去年の9月、ドイツで第一子を出産した。
産まれた当初はふにゃふにゃだった息子も、気づけばもう1歳。出産はもちろん大変だったが、産まれてからも経験したことのないレベルの寝不足で、目まぐるしく過ごした一年だった。でも最近やっと「めっちゃくちゃ大変だったけど面白いことも色々あったな」と思い返せる心の余裕ができて来た。
やっと人間らしい暮らしができるようになってきたところで、ドイツでの出産にまつわる面白かったことを色々まとめてみた。
産後6時間で家に帰される、助産院
今まで子供は病院で産むのが当たり前だと思っていたが、妊娠して初めて自宅出産や助産院での出産という選択肢があることを知った。
ドイツ全国での出産のうち、病院以外での場所の出産率は2%弱。メジャーな選択肢とは言えないが、普通に保険は適応されるし、私の友人でも助産院で出産している人が2人いたので「病院以外でも子供って産めるんだ!」と眼から鱗だった。
助産院で出産した友人に話を聞くと、アットホームな雰囲気でリラックスしてお産に臨めたのがよかったと言っていたのだが、
そう、助産院は入院することができないので、赤ちゃんが生まれたらあとは家に帰るしかないのだ。友人はすぐに家に帰れて嬉しかったそうだが、病院のように出産直後のサポートを受けることができないのでそれなりの覚悟が必要なようだ。
あとは麻酔が使えなかったり、難産の場合は途中で病院に移動しなくてはいけなかったりともちろんデメリットはあるが、担当の助産師と事前に顔合わせできたり、お産の希望を細かく叶えてくれるのが魅力的だ。
ちょっと興味があったので友人が利用した助産院に連絡したら、私の予定日の8月は夏休み中だそうで、あっさり断られてしまった。そういうこともあるのか。
オランダは自宅出産大国
助産院以外にも、自宅出産という選択肢もある。さすがに自分にはちょっと心のハードルが高かったが、自宅で産まれた人が意外と近くにいた。私のドイツ人の夫だ。
兄弟全員自宅出産で臨んでいたなんて。お義母さん、タフすぎる。
そしてさらに、オランダ人の友人たちと話していると、自宅出産で産まれた人、もしくは自宅出産した人が結構いることに気づいた。
調べてみると、オランダはヨーロッパの中でも自宅出産大国らしい。20年ほど前までは自宅出産率がなんと約30%だったそうで、近年その数字は下がってきているとは言え、今でも16%ほどの赤ちゃんが自宅で生まれているので驚きだ。
自宅出産の場合はお産に立ち会ってくれる助産師を見つけて、陣痛が始まったら家に来てもらうそう。助産院と同じく麻酔が使えないなどのマイナス面があるものの、家なので自分の思うようにお産に臨めるのが魅力だそう。
いやいや、それでもみんなメンタルが強すぎでないか。
痛みに強いと勘違いされるアジア人
いろいろナチュラル思考な印象が強いドイツだが、出産においても何も問題がない限り自然分娩が推奨されているようだ。
出産に当たって何人もの助産師と話をしたが、皆が「可能であれば自然分娩を」と口を揃えて言っていたのが印象的だ。
そして自然分娩中の痛みだが、ドイツの病院では痛みが増すに従ってに少しずつ強い痛め止めを出してくれる仕組みになっている。
万が一、陣痛中に麻酔の同意書にサインすることになったら嫌なので、事前に説明を受けに行った。診察室に通されると、ひと昔前のサーカスの怪力男みたいな髭の、ピチッとした白いTシャツを着た男性が座っていて、一瞬「あ、部屋を間違ったかな」と思ったが、その人が麻酔医だった。
一通り説明を受けて、最後に「出産時に麻酔を使う人って多いですか」と聞くと、
やはり医師も人間。人によっては偏見があるだろうから、痛かったらちゃんとアピールせねばと思った。
