特集 2023年11月30日

かつて東京の中心にあった「半蔵門ダム」のダムカレーを作るプロジェクト

半蔵門ダムはカレーでどう表現されたのか

試食会が開かれたのは、発案者の大道寺さんが持っている赤坂のバーである。

夜の赤坂に光る地図バー「M」の看板

バーといっても「地図バー」というコンセプトであり、室内には立体地図模型が大量に飾られている。

画面右はマンホール蓋に詳しい森本庄治さん。今回は3Dスキャン等を担当した。

この店がいったい何なのかというのは以前記事にしているのでそちらを参照してほしい。が、以前よりも追加された立体模型があり、そういうのは気にならざるを得ない。

何らかの都市の模型

なにこれかっこいいんですけど! はっきり分からないけどなんか港区みを感じる。

「これなんだけど・・」

いっぽうキッチンでは、大道寺さんが何かを取り出していた。

3Dプリントした、半蔵門の地形模型である。この灰色の部分をごはんで表現して、地形を完璧に表現するのはどうかというのだ。 

視察でも確認した地形の特徴がばっちり再現されているが、三人の表情はかんばしくない。

「どうします?」
「うーん」

ちょっとごはんの量が多いかなー」と三橋さんたち。

地形としてはもちろん完璧なのだが、そのまま灰色の部分をぜんぶごはんにすると、とても食べきれない量になってしまうという。

高低差については、お皿の左右に狭い側と広い側を作って同量のルーをかけることで、狭い側のルーが自然と高くなることで表現するのはどうか、ということにいったんなった。

大道寺さんにとっては無念だが、しかしこれが試行錯誤というものである。

ダムカレー施工技術士認定証

キッチンの奥には「ダムカレー施工技術士認定証」が飾られていた。そんなものがあるのか。墨田区本所にある三州家という割烹で認定してくれるらしい(宮島咲さんというダム好きの店主がダムカレーを発明したのだ)。

今回の関係者では、大道寺さん三橋さんを含む計5人が認定されている。全員すごいじゃん。

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具を盛っていく

キッチンにはさまざまな食材がすでに準備されていた。それぞれがダムのどこになるのか、ぼくには一切想像がつかない。

最初のルーが盛られた
パセリを振って天端の植栽を表現していく
門としての半蔵門はゴーダチーズと焼豚で表現

 その他にも順に載せていき、完成した形がこれだ。

半蔵門カレー、いったんの完成バージョン

 それぞれの食材が表しているのはこう。

桜はカリフラワーとでんぶ、石垣は鰯のつみれ、松はベビーリーフで表現した。

実際の景色との対応

桜の枝ぶりがすごくて見づらいが、実際の景色にある松や石垣もちゃんと再現されているのがわかる。

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いよいよ食べてみる

手が足りないから手伝って〜と言いながらみんなの分を作る桜木さんと三橋さん

全員分ができるまでのあいだ、遠藤さんが「冷めちゃうからできた分から食べていいよ〜」とずっと言っていて、そうかやっぱり作る人はあったかいものを食べてほしいよねと思った。

しかし一介の取材者である自分が「じゃあ食べます」とも言えず、遠藤さんの気持ちを思いながら少し泣きそうになり、せめて少しでもできることを手伝ったりした。

そしてぶじ全員分ができたところで記念撮影。いよいよ食べられることになってなぜかほっとした。

完成したカレー

食べた感想は、「本格インドカレーだ!」である。

ダムカレーはいくつかのダムで食べたことがあるが、ほとんどの場合、いわゆる日本風のカレーである。もちろんそれはそれでおいしいのだが、対してこれはすごくインドの味がする。

手前の黄色いカレー(下流側)は桜木さんの担当によるもので「ムングダル」のカレーだそうだ。初耳だが、ダルは豆だからとにかく豆のカレーで、うまいということは分かる。(桜木さんによるとムングダルとは緑豆のことだそうだ。)

左側(上流)は遠藤さんによるひき肉のカレーだ。こちらもインド料理の味がするし、いい香りがする。こんなスパイスの香るダムカレーは初めてだ。(実際はインドでなくスリランカ系のカレーとのこと。)

カレーの味が2種類なのもいい。上流と下流で交互に食べると味の違いがよく分かるし、楽しい。どこかのダムにいってこれが出てきたらびびると思う。

貯水量の目盛りが書かれた「ダムジョッキ」にも平常時最高貯水位までビールが入る
ぱくぱく

どこで食べられるのか?

この半蔵門ダムカレーをこの先どうするかはまだ検討中である。まずは大道寺さんの地図バーでたまに出すようなところから進めていくのかもしれない。

ダムカレーについては、たとえばルーをためた状態でごはんの壁に穴をあけると観光放流になる、みたいな方向の楽しみは見たことがあった。本格インドダムカレーが新しい波になるかもしれない。

取材協力
バー「M」
場所:東京都港区赤坂4-3-11
時間:19時~23時30分、不定休
電話:03-5797-8040

一見シャレみたいに見える企画でも、実際進めるとなるといろんなことを考える必要があってすごく大変だ。

それは経験として知ってはいたが、ダムカレーも同じだとよく分かった。なんせ半蔵門に視察したのが桜の咲く時期で、今はもう冬だ。

本業じゃないところでプロジェクトを組んで、半年以上も取り組むというのは思えば社会人になってからあまりやったことがない。

カレーと関係ない感想になってしまうが、こういうのをもうちょっと自分もやってもいいのかなと思った。

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