かれたフォルダに対応する文字を拾うと……、IとPとZ。う~ん、IPZ、IZP、PIZ、 …PIZZA?ピッツァ?
これは謎解きあるあるなのだが、一度間違った答えにたどり着いてしまうと、もうそのことしか考えられなくなる。
スタッフに助けを求めたところ、「紐が左から出てる順に読む」とのこと。ということは…
ZIP。なるほど、フォルダが圧縮されてZIPになっていたのか。
red and black。赤と黒。それが何を指すのかわからない。スタッフによれば、ここからは背面の謎も使うらしい。
前面には26個のフォルダが書かれていた。背面には大きな1つのフォルダが描かれているのだが、これがもし、黒いフォルダが26個あるのだとしたら……?
つまり、この服には赤いフォルダ26個と黒いフォルダ26個、合わせて52個のフォルダが描かれていることになる。赤と黒、合わせて52個のものといえば……?
ここからはぜひ自分で解いて確かめてみてほしい。謎を解くための情報はすべてそろっている。しかし、謎を解いていくと、ここからさらに3段階ぐらい展開があるのだ。
いったいどうやって作っているんだ。たった2枚のイラストと「red and black」という文言だけでこんなにもストーリーがあるなんて、すごい。私は衝撃を受けた。
最後にもうひとつ紹介したい。あきらかにあやしい展示を見つけたのだ。
「この服は都合により上の階に移動しました。」
普通の服屋さんだったら気にも留めないだろう。しかし、ここは謎解きの店だ。こんなの絶対にあやしい。
とりあえず上の階に来た。 そこにあったのは……
おそるおそる近づいてみる。いまにも動き出しそうでこわい。
絶対にさわりたくないけど、さわらないと解けないのかもしれない。初めてオモチャにさわる犬のように、警戒心MAXで触れてみた。なにも起きなかった。
よく見ると、指紋のような物にパターンがあることに気が付く。同じ指紋には同じ文字が入るのだろう。血が怖くて脳が受け付けないので、シンプルにしてみた。
しかし、ここでしばらく詰まってしまった。
またしてもスタッフに助けを求めたところ、それぞれの言葉はローマ字で表現されるとのこと。つまり、当てはまる文字はアルファベットで、完成する言葉は日本語だ。
2つの言葉がイコールでつながっているのだが、その上にもう1つイコールがあるのも気になる。上のイコールの先にあるのは…
この状況をローマ字で4文字と6文字の言葉にすればよいのか。ということは…
ふつう、謎が解けるとスッキリするはずなのに、これは解いても爽快感がない。重苦しい。こんな謎解きは初めてだ。
トキキル終了後、制作者の梨さんがXで「着たら死ぬ服」と表現していた。
確かにそうだ。ぞくぞくする……。
いや~、面白かった。服のデザインとして自然に馴染むような、シンプルで洗練された謎が多かった。それにしても「謎解きの服屋」だなんて、どうやったら思いつくのだろう。24時間365日謎解きのことを考えているにちがいない。
縁あってトキキル店長のみーぬさんに話を聞くことができた。
――どのような経緯でトキキルが生まれたのでしょうか?
みーぬ:暗号みたいなデザインの服を着ている人ってたまにいますよね。あれが実際に解けたら面白いと思い、そのような服を作って「解けないと着られない服屋」として売ることにしました。それがトキキルのはじまりです。
―― "earth" の服が完成したとき、現場は盛り上がりましたか?
みーぬ:とてつもなく盛り上がりました。じつはトキキルの中でも最初に作った服です。普通の服に擬態したデザインになっており、「このコンセプトは行ける!」と確信しました。
――やっぱり盛り上がったのですね。素人ながらにも完成度高いと思っていました。
――トキキルの運営でたいへんな点はありますか?
みーぬ:トキキルは服屋のセオリーから逆張りしている部分が多いため、お客さんにとって負担が大きい服屋になっています。
まず、店内の混雑を避けるためチケット制にしているのですが、そのチケットは3分で完売することもあり、そもそもトキキルに来店すること自体が難しいです。
そのうえ、来店できて好きなデザインの服が見つかったとしても、解けない場合は買えません。そこで、ヒントを希望の方にはスタッフが手厚くお助けすることにしています。
――私もヒントをたくさんもらって何とか解けました。逆に、トキキルの運営で喜びを感じられる点はありますか?
みーぬ:お客さんがひらめく瞬間に立ち会えることです。そして、そのお客さんが再び来店の際にトキキルの服を着て遊びに来てくれることです。
また、トキキルの服を着て友人に出題する方もいるみたいです。服を買う前は解答者だったのが、購入後は出題者側に回れるというのもトキキルの醍醐味ですね。
――私も買った服を友人に出題したいです!
――最後にメッセージはありますか?
みーぬ: トキキルを知ると、日常ですれ違う服にも謎が仕掛けられているように感じて、世の中がいつもよりちょっと面白く見えるようになるかもしれません。気づいていないだけであなたの周りにも解ける服は存在するかもしれません。
謎解きが流行っているなかで、世の謎解きクリエイターたちは謎解きに何かを掛け合わせることで新たな価値を出している。その成功例が今回の 謎解き×服屋 だと思う。次は何と掛け合わせるのだろう。
謎解き×レストラン?
謎解き×旅行?
謎解き×スポーツ?
……調べてみたら、どれもすでにあった。うげ~。みんな考えているな。
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