特集 2023年11月30日

かつて東京の中心にあった「半蔵門ダム」のダムカレーを作るプロジェクト

皇居の千鳥ヶ淵とかは実はダムである、というのは聞いたことがあった。そこで、じゃあダムカレーを作ろう、と考えている人たちがいるという。開発のようすを追った。

1976年茨城県生まれ。地図好き。好きな川跡は藍染川です。(動画インタビュー)

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ダムカレーとは

「半蔵門ダムカレー」の前に、まずダムカレーとは何かを説明しなければいけない。

ダムカレーとは、ダムをモチーフにしたカレーのことである。そのまんまだ。

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浦山ダム(埼玉県)のダムカレーの例

主にダムの近くのレストランで提供されていて、そのダムにちなんだ構造をいろんな食材で再現している。基本的にはごはんがダム、カレーのルーが貯水池を表している。

たとえばアーチのみごとな八木沢ダム(群馬県)の場合は、
ダムカレーのアーチもみごとだ

こんなふうにその地のダムにちなんだ工夫がされている。そんなダムカレーが今では全国各地に広がっているという。

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半蔵門ダムカレーを作る

そんななか、皇居にある半蔵門のお濠にもダムカレーを作ろうという企画が持ち上がった。

奥に見えるのが門としての半蔵門

皇居のこの濠はじつは由緒正しいダムなのだが、その話はいったん後回しにする。

その前にそんなことを言い出したのが誰なのかを紹介したい。

大道寺 覚さん

いっぱい写っているが、真ん中の人である。ニシムラ精密地形模型という会社の社長であり、地図バー「M」のオーナーでもある大道寺さん。

ブラタモリ「阿蘇」の回で使われた模型

大道寺さんは地形模型の専門家で、NHKの番組に模型を提供したりしている。その技術で精密なダムカレーを作り、地図バーでメニューとして出そう、ということのようだ。

そこに集まってきたのがダムに詳しい人とカレーに詳しい人たちである。

三橋さゆりさん(右)。カレーの名店『アジャンタ』にて。

まずはダムに詳しい三橋さゆりさん。

前まで国土交通省で川や水の管理をしていた人でありダムカードの企画者だ。詳しいどころの話ではなくガチの専門家だが、ふだんは一緒に街歩きをしてくれる楽しい人である。

桜木ひさえさん(左)

そしてカレーに詳しい桜木ひさえさん。

偏愛東京というサイトで「東京カレー好き」というコミュニティを管理しており、「月30ペースでカレーやビリヤニを食べてます」とのこと。平均的にはカレーを食べない日はない計算だ。

遠藤諭さん

そしてカレーに詳しい遠藤諭さん。

元『月刊アスキー』編集長として有名だがじつはカレーも大好きで「『カレー語辞典』(誠文堂新光社)に名前で項目が立つカレー人間」であるらしい。

そんな彼らを主なメンバーとして半蔵門ダムカレーが作られることになった。

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半蔵門ダムを視察する

まずは対象となる半蔵門ダムを見にいくことになった。なにごともまずは観察からである。

雨にも関わらず現地調査に赴いて議論するメンバーたち。その視線の先にはダム湖がある。

ここがなぜダムなのかを改めて説明しよう。そのためには地形を見るのが早い。

地理院地図より。中心の+のあたりが半蔵門。

標高によって色を塗り分けた地図だ。赤いほど高く、青いほど低い。地図の真ん中が半蔵門だ。

よく見ると下の地図の白い矢印の線に沿って窪みがある。昔はここに川があって、右側の青い一帯(海だった)に流れ込んでいたことが想像できる。

しかしその流れが赤い❌で書いたところであからさまに堰き止められているのが分かると思う。これが江戸時代に作られたダムだ。水をためて水道のための水源としたのだ。

その結果、半蔵門のダムを境にその南北で水面に高低差がある。

半蔵門の周辺を拡大

半蔵門を境に北側の水面が高く(緑)、南側の水面が低くなっている(青)のが分かると思う。これが半蔵門ダムの特徴だ。

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半蔵門の北側の水面はすぐ近くにあるが、

 

南側の水面は遠い。つまり水位が低い。

この水面の高低差はぜひ表現したいということになった。

そしてもう一つの大きな特徴はなんといっても半蔵門である。

半蔵門というといまでは駅名か地名のように感じるが、なんともいっても門なのである。その門を大きめにわかりやすく表現したい。

お堀を渡って半蔵門へ行くための通路は、ダム的にいうと天端(てんば:ダムの一番高いところ)である。そこに小さな松の木のようなものも植わっている。

ここらへんをも含めて再現したいと言い合いながら視察は終わった。

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どうやって実現する?

その後、一同は課題を持ち帰り、社会人らしく資料を共有しあいながら検討を重ねた。

グーグルドライブで共有されたなんらかの資料

検討の一部をここに共有するとこんな感じだ。

(実現案)ドライキーマの石垣、半蔵門の白い部分はカマンベールチーズ?門の本体は角煮?屋根が課題  →お皿の形状を考え、石垣は一旦不要 

まじで仕事の資料みたいな文言である。ダムカレーにかける本気が伝わってくる。その他はこんな感じである。

・上流側(高い方)の水面(ルー)は遠藤さん担当
・下流側(低い方)の水面(ルー)は桜木さん担当
・天端の植栽はパセリを散らして表現する?

立体形状はお皿の3Dスキャンをもとに検討
試作を繰り返して具体化していく

そして試行錯誤を重ねること半年、ついに試食会が開かれることになった。

⏩ どんなカレーになったのか

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