特集 2024年6月12日

ヘボコン10年のあゆみ

2014年に、冗談のつもりでヘボコンというイベントを始めた。そしたらめちゃくちゃに面白かった。1回で終わらせるのはもったいない…!と思って何度かやっていたら、いつのまにかライフワークみたいになっている。

そんなヘボコンの10年を振り返らせてほしい。

インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変わった音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。
『雑に作る ―電子工作で好きなものを作る近道集』(共著)がオライリーから出ました!

前の記事:技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)2024、6/29(土)開催!出場者募集中

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ヘボコン・2つのルーツ

ヘボコンはロボットを作る技術のない人たちが集まってロボット相撲をしようとするイベントである。ところが勘で作られたロボットはうまく動かないので予想外のハプニングが続出する。そんなヘボコンが生まれたきっかけはこうだ。

僕は2007年から当サイト、デイリーポータルZの編集をしている。ライターさんたちが日々送ってくれる原稿の中で、ひときわ好きなタイプの記事があった。

爆走!自走式スチロールカッター2.gif
小柳さんの「爆走!自走式スチロールカッター」より。土台の線に沿って走り、上の発泡スチロール板を同じ形に切る想定であった。全然できてない
機械で練った水あめが、こんなにおいしいなんて.gif
機械で練った水あめが、こんなにおいしいなんて…」より、水あめを練るマシン。動きがぎこちなすぎる上にそもそも練れる量が少なすぎる

こういう「工作しようとしたんだけど結局できてない」系の記事である。他のメディアにはあまり載らないタイプの記事だと思う。

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かくいう僕も失敗工作がいくつかある。これは先端が回転して麺を自動で送り出してくれる箸。回転軸がずれており、麵がビッチビチに暴れる箸になった。「0.2秒でラーメンがすすれる箸」より。

作品の拙さがまずかわいいし、記事には作者がうまくいかなくて焦る様子や、さいご開き直ってこれで良しとする様子が克明に描かれているのも良い。合法的に人の挫折が楽しめるコンテンツである。

工作の失敗作は面白いことに気づき、そういうのをもっとたくさん見たいと思って、開催したのがヘボコンだ。

 

……というのが、ヘボコンのルーツその①。メディアに取材を受けて、始めたきっかけをきかれたときはいつもこれを答えている。

しかし実はヘボコンにはもうひとつの源流がある。それがこれ。

リンネル.jpg
リンネル 2014年5月号(宝島社)

女性ファッション誌のリンネル。デイリーポータルZで工作をしているライターに取材したいという依頼があり、大北くん、小堀さん、そして僕の3人がインタビューを受けたのだ。

リンネル2.jpg
『リンネル男子の活動ルポ~わざわざ作るから面白い!「工作男子」のDIYギャグ』

このときに編集の方が考えた「DIYギャグ」というフレーズを僕がいたく気に入ってしまい、Facebooグループ「DIYギャグ研究」(※)を設立。

※現在はヘボコンのグループとしても使用。みんな入ってね

「ヘボコン」という名前はここで小堀さんにより提唱された。

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「ヘボコン」命名の瞬間

というわけでヘボコンの源流には女性誌、しかもファッション誌の存在があったのである。10周年を機に改めて取材してほしいし、なんならちゃんと動かないロボットを付録につけてくれないだろうか。

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5人のつもりが70人

このあと僕は個人ブログでヘボコンの参加者を募集。当時は公民館で5~6人でやるつもりだったのだがうっかりバズってしまい、応募が70通くらい来たのでデイリーポータルZのイベントに切り替えた。言い方は悪いが「会社の金&ハコで大規模にやる」作戦である。

イベントはめちゃくちゃ盛り上がった。ダイジェストで箇条書きにする。

  • ロボットが作れずキャンセルが相次ぐ
  • 電車にロボットを忘れた出場者がそのまま飲みに行ってしまう
  • 作戦が浅はかなため、作戦通りの試合展開になっても普通に負ける
  • 小学生 VS 大人の熱い戦い
  • アダルトグッズを6連装したロボット
  • 優勝者は「大人げなかった」と恐縮
  • 位置エネルギーエンジン(電源を搭載せず坂を転がる)の発明

で、そのようすを大北くんにダイジェスト映像にまとめてもらったところ(上に貼った動画だ)、ヘボコンは第18回文化庁メディア芸術祭の審査委員会推薦作品に選ばれた。

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まさかの文化庁のお墨付きである
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ヘボコン、世界へ

するとどうなったか。海外の大手メディアにめちゃめちゃ取り上げられたのだ。

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これはごく一部。左から、IEEE学会のメディア「IEEE Spectrum」、米国版ギズモード、右はベトナムのオタクカルチャー情報メディア

そしたら世界中から「俺もやりたいんだけど」というメールがどっさり来て、英語のできない僕は毎晩泣きながら英作文して返信したのを覚えている。機械翻訳が今ほど優秀じゃなかった時代の話。

これではあかん!ということでドキュメントを作って、英訳して配った。コンセプト説明から開催の手引き、ルールブックにくわえ、試合開始のブザー音などもセットにした。

そうするといちいち個別に英作文の対応をしなくてよくなって、さらに有志により勝手に中国語やスペイン語など各国語版が増えていき、ますますヘボコンは世界に広がっていった。

というわけで以下は、翌年2015年に開催されたヘボコンのリストである。

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長い。毎週末以上のペースで開催されている。

翌年にもう管理しきれなくて数えるのをやめたが、少なくとも25カ国以上、南極以外の全大陸で開催された実績がある。

また、こうして世界に広がっていくうえで技術革新もあった。
ヘボコンの土俵は正式には50cm×100cmの木の板を使用することになっているが、ローマの主催者がテープで雑に囲って土俵を作ることを発明した。

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貼り方も雑

これをいまでも「ローマ式土俵」と呼び、小規模会場で身軽に開催したいときに重宝している。

……というわけで記事は次ページに続きますが、ここでいったん、6/29に開催されるヘボコン2024のスポンサー紹介です。

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ヘボコン2024 スポンサー紹介

 

ヘボコン2024は下記の皆さまのご協賛により開催しております。

ゴールドスポンサー

 

接着剤メーカーのセメダイン株式会社です!今年もヘボコニスト皆様の「つくる」たのしさを、「つける」ことでお手伝いできれば嬉しいです。うまく組み立てられなかったら、とりあえず接着しちゃいましょう! 

 

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電子工作用モジュールウェブショップ、スイッチサイエンスです!当社は、さまざまな分野の科学する人に貢献することを目指して、電子回路モジュールの設計・製造・国内外仕入・販売をしています。つけてると何かかっこよく見える部品も売ってます☆

 

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タミヤがお届けする、小学生向けの「モノづくりとプログラミングのスクール」です!
全国各地で、たくさんの小学生が「自分のアイデアを形に」しています。
将来、その生徒達が、ヘボコンで大活躍する日を楽しみにしています!

 

「PCBGOGO」は中国・深センの基板製造&部品実装メーカーです。世界中の10万人以上のお客様に高品質なプリント基板と実装サービスを提供しています。
モノづくりで未来への橋を架け、PCBGOGOとともに、新しい発想を生み出しましょう!

 

 

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