ヘボコン・2つのルーツ
ヘボコンはロボットを作る技術のない人たちが集まってロボット相撲をしようとするイベントである。ところが勘で作られたロボットはうまく動かないので予想外のハプニングが続出する。そんなヘボコンが生まれたきっかけはこうだ。
僕は2007年から当サイト、デイリーポータルZの編集をしている。ライターさんたちが日々送ってくれる原稿の中で、ひときわ好きなタイプの記事があった。
こういう「工作しようとしたんだけど結局できてない」系の記事である。他のメディアにはあまり載らないタイプの記事だと思う。
作品の拙さがまずかわいいし、記事には作者がうまくいかなくて焦る様子や、さいご開き直ってこれで良しとする様子が克明に描かれているのも良い。合法的に人の挫折が楽しめるコンテンツである。
工作の失敗作は面白いことに気づき、そういうのをもっとたくさん見たいと思って、開催したのがヘボコンだ。
……というのが、ヘボコンのルーツその①。メディアに取材を受けて、始めたきっかけをきかれたときはいつもこれを答えている。
しかし実はヘボコンにはもうひとつの源流がある。それがこれ。
女性ファッション誌のリンネル。デイリーポータルZで工作をしているライターに取材したいという依頼があり、大北くん、小堀さん、そして僕の3人がインタビューを受けたのだ。
このときに編集の方が考えた「DIYギャグ」というフレーズを僕がいたく気に入ってしまい、Facebooグループ「DIYギャグ研究」(※)を設立。
※現在はヘボコンのグループとしても使用。みんな入ってね
「ヘボコン」という名前はここで小堀さんにより提唱された。
というわけでヘボコンの源流には女性誌、しかもファッション誌の存在があったのである。10周年を機に改めて取材してほしいし、なんならちゃんと動かないロボットを付録につけてくれないだろうか。
5人のつもりが70人
このあと僕は個人ブログでヘボコンの参加者を募集。当時は公民館で5~6人でやるつもりだったのだがうっかりバズってしまい、応募が70通くらい来たのでデイリーポータルZのイベントに切り替えた。言い方は悪いが「会社の金&ハコで大規模にやる」作戦である。
イベントはめちゃくちゃ盛り上がった。ダイジェストで箇条書きにする。
- ロボットが作れずキャンセルが相次ぐ
- 電車にロボットを忘れた出場者がそのまま飲みに行ってしまう
- 作戦が浅はかなため、作戦通りの試合展開になっても普通に負ける
- 小学生 VS 大人の熱い戦い
- アダルトグッズを6連装したロボット
- 優勝者は「大人げなかった」と恐縮
- 位置エネルギーエンジン(電源を搭載せず坂を転がる)の発明
で、そのようすを大北くんにダイジェスト映像にまとめてもらったところ(上に貼った動画だ)、ヘボコンは第18回文化庁メディア芸術祭の審査委員会推薦作品に選ばれた。
ヘボコン、世界へ
するとどうなったか。海外の大手メディアにめちゃめちゃ取り上げられたのだ。
そしたら世界中から「俺もやりたいんだけど」というメールがどっさり来て、英語のできない僕は毎晩泣きながら英作文して返信したのを覚えている。機械翻訳が今ほど優秀じゃなかった時代の話。
これではあかん!ということでドキュメントを作って、英訳して配った。コンセプト説明から開催の手引き、ルールブックにくわえ、試合開始のブザー音などもセットにした。
そうするといちいち個別に英作文の対応をしなくてよくなって、さらに有志により勝手に中国語やスペイン語など各国語版が増えていき、ますますヘボコンは世界に広がっていった。
というわけで以下は、翌年2015年に開催されたヘボコンのリストである。
翌年にもう管理しきれなくて数えるのをやめたが、少なくとも25カ国以上、南極以外の全大陸で開催された実績がある。
また、こうして世界に広がっていくうえで技術革新もあった。
ヘボコンの土俵は正式には50cm×100cmの木の板を使用することになっているが、ローマの主催者がテープで雑に囲って土俵を作ることを発明した。
これをいまでも「ローマ式土俵」と呼び、小規模会場で身軽に開催したいときに重宝している。
……というわけで記事は次ページに続きますが、ここでいったん、6/29に開催されるヘボコン2024のスポンサー紹介です。
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