特集 2024年1月26日

「東京の本当に何もない駅」だった市場前駅の2007年と2024年

 駅の中の変貌ぶりも見てほしい

駅周辺の様子はガラリと変わったのは、もちろん建物がどんどん建ったからにほかなりませんが、駅の中はどれぐらい変わったのでしょうか?

まず、駅のホームをみてみましょう。

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2007年の市場前駅ホーム、誰も降りず、誰も乗らない
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2024年の市場前駅ホーム、大量の乗降客が

2007年には誰も乗り降りしてなかった市場前駅、現在は大勢の人が乗降しています。

ウィキペディアの市場前駅の項目を見ると、東京都統計年鑑の数値を引用した年間の乗降客数のリストがありますが、それによると2007年の乗降客数は乗車人員が年9千人、降車人員が1万3千人となっています。

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市場前駅開業からの乗降客数推移(2005年度の数値は、2006年3月の1ヶ月だけの数値)

乗車人員、降車人員を足して365で割ると、2007年の一日あたりの駅の利用者は59人ほど。一方、市場開場後の2019(令和元)年を同じように計算すると、一日あたりの駅の利用者数は約11331人となりました。約200倍近く利用者が急増しています。

2014(平成26)年頃から、市場が完成するまでの利用者は、ほぼ工事関係者と思われますが、2018年からの利用者の大半は観光客、特に外国人観光客でしょう。

ぼくが訪れた日は、市場の休市日にもかかわらず、かなりの数の外国人観光客の方がいました。
なかには、交差点に停まっていたデコトラを珍しそうに撮影する外国人観光客の女性もおり、市場が閉まっていたとしても、観光する気持ちさえあれば、見るものは意外とあるものだと感心しました。
実際、限られた日数で観光に訪れている外国人観光客にとっては、市場が休みだろうがなんだろうが、あまり関係ないのかもしれません。

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市場前駅ではなく、豊洲駅に休市日のお知らせの看板がでていました
いったん広告です

さて、利用者の多寡以外に、2007年の駅構内の写真を見て気づくのはサインデザインの変化ではないでしょうか?

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2007年のホーム、豊洲方面を望む
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2024年のホーム、豊洲方面を望む

昔は黄色を基調としたサインデザインでしたが、現在は青色を基調としたものに変更されています。

ゆりかもめの各駅には「駅文様」というその駅を表す文様が設定されており、2007年にはそれを紹介する看板が掲示されていましたが、現在では撤去されているようでした。

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2007年にはあった駅文様の紹介

そのほかに、路線図も変化しています。

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2007年のゆりかもめ路線図
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2024年のゆりかもめ路線図

昔と今の路線図を見比べると、船の科学館駅や国際展示場正門駅などがそれぞれ東京クルーズターミナル駅、東京ビックサイト駅に変更されています。

そして、2007年の路線図は、お台場対岸の地形や地下鉄やJRなどの路線を円周に沿うように配置するおしゃれな路線図でしたが、2024年の路線図は地図になるべく沿った正確な路線図と変化しています。

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2007年、駅の広告スペースは真っ白
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2024年の広告スペース

真っ白だった広告スペースですが、これは17年経った2024年でも片方しか埋まっていません。

いったん広告です

駅の改札口周辺も見てみましょう。

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2007年、閑散とした駅改札
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2024年の市場前駅改札口

改札口、同じ場所とは思えないほど変わっています。

2007年には、改札がふたつだけでしたが、写真左側の柵だった部分が改札に改修され、4つに増えています。そして、2007年は無人駅でしたが、2024年の方は改札横に駅事務室の窓が付き、駅員が常駐するようになりました。

改札を出た先、2007年は大きく有明方面にカーブするゆりかもめの橋桁と、道路(東京都道484号豊洲有明線)のビュースポットとなっていました。

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2007年の市場前駅。なかなかいい感じのビュースポットだった
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2024年、ペデストリアンデッキの出入り口となっている

2024年になると、ビュースポットだった大きな窓は取り壊され、豊洲市場やメブクス豊洲へつながっているペデストリアンデッキができています。したがって、見ごたえのあった急カーブの橋桁はほとんど見えなくなりました。

そして、橋桁のカーブに沿って有明方面にカーブしていた都道484号線は、新しく晴海方面とつながる道と、台場方面につながる道が完成し、かなりでかい交差点となっています。

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2024年、駅を出て逆方向から交差点を撮影

いちおうGoogleMapをリンクしておきます。

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市場前駅の交差点とペデストリアンデッキの様子 ©Google

四角い形のペデストリアンデッキが駅にくっつき、大きくカーブしていた道が交差点になった様子が御理解いただけるかと思います。

フードコートまである今の市場前駅

工藤さんが2007年に訪れた際には、本当に何もなかった市場前駅。取材当時の様子を工藤さんに聞いてみました。

「(当時は)何にもなさすぎて、取材のしようがなく途方に暮れたのを思い出します。実際、写真の撮影データを確認すると滞在20分程度だったようです。もっといろいろ取材しなければという思いと、「いや、もういいか。何にもないし……」という気持ちに挟まれながら帰路についた記憶があります」

デイリーポータルZの取材でありがちな「まじで何もない」というやつです。ふざけてなにもないところに行くと、本当に何もなくて困る……という、自分が悪いわけですが。

とはいえ、現在は市場も移転してきており、市場以外にもホテル、オフィスビル、劇場と、さまざまな施設が建設されました。特に、駅を出た所にフードコートも営業しています。

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江戸前場下町(えどまえじょうかまち)というフードコート

せっかくなので、中に入ってみました。

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うどん店、ラーメン店などが並ぶ店内

開店まもなく入ったので、客はほぼ居ませんでしたが、マグロ丼の店が営業していたので、サービス丼(1000円)を注文。

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サービス丼。赤身とトロとねぎとろのセット

別盛りになっているので、自分で盛り付けて醤油をかけて食らいます。食べていると、外国人観光客が何人か来店していました。

食べ終わり、辺りを見回すとなんだか閉店している店がチラホラ……というか、結構あります。

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もぬけの殻になっている店が多い……

店の方に聞いた所、この施設は今月いっぱいで終了になるとの由。どうもぼくは、ギリギリのタイミングで訪れたようです。

実は、都道484号線の交差点の脇に『豊洲千客万来』という商業施設が、2024年2月1日にオープンするため、こちらの施設は今月(2024年1月30日まで)で終わりなのだそうです。

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2024年2月1日開業予定の『豊洲千客万来』。内覧会のようなことをしていました

これは、豊洲を食のテーマパークとして東京観光の目玉にすべく小池都知事肝いりの施設です。

当初、すしざんまいの社長が開発するとかしないとかいう話でしたが、なんやかんや揉めたようで、結局、万葉倶楽部が開発業者となり、温浴施設などを併設した施設が完成し、オープンを待っています。
オープンしたらぜひ一度訪れてみたいところですが、どうなるのか、カレッタ汐留みたいにならなければいいのですが……。

もっと詳しい話を知りたい方は各自インターネットをご検索ください。


築地の逆になった

17年前はなにもない荒野だった市場前駅。(いろいろとあったものの)現在はかなりの人が行き交うけっこうでかい町になりました。

2007年に取材した工藤さんが、変貌ぶりの写真をみて「当時の写真から感じられる荒廃したような雰囲気から、ビフォーアフターが逆でも成立しそうだなとも思いました、あの豊洲市場が2050年にこうなった……チェルノブイリのプリピチャチのような……」と言っていましたが、それ現在の築地がまさにそうなっていますね……。

とはいえ、築地市場の跡地には巨人軍の野球場ができるとか、東京駅から有明までの地下鉄が新しくできるといった話があります。ただし、これらの話はいずれも2040年頃の話らしく、その頃ぼくは65歳ですね。ひゃー。

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