ライター:トルー
第一回:明治 さいておいしいモッツァレラ
第二回:デイリーヤマザキのロースとんかつおにぎり
第三回:キューピー つぶしてつくろう たまごサラダ
第四回:カネテツデリカフーズ ほぼカニ
第五回:日本ハム 袋のままできるチキンオムライス
※小出し記事は書けたところから即、小出しに公開する連載企画です!
ほぼカニ
革命が起きたのだな、と分かる商品名である。
まず見た目がカニだ。完全にカニ。人々のカニを食べたい欲望がついにここまで来てしまったかと畏怖の念すら感じる。
SFでは、人に限りなく近いロボットを作った博士は結局あまり幸せにならない印象があるが、カニはどうなんだろう。カニの心を持たないカニカマは果たしてカニなんだろうか。そんなことを考えてしまうくらいカニの見た目をしている。カニカマであることを知らないカニがほぼカニに恋をしてしまうところから始まる恋愛映画を撮ろう。
一口目はカニ酢のおかげでかなりカニ。そしてそのあとでカニカマとは思えない身のほぐれ感がある。ホロッ、あ、カニ、と思う。噛んでいくとかまぼこの味と食感がどうしてもカニカマを思わせるが、カニ酢と身のホロホロ感の衝撃はずっとある。
思えばカニカマにカニ酢をつけてしまうなり振り構わなさも、ほぼカニ、と思わせる迫力に一役買っている。そんなに言うならほぼカニだよ、俺の負けだよ、と思う。一流芸能人だと認められたかったらとにかく高い車を買え、みたいな迫力がある。
会議を想像してみる
まず思うのは「ほぼカニ、とまで言っちゃっていいのか」ということである。会社の偉い人なんかは特に気にしそうだ。大きく出て失敗しちゃうとマイナスの効果が大きそうだからだ。
一度引き返すことを考え始めるとどんどんダメになるもので、ほぼカニ、までいけなかった時のための商品名が続々と候補に挙がった(想像)。
こうやって逃げるための方策を議論しだすと事態はどんどん悪くなるもので、現状の試作品はこの数直線のどこにあるのか、ほぼカニまでは行かないまでも一番マシな商品名は何か、ということを会議の参加者は考えだした(想像)。ほぼカニを実現するには、という前向きな議論は「概ねカニ」によって覆い隠されてしまったのだ(想像)。
そんな時である
開発チームが「カニっぽい食べ方をしたらカニに近づくのでは」と提案をし、カニ酢につけて試作品を食べてみたところ、これがもうほぼカニだったのだ(想像)。
「なんかズルくない?」と思った参加者もいたが、ほぼカニを実現させた喜びに水を差したくなくて黙っていた。
業界全体ですごいっぽい
インターネットで検索してみると、カニカマをカニに近づける工夫はカニカマの誕生当時から絶えず行われているようで、この『ほぼカニ』以外にもカニへの情熱がすごい商品はたくさんある。売り場を見るとどれもカニそっくりで、大きな筆でビャッと書いた商品名が踊っている。カニカマの、この無闇に前向きな姿勢は見習っていきたい。
ライター:トルー
第一回:明治 さいておいしいモッツァレラ
第二回:デイリーヤマザキのロースとんかつおにぎり
第三回:キューピー つぶしてつくろう たまごサラダ
第四回:カネテツデリカフーズ ほぼカニ
第五回:日本ハム 袋のままできるチキンオムライス
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