特集 2024年6月12日

ヘボコン10年のあゆみ

派生イベント

世界に広がるうちにいろんな派生イベントができていった。

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ローマで開催された「ヘボレース」

ヘボコンには遠隔操作や自動操縦を使用すると罰せられる「ハイテクノロジーペナルティ」というルールがあるが、ヘボレースではタイヤを使用すると罰せられる「適切な車輪ペナルティ」があったと聞いている。

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成安工芸大学の学祭で開催された、障害物ヘボコンの一幕

ルンバ3台の合間を縫ってゴールを目指さなければならない。

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こちらもローマのイベント、ヘボコン・ペイントエディション

スプラトゥーンに影響されたイベント。各ロボットはインクを搭載して、相手にぶちまけることができる。優勝すると下に敷いてある紙がもらえる(いらない…!)。

そんな動きに感化されて、僕自身もいろいろ派生板を作った。

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ニコニコ超会議で開催した「ギガヘボコン」

通常ヘボコンは50cm以下のサイズ制限があるが、それを1m以上とし、さらに人が乗ってよいことにした。

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Maker Faire Tokyoで開催した「ミニヘボコン」

家からロボットを持ち込むのではなく、その場で作るのが特徴のミニ大会。

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Maker Faire Tokyo事務局と共同で、アメリカでもミニヘボコンを開催した
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佐久市こども未来館のプラネタリウムで開催した​​​​​「宇宙ヘボコン」

プラネタリウムの星空に重ねて試合風景をプロジェクションすることで、宇宙で戦っている気分になるというスペースオペラ。

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「空ヘボコン」

透明のアクリル板の上で戦うことで、実質的な空中戦を実現した。このアクリル板が24キロあって、終わった後どうしようかと思っていたら、出場者の一人が持ち帰ってくれた。何に使ったんだろう、いまだに謎である。 

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和室でちゃぶ台の上で戦う、「和ヘボコン」

和ヘボコンに至ってはもはや「変化をつけたい」という気持ちだけが独走してしまい、何が狙いなのかわからない。

しかしそもそもヘボコン自体が何が狙いなのかよくわからないイベントなので、この方向性は正しい気もする。

こうしてさまざまに姿を変え、ヘボコンは不必要にそのバリエーションを広げていった。

 

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世界大会の開催

時系列はかなりさかのぼるが、ヘボコンが世界に広がっていった2016年、当時デイリーポータルZの運営元であったニフティが30周年を迎えた。

デイリーで何か記念イベントをやれないかという話があり、ヘボコンの世界大会はどうですかと提案した。全く予想外のことだったが、通った。言ってみるものである。

ヘボコン・ワールドチャンピオンシップの開催である。

↑世界大会のダイジェスト

予算が付いたので同時通訳を入れた。通訳者がフラッと来てくれるのかと思いきや、一緒に機材をモリモリ積んだワゴンが搬入されてきて驚いた。

出場者は直接来てくれた人、リモートで参加してくれた人、日本人と共作でロボットを作ってくれた人、などなどいろいろ含めると11カ国のチーム。

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大熱狂の会場のようす

自分が作ったイベントの世界大会を開催する。これは明らかに人生のクライマックスという感じがして、翌日は交通事故等で運命的な死を迎えてしまわないように注意した。

本大会で個人的に印象に残っているのは、ゲスト審査員。電子工作をやる人はみんな使っているArduino(アルデュイーノ)という部品があり、その開発者であるデイビッド・クァティレス氏が来てくれたのだ。

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左がデイビッド氏、右が筆者

彼は「ヘボコンでArduinoなんて使っちゃだめだ、知性が宿ってしまうから」という名言を残してくれた。今でもヘボコンにおいてArduinoは電子部品としてではなく、もっぱら硬い基板を生かして装甲として使われている。

 

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プログラミング教育の時代が

ヘボコンは、「動かないロボットかわいい!勝手に転ぶのおもしれ~」という感じで始めたイベントである。でもなんでこんなにも世界中で開催されたかというと、意外にも教育上よいとされたからである。


STEAM教育という言葉があるけれども、要は子供にものづくりやサイエンスを教えたい、でも「見本と同じように作る」ロボットワークショップは自由度が低いし、かといって自由に作ると「うまくできなくてつまらない」になりがち。その需要にすっぽりはまったのが、「うまくできなくてオッケー、むしろそれがウェルカム!」なヘボコンだったのだ。

なかでも、スペインのムルシア州では中学生は全員必修でヘボコンに参加することになったと聞いている。

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いくらなんでも大規模すぎる

まさか自分の冗談が異国の地で義務教育になるとは。今も続いているかは知らない。

他にもいろんな国の主催者から写真が送られてきた。

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ハワイの小学生が教室でみんなでヘボコンのビデオを見ている
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これはオランダの図書館だか科学館だかで開催されたヘボコンのワークショップ

海外のヘボコンのだいたい半分は、教育機関やものづくりスペースにより、教育やものづくりのきっかけづくりとして行われた。

残りの半分はエンタメ勢。「日本発の変なイベントがあるからアニメイベントで一緒にやろうぜ」「テック系の変なイベントがあるからハッカーイベントで開催しようぜ」、「酒場で酒飲みながらロボットいじるイベントやろうぜ」という感じ。

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ヘボコン紹介資料より

で、そうこうしているうちに、2020年に日本でもプログラミング教育が必修化。

それに乗っかって小学校の授業でヘボコンをやらせてもらったりもした。

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工作が牛乳パックで作られていると「日本」という感じがする
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ロボットバトルだ、つってるのにトントン相撲に発展していくのも日本ならではなのだろうか
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こちらにもArduinoに引きつづき、Micro:bit(という教育用の電子部品)​教育財団のCEO・ガレスさん(右)と、アジア統括のワリスさん(左)が来てくれた

「なぜ冗談のイベントが教育に……」という感じであるが、そうかと思えばさらに思わぬ方向に広がった例もある。

当サイトのライターの爲房さんが結婚式でヘボコンを開催してくれた。

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爲房さん本人による記事「結婚式でヘボコンをやったらめでたさが倍増した」より

毎年ヘボコンを自主開催してくれている西千葉工作室というものづくりスペースでは、婚活イベントであるヘボコン街コンが開催された。

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ロボットに「キュン!」という効果音がついている

小中学校の教育から配偶者との出会い、そして結婚までヘボコンが進出してしまった。あとはもう葬式しかないと思う。ヘボコン葬を真剣に考え始めたい。

⏩ パンデミックがやってきた

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