変な板書ができあがった
斎藤さんが板書に徹してくれていて、全部終わった後に見返したのだが「変な会議だな…」としみじみしてしまった。
王様のアイディアとは1965年から2007年まで存在し、今年復活したアイディア商品のセレクトショップである(こちら)。色めき立つ世代と触れてこなかった世代がくっきり分かれるようだ。
そんなビッグな相手に今まで記事で作った工作をプレゼンできる。イチローに見てもらえる少年野球チームってこういう気持ちなのかもしれない。
王様のアイディア店長の大澤さん、おもちゃクリエイターの高橋さん、チーフバイヤーの桃原さん、アシスタントバイヤーの斎藤さん。
とても和やかな雰囲気で始まったが僕は内心不安だった。僕が張り切って持って来たものは『おもしろ雑貨』なんだろうか。なんだろうなあれは。頭が整理できないまま始まってしまった。
とにかく順に紹介します。14アイテムもある。気長に読んでください。
ひとしきりディテールを楽しむと在庫の有無や値段の話になった。「あ、本気だ」と思った。見てすぐ分かるし取り扱いのしやすさが好感触だったと思う。地味だけどその地味さがじわじわとウケていた。
他にはこちら。
桃原:あれを再現しようと思ったのがいいですよね
高橋:知恵の無駄遣いって言葉がありますけど、ここまですごい無駄遣いもない
高橋:無粋なことを言えば、パワポとかフォトショがあればできますよね
林:そうなんですよ。でもそれをアナログでやりたかった。…確かに努力の方向が違う気がしますね
高橋:ポール・モーリアファンはこの鏡のファンと重ならないかもしれないですね
高橋さんが終始マジだ。かっこいい振り切れ方。
林さんの最後のプレゼン。
高橋:(貼ってあるPCを遠くから見て)挿したくなる感じあります。なんか引き寄せられる
桃原:パソコンのスペックが高くなった感じします
大澤:これ、いっぱい欲しいですもんね
桃原:プレゼン前にここ見たら緊張がほぐれるかもしれない
林:このパソコン社長に貸して間違えて挿してたら気まずいですね
高橋:想定ターゲットは?
べつやく :パソコンを使う人類全員じゃないですか?
ふざけて作ったシールに対して遠慮のない意見が飛び交う。なぜなら本気だからだ。
このあと桃原さんが使っていたパソコンに貼ってみる。「パソコンのボディがシルバーだと馴染む」「シールのフチの部分は無くせないのか」など活発な議論が起こる。
カット線をもっとギリギリのところに作れば透明のフチがなくなってよりリアルになるのでは、という改善案でプレゼンが終わった。
たくさんの大人が給食費の袋やUSBポートのシールに群がって真剣に議論する様子には異様な迫力があった。「ツッコミ不在」という言葉があるが、あの場には「ボケ」すらいなかった。ただただ、真面目で本気なのだ。
高橋:叩いたら良いことがある、前に進んでることにする感覚が欲しい
桃原:コップをすごい速さで重ねるやつとかもそういうことですよね
乙幡:居合抜きとか
べつやく :叩いてかぶってじゃんけんポンとか
乙幡:枕投げも選手権がありますもんね
林:トルー がぶん投げたものを皆が世間に寄せてくれてる
良かった。良かったのだと思う。この物体が商品化されて各家庭でボスボスされる未来を切に望みます。
桃原:おー、有りですね
大澤:狙いが分かりやすい
高橋:他にどんなモデルだといいですかね
乙幡:石膏像とか
トルー:裸ですもんね
林:自分の顔は?
桃原:会社とかで自分のハンガーが間違われないように使えますね
高橋:ホワイトボードになってて落書きも可能っていうになっているのはどうでしょう
べつやく :服が汚れません?
林:「服が汚れるハンガー」という商品
全員真面目なのに「服が汚れるハンガー」に着地した。
真面目さが行きすぎて不真面目になった。グラスを磨きすぎて割ってしまった時みたいな悲しみがある。
大澤:確かに存在感ある
桃原:でかいですね
大澤:本体を送料が超えたりしない?
林:風呂のフタみたいに折りたためるようにしましょう
乙幡:人工衛星の羽みたいに
大澤:アクリル板とかで作るのどうですか?
乙幡:あ、めちゃくちゃでかいアクリルスタンドいいですね
大澤:今の状態だと周りの白いフチが気になるんですけど、アクリルで作ればそこが透明になるので
以上が僕からのプレゼンだった。自分でも思うんだけどおもしろ雑貨とは少し距離がある内容だったと思う。それでも皆さんに何かが刺さった感触はあった。いい汗をかいた。
さあさあ3人目、つりばんど岡村さんのプレゼンである。
大澤:見える見える!
高橋:これすごい、めっちゃ上空にいる
桃原:おもしろいなー
大澤:想像の30倍すごい
アート作品として受注生産してもいいのではないかという案が挙がった。おもしろ雑貨というと文房具やアクセサリーが思い浮かぶが、こんなに大きなものでもいいのだ。
誰もが知ってるけど見たことはない。そしてそのイメージが一瞬で再現できる。そのおもしろさが王様のアイディアの皆さんの心を掴んでいた。
林:払わない? なんでですか?
べつやく:ヨネスケはお金を払わないで晩ごはんを食べるから?
つりばんど岡村:はい、ごちそうになるので
高橋:ヨネスケにただ食いのイメージはなかったな
高橋:なぜか今いらっしゃる部屋がすごく素敵な部屋に見えてきました
商品化という視点から見ると版権が関わるものは現実味がないが、ヘリで逃げているように見えるはしごがとにかく好評だった。冷静な高橋さんに「素敵な部屋」と言わせてしまうほどに。
あと少し、あと少しでつりばんど岡村さんに「ヘリで逃げているはしごアーティスト」という難しい肩書きが付くぞ。
高橋:おもしろい!
べつやく:サイコロにパターンがあってもいいんですよ
高橋:好きな選手のデータで
林:9個のサイコロ同士で戦ったらいいんですね
べつやく:ピッチャーとの相性とか考えるとすごい数のサイコロになるけど
べつやく:これ自体は展開図にすれば売りやすいですし
桃原:すごいなー
高橋:いや、めっちゃいいですね
文句のつけようがないおもしろ雑貨だと思った。おもしろい。欲しい。遊びたい。買えそうだし。4人目にして「こういうのだよな…!」と自分の中で腑に落ちた。
桃原:かわいい
高橋:アブダクションにロマンを感じる人は多いですもんね
大澤:普通に売れそうですよね
林:まともなものが来て戸惑ってる
大澤:普通にいけそう
桃原:柄のところねー!
高橋:こうなってるんですね
高橋:この柄ってみんな知ってることなんですか?
大澤:丸ノ内線で通学してたので、この柄分かりますよ!
柄が分かった大澤店長にかぶってもらう。みんなで「お似合いです!」と言って盛り上げる。アクセサリーのプレゼンで「お似合いです!」は分かるんだけど、今日はそこが丸の内仮面。
ちゃんとしたサイコロとメモ帳の後に丸の内仮面が来た。緩急をつけてきたのである。どっちが「緩」でどっちが「急」なのか分からないが。
いよいよ大トリの乙幡さん。マジ作家である。マジ作家とマジセレクトショップのマジ打ち合わせである。
林:サンショウウオってこんな顔でしたっけ
高橋:あ、押さえたら急に愛着が湧いてきた!
林:なるほど、押さえるとね
高橋:押さえたら命持つってすごいですね
乙幡:家に15個ぐらいあります
大澤:とりあえずそれを売りたいですね
商品化する前提で、乙幡さん個人で取り組んでいる量産化の状況や最適な素材の話し合いになった。乙幡さんはこの話以前に、数十万かけて金型を作ったり、参照ウオ専用のパッケージを作ったりしていた。本気度が違う。マジ打ち合わせなのだ。
ここまできた。最後のプレゼンは辞表パスケースである。
大澤:素晴らしい
桃原:有りだ
大澤:受注生産でやりたいですね
桃原:辞めたい人がストレス発散で使うんですかね
高橋:どういう気持ちになるんでしょう
桃原:同僚がこれ使ってたら優しく接しちゃうかも
高橋:でもやってみたいよなあ
林:使ってみた人がどんどん辞めていったらどうしましょうね
大澤:呪いのパスケースだ
なんてやりとりは合間の雑談で、立体的になる文字の部分の技術やリードタイム(出来上がるまでどれくらいかかるのか)の話をしていた。
真面目に話し合っていたが議題そのものは辞表パスケースなのだ。そんなもの量産していいのか。日本の雇用情勢におかしな影響が出るぞ。
お疲れ様でした。デイリーポータルZに登場したおかしな工作、14連発であった。それぞれ作り手の強い衝動が込められているので咀嚼するのも体力の要る作業だったと思う。
王様のアイディアの方々の反応を下にまとめた。全て僕の主観です。
斎藤さんが板書に徹してくれていて、全部終わった後に見返したのだが「変な会議だな…」としみじみしてしまった。
本当に売ってるのか確認したついでに買おう!
続報(2022.4.13):
1.アディオス・アミーゴ!におまけが追加されました。
アディオス・アミーゴ!を買うともれなくつりばんど岡村さんのチェキがついてきます。10枚と多めに用意しました。
レアな商品にレアなおまけ。期間限定商品なので迷っている人は今すぐご購入ください。
2.給食費納入袋の使用例(風の写真)
給食費納入袋の効果がわかる写真を撮ってきました。
給食費の袋から出したお金は受け取りにくいのでこうなるかもしれません!(効果を保証するものではありません)
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