漬物の匂いがするチーズは正解
先日、奮発してちょっと高いチーズを買ってみたら漬物みたいな匂いがして慌ててインターネットで調べた。
検索ワードは「チーズ、漬物、大丈夫」である。漬物の匂いがするチーズを食べても大丈夫なのか知りたかったのだ。
これが問題のチーズ。これのおかげで今も冷蔵庫の中が漬物の匂い。
正解は「食べていい」だった。むしろ本場のチーズはその漬物みたいないわく「クセのある香り」を楽しむものなのだとか。知らん。
思い返せばこういうこと、前にもあった。好奇心だけは人並み以上にあるのだが、いかんせん食に関する知識が不十分なのだ。だから見たことのない食材を見つけるととりあえず買ってしまうのだけれど、使い方を調べることもせぬまま、それらは冷蔵庫で眠ることになる。
僕の妻も同じような傾向にあって、おかげでうちの冷蔵庫にはわけのわからない食材とか調味料が常にあふれている。たちの悪いカルフールみたいになっているのだ。
今回はそんな我が家を律することも目的として、家にあるなんだかわからないものを一律パンに塗って食べてみたいと思う。だいたいの食材はあれだろう、パンに塗ったら食べられるのだろう。
妻が買ってきた名前すら読めない食材。ほぼ手つかずのまま冷蔵庫の奥から発見された。だいぶ前に賞味期限切れてる。
※最初に言っておきますが、この記事は素人目線で書いています(素人が)。「その食べ方違う」とか「あーあ、もったいない」とか言わないでください。「こうしたらもっと美味しいよ」という話があればこっそり教えてください。
ではさっそく未知への扉(冷蔵庫の)を開けていこう。今回のラインナップはこちら。残念ながら一個もなじみの食材がない。今回の記事で人生の幅が広がるの必至である。
知らないものは面白い
これまでに買ったりもらったりした見たことのない食材をパンに塗って食べてみた。
結果、だいたいパンに塗ったら食べられるということがわかった。ここで得た自信を糧に、これからも知らない食材を見つけたらとりあえず買ってパンに塗ろうと思います。
グリーンペッパーを食べるとくしゃみが止まらなくなる体質だということも発見でした。
No.1「CREME DE MARRONS DEL A RDECHE」
最初からわからないの来た。
いきなりまったく知らないのでた。歯磨き粉みたいなチューブに入った食材である。まず名前が読めないのがいい。デ、とかデル、とかあるのできっとそっちの方の食材なんだろう(今回は自分の味覚を信じるため、食べるまでインターネットでも調べません)。絵からしてたぶん栗関係であることがわかる。
この栗男みたいなイラストに惹かれて買った気がする。かわいい。
開け口がセメダイン方式。
合ってるのか、これ。
キャップの後ろ側の突起でチューブに穴をあけるとなんか最初に透明な油みたいなのが出てきた。絵具の最初に出てくるやつだ。古いのか、と慌てて日付を探したけど2017って書いてあるから大丈夫なはずだ。食べてみよう。
甘!
これ甘い。
そして甘さの中に生の植物の持つ青々しさというか、まだイガの緑の栗林の中に立った時のような、瑞々しい生臭さを感じる。どっちかというと美味い。たぶんこうやって直接パンとかクラッカーとかに乗せて食べてもいいものだろう。続けて2枚食べたらちょっと好きになってきた。これは正解だと思う、明日の朝の食卓に置いておこう。
正解
「CREME DE MARRONS」
1882年創業、フランスの伝統的なマロンクリーム。パンに塗ったりお菓子に入れたり万能なのだとか。
No.2「Pate de Campagne」
こういう瓶詰は長期保存できると思って買ってしまう。そしてたいていいつまでも食べない。
またタイトルから中身が想像できない食材である。ガラス越しに覗くのはハンバーグの種みたいな状態の肉。レバーペーストみたいなものだろうか。
いまレバーペーストみたいなものだろうか、とか偉そうに言ったけどレバーペーストすらどういうものなのかいまいち確証が持てない。うまいんだっけそれ。
ただ、瓶を開けたときに空気が入ってフタが「ポン!」って言ったのは可愛かった。僕の好きな「ごはんですよ」と同じ仕組みで期待できる。
いただきます。
掘った時に表面と内部の色とが違って怖かった。変色してるのか?
出た、複雑系の味である。一言で言い表せない深みとコク。ただ、僕はあまり好んで食べる感じではなかった。まんまだが、焼く前のハンバーグみたいである。レアを通り越して生。これハンバーグみたいに焼いたらだめなんですか。
かなりの割合で油が入っているのだけれど、香辛料の香りも強いのでそれほどしつこくは感じなかった。しかし繰り返すが、焼いた方がうまいんじゃないかと思う。邦題を付けるとすると「深い味わいのなめらかな肉、ただし焼く前」か。
正解
「Pate de Campagne」
豚肉と豚レバーの入ったパテ。フランスの代表的な前菜である。そのままフランスパンに乗せて食べてもいいし、カツみたいにパン粉をつけて揚げるのもアリなのだとか。それうまそう。
No.3「Tartufata Tentazioni」
こういう小瓶は冷蔵庫でも幅をとらないからいい。
これもまた名前からして読めない。タルツファータテンタジオニだろうか。「樽津ファータ点太児鬼」。最後オニって付くのが赤オニ青オニみたいでかっこいい。
鬼、実際にはアリみたいな黒ツヤである。
小瓶を開けた瞬間、「ごはんですよ」(海苔の佃煮、日本)の香りがした。磯のかおり、加えて出汁の匂い。ヨーロッパ産の海苔の佃煮だろうか。ごはんですよはパンに塗ってもうまいので、これは期待できる。
たぶん海苔だ。
でも食べたら食感が海苔じゃなかった。ただ、香りが似ているので食べてもごはんですよを感じる。濃く複雑な何かの佃煮である。ただ食感はもっとしっかりしている。油も入っている。魚介?
とにかく今まで食べた中では一番美味かった。これはご飯に乗せてもいいんじゃないかと思う。本当のところがまったくわからないけど主食の友、という感じはする。パスタにもきっと合うんじゃないか。こういう性格のよさそうな食材を見つけると自分のセンスを褒めたくなるよね。めったにないけど。
正解
「Tartufata Tentazioni」
イタリア産オリーブ、マッシュルーム、アンチョビなどとトリュフを細かくきざんでミックスしたもの。パンに乗せたりグリルした肉料理に添えたり応用範囲が広い調味料。
No.4「GABAN GREEN PEPPER」
コショウなのに液体に漬かっている。
これはわかる。GABANというのはよくコショウの缶に書かれているブランドだし、グリーンペッパーも緑コショウっていうことだろう。明快だ。
しかし、なぜコショウが液に漬かっているのかがわからない。これではラーメンにかけられないじゃないか。パンに乗せる用だろうか。
キャビアみたいだ。
パンに乗せたらキャビアみたいになった。これは期待できるんではなかろうか。ひとつ問題があるとすると、僕がキャビアの味をよく知らないので比較できないということくらいである。
いただこう。
からぇっぷ。
これは不正解だ、一瞬でわかる。正直食べる前からその匂いで違うとわかった。
鮮烈なコショウの味と香りである。噛むと生姜のような食感、その後ビリビリと差し込む刺激に舌が痺れる。刺激物だ。これはパンに乗せて食べるためのものではないと思う。他にどうしたらいいのかは分からないが、違うことだけはわかる。
少し口の痛みが引いてきてからまた確かめたくなって、今記事を書きながら一粒ずつ食べているのだが、これ眠気覚ましにはすごくいい。フリスクよりも抜群に効く。こうやって仁丹みたいに食べるものなのかもしれない。
正解
「GABAN GREEN PEPPER」
胡椒をまだ未熟なグリーンのうちに採り、塩水に漬けこんだもの。色を活かして粒のままステーキや肉料理に添える。ナイフの腹で軽く潰して食べる。
No.5「天秤標幼蝦」
次は標記を書き写すことすらできなかった。上記の「天秤標幼蝦」というのはたぶん「天秤印の」くらいの話ではないのか。
何て読むのかすらわからない。
青いエビが天秤にかけられている。その後ろからは後光が。
これは開けた瞬間の匂いがすごかった。爆発的なうま味を閉じ込めた何かの匂いである。アジアの屋台でこういうにおいを嗅いだことがある。ポテトチップスのコンソメパンチの袋を少しあけて鼻だけ突っ込んで生活しているみたいだ。いい匂いではある、ただいささか強力すぎる。
こうしてみるとパンに塗るものではないこともなんとなくわかる。
ハ!
一瞬うまい。
噛むとジャリジャリいうのだけれど、それら一粒一粒の持つうま味の爆発力がすごい。ひとかけらでエビが5匹くらい潰されていそうである。とんでもないコク、そしてエビの怨念みたいなものも一緒に詰まっている。確かにうまい、でもスープとかにして薄めた方がいいと思う。子どもがそのまま舐めてお母さんに叱られるタイプの調味料である。
正解
「天秤標幼蝦」
英語名「シュリンプ・ペースト」、タイ名:カピ。小エビの塩漬けをペーストにした調味料。タイ料理の出汁として様々な料理に使用します。
No.6「Sharwood's MANGO CHUTNEY」
マンゴーチャツネ。名前だけはなんとなく聞いたことがある。ごんぎつねみたいな名前だな、と思って買ってきたのを覚えている。マンゴーはあの美味いやつだろう、チャツネがわからない。
実は今回の本命である。
このマンゴーチャツネ、見た感じマンゴージャムだ。パンに塗って食べるなら絶対これだろう、と期待を込めてラインナップに入れた。
ようこそ!
うまそう、と思って口に運ぼうとした瞬間である。
「ちょっと待てよ」
本能が警告を発した。いや、本能というか嗅覚が反応したのだ。ものすごい酸っぱい匂いがする。
酸っぱい要素がどこにも見当たらないのに。
原材料に酢の標記はない。なのにこれだけ酸っぱい匂いはなんだ。
食べると予想通りものすごく酸っぱかった。マンゴーの甘さはみじんも感じられない。これたぶんジャムじゃない。チャツネって言ってるんだからジャムじゃないのは明白なんだけど、見た目がジャムっぽいのに甘くないと裏切られた気分になる。チャツネは酸っぱい、という知識と引き換えに、僕は信じてきた友に裏切られたような気がした。
正解
「Sharwood's MANGO CHUTNEY」
厚切りのマンゴーと砂糖、香辛料をとろ火でじっくり煮詰め、その後樽で熟成させたインド料理の調味料。深みのある酸味はカレーの隠し味として最適。
熟成させていたのか。とろ火でじっくり煮詰めた時点のが食べたかった。