17年前は、本当に何もなかった
今からおよそ17年前の2007年。デイリーポータルZが「東京の本当に何もない駅」として、ゆりかもめの市場前駅を、当時ライター(後にデイリーポータルZ編集部)だった工藤さんが取材しています。
2007年といえば、今(2024年)から17年前ということになります。
この年、アップルは最初のiPhoneを発売し、Googleはストリートビューを公開しました。インターネット界隈ではエポックメーキングな年といえるかもしれません。
当時の首相は安倍晋三(一期目)で、宮崎県知事だったそのまんま東の「どげんかせんといかん」とか、小島よしおの「そんなの関係ねぇ」なんて言葉やギャグが流行した年でした。
ゆりかもめは、前年の2006(平成18)年に有明駅から豊洲駅まで延伸し、このときに市場前駅が開業しました。工藤さんが取材に訪れた2007年は開業からまだ1年ほどしか経っていません。
今回、記事に使われた当時の写真の元画像を、工藤さんに提供してもらいましたので、その頃の写真と、今の状況を見比べて見てみたいと思います。
まずはトップの画像に使われている駅の写真。
ご覧の通り、だだっ広い荒野の中に、ゆりかもめの駅だけがポツンとある状況です。
元記事でも言及されていますが「何もない」というのは文字通りで、人家もビルもなんにもなく、ただただ広い荒れ地に、駅だけがポツンと存在していました。
駅は市場前と名乗っているものの、まだ市場は築地から移転してきていません。元記事では2012(平成24)年に、市場が開場予定だと書いてありますが、その後、土壌汚染などが問題となり、揉めに揉めたすえ市場の移転と開場は遅れ、2018(平成30)年10月にようやく開場しています。
とまあ、経緯はともかく。ひとまず、こちらの写真の現在の様子を御覧ください。
いきなり意味がわからない写真で申し訳ありません。
実はこれ、当時写真を撮影したと思しき場所まで、立ち入ることができなくなっていたため、いちばん近い場所で撮影したものです。
駅の形などから察するに、2007年の写真はおそらく、現在、豊洲市場の青果棟となっている場所から駅を撮影したものでしょう。
もうすこし変化がわかるような写真をいくつかまとめて紹介します。
ゆりかもめで新豊洲から市場前駅に移動している途中の写真です。
2007年の写真では、駅右後ろにうつるレインボーブリッジが、雨でけぶってぼんやりしていますが、2024年の写真は新しく建った建物のせいで先っぽだけしか見えなくなっています。
2007年の写真は、駅南口側にあるエスカレーターの上部からテプコ豊洲のビルがよく見えましたが、現在は建物の影に隠れ、上部しか見えません。
2024年の方は、テプコ豊洲よりも、その後ろにあるタワーマンション(スカイズタワーアンドガーデン)が目立ちます。
2007年には見えていた旧東京港防波堤(横長の緑の茂み)はすっかり隠れてしまい、有明のタワーマンション、ガレリアグランデ(左側のビル)とオリゾンマーレ(右側のビル)の位置からかろうじて場所が推定できる状態です。2024年の方の手前に建込んでいる建物は豊洲市場青果棟です。
2007年、市場前駅周辺にひとりだけ警備員の人が居て、駅でいちばん「栄え」ていたという駅北口をみてみましょう。
2024年、栄えているとかいないとか以前に、横にでかいビルができた上に、新しい交差点ができており、当時の面影が駅以外はまったくないのです。
はたしてほんとに同じ場所かよと見紛うばかりの景色ですが、同じ場所です。右側のビルはメブクス豊洲というオフィスビルです。
テナントを見てみると、ほとんどのフロアに「全国共済農業協同組合連合会(JA共済のこと)」と書いてありました。
2007年、まだ市場の工事は着工前だったと思われますが、整備のための作業場や準備の工事のようなことは行われており、そのための案内看板もあったようです。
2024年は、工事のための看板は無くなっており、市場の入口に、日本語の他に多言語で立ち入りを禁止する看板が立っています。