パンデミックがやってきた
というわけで順調に大きく育ってきたヘボコン。しかし2020年、ここで初めての逆風が吹く。ヘボコンに限らず世のイベントすべてが大ダメージを受けた、新型コロナである。
対面イベントは開催できなくなり、海外から「ヘボコンやるよ~」という報もぱったり届かなくなった。でも、ここで歩みを止めてはいけない……というほどのたいそうな志でもないのだが、とはいえ何もしないとつまらないのでコロナ対策版のイベントをいろいろ模索した。
これはBesiegeという、攻城兵器を作るゲームを使って行った。物理シミュレーションで動くので構造が弱いとちゃんと崩れ、バランスが悪いとちゃんと倒れる。まさにヘボコンにうってつけのゲーム。
火器OK、爆発物OK、大量放水OKとバーチャルならではの派手な試合が展開された。
↑ダイジェスト映像はこちら
そして、ヘボコンのスピンアウト企画「レベルの低いルーブ・ゴールドバーグ・マシンコンテスト」。いわゆるピタゴラ装置の低レベル版を募集する動画コンテストである。
空き缶を捨てる装置です#レベルの低いルーブ・ゴールドバーグ・マシンコンテスト pic.twitter.com/f0PiAisa34
— 小林竜太 (@CH1H160) September 4, 2021
こういう「技術はないけど味だけがある」作品ばかり集まって最高だった。レポートはこちら。
ギリギリ対面イベントができたタイミングでやったのはこれ。
対戦するロボットの間に棒をつけて、ソーシャルディスタンス(という言葉もいまや懐かしい)を保って戦うヘボコンだ。試合前にロボットの検温も行った。
これは Stupid Robot Fighting League というニュージーランドで開催されていたイベントの日本大会。上のGIFを心の目で見ると、廃材でできた人型ロボットが格闘しているのがわかると思う。
日本人参加者8人がZoomごしにロボットをデザイン、試合は現地の人により行われるという形で開催した。
イベントができないと言いながら、なんだかんだで普段以上にいろいろやっていた数年間だった。
その後、通常のヘボコンを再開したのは2022年のことである。
ロボコンとの交流
ちょうど同時期に、ロボコンとの交流も始まった。
そもそもヘボコンはロボコンのパロディとして始まったイベントだ。初回ヘボコンにはそれを聞きつけたNHKのロボコン事務局の人が見に来てくれて、みんなで「せーの、すみませんでした!」と謝ることから開幕した。
それから5年後、2019年にEテレのサイエンスゼロという科学番組にゲストとして出ることになった。
収録に行くと、不自然に後半がスカスカした台本が渡された。
フリートークでしのげということか…?と思ってドキドキしていたら、僕の台本に書かれていないパートで「ロボコンの父」と呼ばれるロボコンの創始者・森政弘先生がVTRで登場。森先生にヘボコンの映像を見せてコメントで褒められる、という展開になった。めちゃめちゃ嬉しかったがめちゃめちゃ冷や汗もかいた。
このあと高専ロボコンを取材させてもらったりなんやかんやあって、いまは毎年高専ロボコンの審査員に呼んでもらって、授賞式では「アイデア倒れ賞」というぴったりの賞を担当させてもらっている。
また、6/29に開催するヘボコン2024にもゲストとして、出場校の東京高専から、高専ロボコン出場機をベースとしたロボットが出てくれる予定だ。
いろいろ関わらせていただきありがたいばかりだが、そもそもパロディイベントの主催者なのでずっと恐縮している。
世界にかけられた呪いを解くこと
最後にちょっとだけ真面目な話をする。
繰り返すがヘボコンは完全に冗談で始めたイベントだったのだけど、長年続けていくうちに、今ではそれなりに社会的意義のあることだと思うようになった。
ヘボコンのサイトにある「ヘボコンとは」には、こう書いてある。
ヘボいロボットは、すぐトラブルを起こします。赤ちゃんは歩くのに失敗しても腕が外れたりしませんが、ヘボいロボットはすぐ腕が外れます。タイヤは加速しすぎて機体が場外に飛び出しますし、モーターはすぐに動かなくなります。こうしたハプニングの数々が、ヘボコンをよりエキサイティングなものにしてくれます。
ロボットがうまく動かないことは、一般的にはよくないことと捉えられる。でもヘボコンにおいてはそれこそが愛おしく、素晴らしいのだ。
この世には「うまくできていることこそが価値である」という呪いがかかっていて、それが創作をする人の足をすくませる。その呪いを解きたい、というのが僕の目標となった。
また、これはものづくりに限ったことではない。同ページから、もうひとつ引用する。
ヘボコンの最終目的は「ヘボを楽しむ人生を手に入れる」ことです。
(中略)
ロボット作り以外にも自分が不得意な活動に挑戦してみましょう。いままではうまくできなくて苛立つだけだった作業でも、いまなら自分自身のヘボさを楽しむことができるはずです。失敗することや、うまくできないこと、その愉快さをあなたは知っているわけですから。
よくできていないものや下手であることにも、すべて価値がある。
それは「失敗は成功のもと」みたいな、いつか成功に通じるから価値があると言っているのではない。失敗そのものに単体で、個性や面白さがあり、それはすなわち価値であると思うのだ。
ヘボコンが提唱する価値観は、人生すべてを豊かにするものだと信じている。
まもなく開催!ヘボコン2024
とシリアスな締め方をしてしまいましたが、ヘボコンは10年経っても変わらず「できの悪いロボットが巻き起こすハプニングを見て笑う」冗談のイベントでもあります!全く進歩しないまま迎えた10周年、ぜひ会場で見届けてください。
ヘボコン2024 概要
2024/6/29(土)
17:30 OPEN 18:00 START(出場者は16:00集合)
@東京カルチャーカルチャー(渋谷)
>>>くわしい告知はこちらから<<<
- 終了後、会場にて10周年記念打ち上げあり(チケット後日発売)
スポンサーの皆さま
ヘボコン2024は下記の皆さまのご協賛により開催しております。
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タミヤがお届けする、小学生向けの「モノづくりとプログラミングのスクール」です!
全国各地で、たくさんの小学生が「自分のアイデアを形に」しています。
将来、その生徒達が、ヘボコンで大活躍する日を楽しみにしています!
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