なんで鈴を入れたのか
会議の場に持っていった時、なぜ鈴を入れたのか聞かれてうまく答えられなかった。布団叩きと鈴の音は関係がない。なんで入れたんだろう。思い出せないのだ。
でも楽しげでいいね、という話になった。
布団叩きを使わなくなった。なんでも、布団を一生懸命叩いてもそんなにいいことがないらしい。
しかし布団叩きは魅力的な棒だと思う。こんないい棒に活躍の場がないなんてひどい。
だから布団叩きに叩かれるための物体、「布団叩かれ」を作りました。
布団叩きを使う光景を見なくなった。ベランダに布団を掛けて、身を乗り出してパンパン叩くあの光景である。何か理由があるのかなと思ってインターネットで調べてみると、布団を強く叩いても意味がない、それどころか逆効果だというのだ。
布団を強く叩く行為は、付着しているホコリやダニを細かくしてしまうだけだし、叩いた時上がるホコリは、あれ、布団の綿が壊れて出てしまっているというのだ。重い布団をわざわざベランダまで運んで、きれいにしているのかと思いきやぶっ壊しているのだ。良かれと思ってやったことで相手を傷つけている。悲しい童話ができそうだ。
そういう情報が行き渡った結果、あまり布団を叩かなくなったのかもしれない。
しかしそういう事情は置いといて、布団叩きは魅力的な棒である。
重さも振った時のしなり具合もいい。山道でこれくらいの木の枝を拾ったらしばらく持っていたい。
こんないいものがくすぶっていていいのか。布団が壊れるからなんだって言うのだ。布団叩きは叩くべきだ。部屋の隅で悲しく笑う布団叩きの両肩をつかんで言ってやりたい。君は、叩くべきだと。
布団がダメなら布団に代わる何かを叩くべきだ。布団叩きにぴったりの「叩かれるための物体」が必要なのだ。作りました。
布団叩きがその才能を遺憾なく発揮できる新しいステージ、それがこちらである。
撮影した日が怖いくらいよく晴れていて、あの世みたいな写真が撮れた。これがどんなものかが分かると思うので、作り方を説明します。
まず「布団叩かれ」に必要な要素を考えてみる。
気持ちよく叩けるのはやはり中に綿が入った布団やクッションだろう。そう思って100円ショップをうろうろしたのだが、ここで胸を締め付けられるような気持ちになった。
クッションの側に感情を持っていかれる商品が多い。それもいいけど今回は叩く棒の側に感情を入れているのだ。叩いても心が痛まない工夫が必要だと思った。
叩かれるための道具である。これをベースに作っていけば、叩いても心が痛まないものができると思う。これはAmazonで買った。
このパンチングバッグの赤いボールの部分に、同じ大きさにしたクッションをかぶせれば、思っているものができそうだ。
材料はそろった。作っていきます。
できた。これで機能は果たすのだが、あまりにも無愛想なので飾りを付けよう。
同じく掛け布団を作って、一番上に濃い色の細い布を乗せる。
布団のようになった。これが布団叩きが叩くための物体、布団叩かれである。布団のビジュアルに寄せたのは、布団叩きにとっての、布団の代用品としたかったからである。カニカマがカニに似ているのと同じ理由だ。
ちなみに布団はホテルのベッドをイメージしています。上に乗っている細い布は、靴を履いたまま寝転んだ時、足を乗せるための布らしい。
「ポンポン」という擬音がぴったりである。クッションを支えているバネと吸盤も、パンチングバッグのものだけあってしっかりしていて頼もしい。かなり爽快である。
中に鈴を入れました。動画では鈴のきれいな音色が聞けます。
そしてこれ、下の吸盤が強力なので壁に付けても使えるのだ。
布団叩きも、これで才能をぶつける先ができた。あとは彼自身の力で世界に羽ばたいていくだろう。
この布団叩かれ、それ単体でもおかしな存在感があって、写真をたくさん撮った。
布団叩きは思い切り叩くことができ、かつ叩かれる対象である布団叩かれもかわいそうな印象にならなかった。クマのクッションとか使わなくてよかった。
会議の場に持っていった時、なぜ鈴を入れたのか聞かれてうまく答えられなかった。布団叩きと鈴の音は関係がない。なんで入れたんだろう。思い出せないのだ。
でも楽しげでいいね、という話になった。
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